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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 計佑の優しさに感謝して、雪姫はうっとりと計佑を見つめるのだった。

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──……危なかった……あの時先輩が茂武市を見なかったら……

 計佑は最初から冗談のつもりだった──そう雪姫は思っていたが、実際は違った。
途中までは、計佑も本気だったのだ。
 雪姫が怯える姿……いつもの少年なら、それを見れば怯みそうなものだったが、
この時はくすぐり地獄に正直キていたし、
──ゾクリとする嗜虐心も感じていた。雪姫が、計佑の涙目に感じたものと同様に。
 だから本気で迫って──途中で、雪姫がチラリと茂武市を見たのに気付いた。
それで計佑も理解したのだ。
雪姫もかなりのくすぐったがりで、このままでは雪姫の悶える姿が茂武市にも見られてしまうと。
 島で脇をつかんでしまった時や、温泉で聞こえてきてしまった、雪姫のやけに色っぽい声。
……また聞いてみたいという欲求もちらりと鎌首をもたげたが、茂武市に見聞きされる怒りのほうが大きかった。

──いや、ホント危なかった……やる前に気づいてホント良かった……

 まくらから雪姫への羽交い締めを引き剥がしてる時に、舌打ちをしてきた茂武市を思い出す。
後で、茂武市に見聞きされていた……なんて気付く事になっていたら。

──今度は茂武市に何やるか、分かったもんじゃないからな、俺……

 そんな物騒な事を考えて、胸を撫で下ろす計佑に

「バカっ……人がせっかくチャンスを作ってやろうとしたのに!!」
「チャっ……だからそういうのはよせっつったろ!!」

 まくらが小声で叱りつけてきた。計佑も小声で返す。
といっても、実際には雪姫にも茂武市にも丸聞こえの声量なのだけれど。
 二人はまたキャンキャンと吠え合い始めてしまい、その姿は仲の良さを強く知らしめる。
──けれど今それを見つめる雪姫は、心の底からの微笑を浮かべているのだった。

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 エリスの入部? から一週間が経った。
といっても、その後エリスは一度も部活に顔を出すことはなかった。

──あのチビっコ……やっぱ何かのイタズラか罰ゲームかなんかで忍び込んでただけなのか?
  でもそれにしては、まだまくらに絡んでるみたいだよな……

 計佑は自宅で夕食の準備をしながら、そんな事を考えていた。
 今日は、計佑が当番の日。目覚家の食事は、由希子か計佑が作るのが常だった。

「も〜〜〜!! なんなのエリスちゃんって!!!!」

 バンっ!! と計佑の家に飛び込んできたまくらが、開口一番グチを喚いて。
ソフト部の荷物を放り出すと、ボフンとソファーに飛び込んでいた。

「おい、どうした? いきなり、何荒れてんだよ?」
「エリスちゃんがさっ、今日は部活後のシャワールームにまで入ってきてっ!!」
「あ〜……まだお前に絡み続けてんのか……」

 エリスは天文部にはちっとも顔を出さないのだが、代わりにまくらの方にチョロチョロと絡み続けていた。
まくらからは色々聞いていたが、計佑自身、エリスがまくらへキャンキャン噛み付いている姿を目撃した事もあった。

「ホント何考えてるんだろうな、あのちびっこ。最初はオレを敵視してたのに、なんでお前のほうに……?」
「それは私も聞いてみたんだけど……
『目覚計佑がクズなのはわかりきったこと!! だからお前のほうを調べる必要があるんだ!!』
とかなんとか言ってたよ」
「またクズ呼ばわりかよ……今度会ったら、ちょっと大人への態度ってものを躾けてやんなきゃな……」

 初対面でもクズ呼ばわりされたコトを思い出し、軽くイラっとする。

「う〜ん……ちょっと頼むよ計佑〜……
私はあんまキツく言えないしー。計佑なら、生意気な女のコの躾も慣れたもんでしょー?」
「……まー、誰かさんのお陰でなー」

──まくらが自虐した上で頼んでくるなんて、ホントに参ってきてるのかな……

 そんな風に考えるが、表面上は気のない返事をした。

「よーし!! お礼は先払いだッ。今日の夕食は私も手伝うよ!!」
「えー? お前はいーよ……メシがまずくなるだろ」
「ちょっヒド!? 私だって最低限のコトは出来るってば」

 勢い良く立ち上がってきたまくらに、計佑は本気で迷惑そうな顔で答えた。

「……じゃーお前は、ご飯が無事炊き上がるか見ておいてくれよ」
「オッケーまかせといて!! ……ってオイ!! 自動炊飯器に監視はいらないでしょ!?」
「チッ……気づいたか」
「気づかいでか!!」

 ノリツッコミで答えてきたまくらに、舌打ちの計佑。

「……じゃー皿洗い。または食材の買い出し。あるいは配膳な」
「……なによー……ホントにちょっとくらいは出来るのに……」

 まくらが本気で凹み始めてしまった。
いつもはこれくらいでへこたれるやつではないのだが、こうなっては計佑も方向転換を余儀なくされる。

「わかったわかった。まあ味付けはやっぱ不安だから──」

 結局、二人で夕食作りを再開して。
やっぱりまくらの手つきは危なっかしくて、計佑一人でやるより時間はかかりそうだったけれど。
もう計佑はまくらを茶化すことなく、黙って見守っていた。

「……ねえ計佑……」
「んー? なんだ?」

 まくらがふと手を止めて、俯いた顔で質問してきた。

「エリスちゃんは、何で私のコト嫌ってるのかなぁ……」
「……は?」
「何か気づかないウチにやっちゃってたのかなあ?
今まであんなに人に嫌われたコトってなかったから、どうしたらいいのか、ちょっとよく分かんないんだよね……あはは……」
 
 苦笑するまくらに、計佑はぽかんとして。

「お前……そんなコト考えて落ち込んでたのか?」

 そして、呆れてしまった。

「そんなコトって……だって……」

 唇を尖らせるまくらの頭に、手を乗せる。

「お前を嫌うヤツなんているかよ。いっつもアホみたいにニコニコしてるヤツをさ。
まーなんか誤解はあるのかもしんないけど、それが解ければ、どってコトない話だろ」
「……なにそれ……慰めてんだか貶してんだかどっちなのよ……?」

 苦笑を浮かべるまくらに、

「ホントに嫌いなんだったら わざわざ絡みになんてきてないと思うぞ?」
あんなんジャレてるだけだっつの。……アイツも、なんか無理してる感じあったしな……」

 少し遠い目をしてそんな風に言うと、まくらがちょっと拗ねた目付きになった。

「なに、その『アイツのコトならお見通し』みたいな言い方……なんで計佑にそんなコトがわかるの?」
「なんでだろーなー。オレには、変に意地はったりする妹分が一人いるせいじゃないかねー?
なーんかあの手のヤツの考えそうなコトは、わかる気がするんだよなー」

 まくらの髪をワシャワシャとかき混ぜてやる。
しばらくの間、まくらは黙ってそれを受け入れていたが、やがてガッシと計佑の腕をつかんできた。

「……ふんっ!! 雪姫先輩にはてんで弱いクセに、私にはいっつもエラそーに……!!」
「っぐ!? ……てめーこそ、最近はいっつも先輩のコト持ちだしやがって……!!」