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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「あっ、ああ悪い……」

 言われて、計佑も我に返った。
──実は、計佑は結構Sな性分だった。
それはまくらの事を大抵いじり続けてきたせいでもあるのだが、そのノリでエリスも弄ってしまったかもしれない。
──もしかしたら、最近は先輩にいじられ続け、挙句まくらにも弄られるようになってしまったストレスのせいもあったのかもしれないが──
ともあれ、確かにやりすぎたと思った計佑が、エリスに頭を下げた。

「ごめん、ちょっと調子に乗りすぎた。本当に悪かった」
「えっ!? なっなんだ、お前いきなり……」

 まっすぐに頭を下げてくる計佑に、エリスが戸惑いの声を上げた。
やたらと上から目線できていた人間が、いきなり頭をさげてきたので面食らったのだろう。
 けれど計佑は、そういう事を気負いなくやれる少年だった。

「な、なんか調子狂うやつだ……まあいい!! 張り紙なら見たよ。アタシもこの天文部に入れろ!!」
「OKオッケー!! 大歓迎!!」

気をとりなおしたエリスの要求に、茂武市が即答した。

「ちょっおい!! 何勝手に決めてんだよ!? 中学生を──」
「現状同好会なんだから、別にいーだろ。
部員として認められないにしても、夏休みの間遊びに来てもらう分とかには構やしねーじゃん」

 ヘラヘラと答える茂武市に、呆れる計佑。

──まさか、小学生に見えるコまで守備範囲とか言わねーだろーな……

 問題もあるヤツだけど、それでも親友と思えていたヤツだった。
けれど──ちょっと付き合い方考えようかな、と半ば本気で考えだす計佑を尻目に、
まくらがエリスに話しかけていた。

「緊張しなくても大丈夫だよ〜。男子ばっかじゃなくて一応私も部員だからね?」

 流石にこの辺は気が利くな、と計佑は感心していたのだけど、

「なっなんだお前……男二人の部屋に女ひとりでいたな!? ……たらし!?」
「「「ぶっ!!」」」

 喚いたエリスに、また3人の吹き出しがシンクロした。
慌てた様子でまくらが、

「あっあのねエリスちゃん!? えーと高校生にもなるとね、
別に男のコたちと女のコ一人で行動するコトは、そんなに変なコトじゃないんだよ〜?」

 動揺しているのか、完全に子供を相手にするような話し方になっている。
──まあ無理もなかった。エリスは見た目だけでなく、言動まで中学生とは思えない子だった。
しかしエリスはまくらの弁解など聞く耳持たずで、

「ハッ!? いっいや、そんなコトはどうでもいい!!  お前、そこの目覚計佑とどういう関係だ!?」

 まくらに詰め寄ると、そんな事を尋ねていた。

「ヘっ? 関係、と言われても……」

 まくらがチラリと計佑を見てくる。代わりに計佑が答えた。

「そいつは音巻まくらって名前な。ソフト部メインのかけもち部員で、
オレとの関係は……まあ幼なじみなんだけど、相当付き合いは長くてもう家族みたいなもんだ」
「あっ、オレは茂武市はじめー!!」
「家族みたいなもの……? でも幼なじみってコトは血はつながってないワケで……」

 茂武市の名乗りに関しては、エリスは全く関心がない様子だった
何やらブツブツとつぶやいて、やがてキッと顔をあげると、バッと飛び退った。
 まくらと計佑をババッと指さして、

「あんた達、二人共お姉ちゃんの敵なのねっ!?  ……許さないんだからっ!!」

 急に普通の言葉遣いになって喚くと、さっさと部屋を飛び出していった。

「……何なの一体……?」
「……さあ……?」
「……オレは無視ですか……?」

 あっけにとられたまま(一人涙目で)、呟く3人だった。

─────────────────────────────────

 次の日の、講習が終わった後。
 正式な天文部員4人が部室に揃って、会話に興じていた。話題は、昨日のドタバタしていた子についてだ。

「へ〜っ……中学生の新入部員が……? どんな女のコなの?」

 計佑が雪姫の疑問に答える。

「どんなコって……ちょっと変わってましたね。
なんかオレを名指しで絡んできたと思ったら、最後にはまくらまで敵視してたみたいで」
「計佑が敵視されたのは自業自得だと思うけど……でも何で私まで睨まれちゃったのかはよくわかんないよね……」

 まくらも首を傾げながら答えを添えて。それに、今度は茂武市が発言した。

「まあ確かにまくらちゃんのはわかんないけど、計佑のはマズかったよなぁ? お前随分しつこくからかってたじゃん」
「えっ!?  計佑くんが女のコをからかってたの!?」

 自分にはからかわれてばかりでいたり、
硝子相手でも良く気を使っていた所を見てきた雪姫が、驚きの声をあげた。
 それに対して、計佑が慌てて弁解する。

「あっいや!! 中二といっても、見た目がまるで小学生だったんですよ!!
んでなんかミョーに絡んでくるもんだから、ついこっちもやり返したくなっちゃって……」
「まあ確かに、すごく幼い感じの見た目なんスけどね。
でもスゲー可愛いコでしたよ。ツーサイドアップで、髪留めがウサギで……」
「……小学生に見える中学二年生……? ツーサイドでウサギ……」

 茂武市が追従した言葉に、雪姫が俯いてつぶやき始めた。やがて、雪姫が顔を上げて。

「ねえ、そのコの名前は?」
「え? 黒井エリスだそうです」
「……あ、そう……違うのかな……?」

 計佑の答えに、雪姫は首を傾げるが、すぐに悩むのをやめたようだ。
計佑に視線を戻してきて、ニマッとする。
その顔に、ギクリとする計佑。これは──

「それにしても。女の子をしつこくイジめる、ねぇ……まさか計佑くんに、そんな意地悪なトコロがあるなんて……」

 予想通りのからかいモード。
しかしからかわれているのはわかっていても、憧れの先輩にそんな取られ方をされては黙っていられない。

「ちょっちょ!? だから違いますって!!
そういう意志があったのは最後だけで、途中までは素でいじっちゃってただけで──」
「そのほうがタチ悪いっスよねぇ?」

 茂武市のツッコミに、ギッと計佑が睨みつける。
しかしその隙に、今度はまくらからの口撃が入った。

「雪姫先輩っ!! ダマされちゃダメですよっ。計佑って実はドSですからね〜!? 昨日の私への暴挙を見たでしょっ?」
「なっ!?  こらっまくらっテメー!!」

──人が、昨日必死に解いた誤解を蒸し返すんじゃねええ!!!

……実際には誤解を解いてくれたのはまくらなのだが、計佑はそんな怒りをもってまくらに振り向く。

「キャ〜すごい顔〜!! 助けて雪姫先輩〜」
「もう、お前ホント黙ってろ!!」

 わざとらしい悲鳴をあげるまくらに、計佑が飛びかかって。
そのままヘッドロックをかける。ついでに、まくらがイヤがる『ワシャワシャ』も仕掛けた。

「やっやめろーっ、『何をするだァ――――ッ!!』」

 計佑に付き合って読まされた漫画の名台詞を引用して、まくらが抵抗してきた。

「うるせぇっ!!  今日は!! 『君がッ 泣くまでッワシャワシャをやめないッ!!』」

 計佑が、同様に名言を持ちだして応戦する。