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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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逃げるように半歩下がり、けれど雪姫は更に一歩詰めてきて。より近くなってしまう二人の距離。

「とっ、ところでプレゼントって何の話ですかね!? オレ、そんなんあげたことないと思うんですけど!!」

 頭が沸騰する前に話を変えようと、とっさに疑問を投げかけた。

「……っ、それは……」

 雪姫が一瞬怯んだ。計佑はそれにホッとするが、……甘かった。

「計佑くんの命を助けてくれた、あのクマのストラップだよ……壊れちゃった……」
「……え? あ、あの時の……?」

 雪姫が男二人に攫われて、あわや……だった一件。
あの時、刺された計佑を救ったのはクマのストラップだった。

「え、でも……あれは先輩が買ったヤツで……なんでそれがプレゼントって事に?」
「……あのクマちゃんの代金、いいって言ったけど計佑くん弁償してくれたじゃない?
……つまり、あれは計佑くんからのプレゼントって言えるじゃない……」

 俯いた雪姫がそんなことを言う。
同じ物が買えなかったので、確かに代金で弁償という形になっていた。
(ちなみに雪姫からは、お返しにと、やはりクマちゃんストラップ(実は貴重な限定品)を送られていた。
流石に計佑が使えるような品ではなかったけれど、それは大事にとってある)

「……あのクマちゃんは、計佑くんからの初めてのプレゼントで、
計佑くんの命を守ってくれた特別なコなんだもん……
だから、計佑くんの写真と一緒に、大事にしてるんだよ……?」

 さらに雪姫が距離を詰めてきて。もう殆ど触れ合わんばかりになった。顔を上げた雪姫は真っ赤で、瞳も潤んでいた。
……けれど今度は、計佑も下がらなかった。

──先輩……壊れたおもちゃなのに、そんな風に思ってくれてまで……!!

 計佑の胸に、熱い感動が満ちていた。
 雪姫と自分なんかでは、到底つり合いなんてとれていない、
やはり雪姫が自分を好きだなんて不自然な事なんだ……そんな思いが常にあった。
だから、雪姫から自分への『好き』という気持ち自体は疑わないまでも、想いの強さまでは信じきれていない部分があった。
けれど今の話で、雪姫がどれほど自分の事を好きでいてくれたのか……漸く理解できた気がした。

 雪姫への愛しさが溢れてきて──この瞬間の少年からは、少女への遠慮が消えた。
少年の腕がすっと持ち上って……

─────────────────────────────────

──……え……?

 最初、雪姫には状況がわからなかった。
 自分に気圧されて、耳まで赤くしていた筈の少年が、急に余裕をとりもどしたように見えた。
そしてすぐに計佑の両腕が持ち上がると、そのまま雪姫の両肩に乗せられてきた。

──……へ……?

 間抜けな疑問符が浮かんだ。
ぽかんとする雪姫に、計佑が口を開く。

「先輩。今度、もっとちゃんとしたプレゼント送ります。
壊れたおもちゃしかあげられないほど、情けない男ではいたくないから」

 計佑が笑顔を見せた。
初めては雨の日の入学式で、それからは自分が弱ってる時にしか見せてくれない、自然体の笑顔。
でもそれを、何故か今、計佑が雪姫へと向けていた。

──ううん、なんだか今までより、もっと優しい顔をしてる気がする……

 そう思った瞬間、バクン!! と心臓が大きく高鳴った。
そして、少年が今、非常時でもないのに自分に触れてきていることに気付いた。そんな事は初めての筈で、

──けっ、計佑くんが……自分から私に……!?  なっなんで!?  別に今、特別なコトとかないよね!?

 自分の話で、てっきりいつものように真っ赤になって、慌てふためいてくれるだろうとばかり思っていたのに。
まさかの事態に理解が追いつかない間に、また計佑の右手が動いた。
今度は雪姫の頭の上に乗ってきて。そのまま撫でられる。
 まくらの頭に手が伸びるのは、よく見かけた。
でもそれが今は自分に……それも、まくらにするよりずっと優しい手つきで、だ。
──そう理解した瞬間、ボン!!  と頭が沸騰した。
きっと目をぐるぐるさせているだろう自分を見下ろす計佑が、ふふっと微笑い、目を細めた。
……それで、もう限界を超えてしまった。

──……もう、ダメ……

 へにゃ、と膝から力が抜けた。
まともに立っていられずに計佑に寄りかかると、顔が計佑の胸板をずりずりと滑り落ちていく。

「──えっ!? せっ先輩どうしました!? しっかりして!!」

 計佑の慌てた声が聞こえるが、もう返事をする力もなかった。

──……か、返り討ち……?

 飽和した意識の中で、そんな単語が浮かんだ。

─────────────────────────────────

「あの、ホントに大丈夫ですか先輩? まだ、すごい顔赤いですよ……?」
「いっいいのっ!! 大丈夫だからっ、今はちょっとそっとしといて……!!」

 やがてどうにか復活した雪姫だったが、まだ心臓は激しく働き続けていた。
 計佑が心配して身体を支えてくれようとするが、今計佑に触れられたらまたさっきの状態に逆戻りしそうで。
なんとか距離をとる。

「ほらっ、いい加減部屋に行こ!! まくらちゃん達も待ちくたびれてるよっ!?」

 そう誤魔化して、雪姫は足早に階段へと向かうのだった。

─────────────────────────────────

 計佑達が雪姫の部屋に着くと、アリスが早速雪姫へと駆け寄った。

「おねえちゃ〜ん、遅いよー!!  何してたのー?」
「なっ何もしてないわよっ!? ちょっと話が長引いちゃっただけっ!!」

 まとわりつくアリスに、雪姫が裏返った声を上げていた。
それを他所に、計佑は雪姫の部屋を眺め回してしまう。

──ひゃ〜……さすが、すごいキレイな部屋だな〜……

 基本的にはとてもシックなのだけれど、
ダブルサイズのベッド上には、大小のクマのぬいぐるみがたくさんあった。

──……なるほど……やっぱ先輩はクマが大好き、と……

 頭にメモして。今度雪姫に送るプレゼントは、やはりクマ関係だなと胸中で決める。

「雪姫先輩っ!! これ、こないだの旅行の時の写真ですよね? アルバムの整理してたんですか?」

 床に座っていたまくらが、やはり床に置かれたアルバムと、そばにあった写真を指さして雪姫に尋ねた。

「あっ、うん!!  データだけじゃなくて、やっぱりちゃんとプリントしたのもとっておきたくてね」

 答えながら、雪姫もアルバムの前──まくらの隣──に腰を下ろした。

「きゃー、見たい見たい!! ずっと我慢してたんですよっ、早く見せてくださいよ雪姫先輩!!」
「わ!! ちょっちょっと待って!? まだ開けないでねっ」

 はしゃいだ声を上げるまくらに、雪姫が慌ててアルバムを胸に抱え込んだ。
そして、チラリと計佑を見上げてくる。

──あ……これは、オレがいるとまずいんじゃないかな……

 男の自分には見られたくなかったりする物もあるかもしれない。
かといって、あからさまに後ろを向いているというのもどうなのだろうか?
 困って立ち尽くしてしまっていると、アリスが声をかけてきた。