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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「ゆっ雪姫先輩!! 私、次のページが見たいな〜?  ほらっ、計佑たちもちゃんと見せてもらおーよ」

 そんな雪姫を見かねたらしいまくらが促してきて。はっとする。

──そっそうよ、落ち着いて……冷静に考えればあの程度のコト、どうってことないわっ。
  私だって、昔はお父さんやおじさんに、あんな感じでだっこされてたコトあったじゃない……!!

 そう言い聞かせて、深呼吸をして。アルバムめくりを再開した。
けれど、アリス達の会話はまだまだ止まらない。

「おいっけーすけ!! 今はお姉ちゃんの写真を見る時だろっ。私の髪をいじるのはやめろっ」
「あ、悪い……どうしてもついな。お前の髪に指通すと気持ちよくて……やっぱお前の髪キレーだよな」

──〜〜〜〜〜っっっ!!!!

『バンっ!!』
 雪姫が、乱暴にアルバムを閉じた。
その音で、計佑とアリスが、ビクリと雪姫を見やってくる。まくらは、ハラハラとした表情だ。
 雪姫がジロリと少年を睨みつけると、計佑は更に怯んだ。

──……なんなのその差は〜〜〜っっっ!!!!

 ついさっき、ようやく計佑から、ちゃんと触れてきてくれた。
頭を撫でられて、嬉しさで立っていられないくらいだった。

──やっと私はそこまできたのに!! なんでアリスにはそんなトコまでいっちゃってるのっ!?

 ついさっき仲良くなったばかりの筈だ。
なのに、ささやかな進歩に浮ついていた自分をあざ笑うかのようないちゃつきぶりで。

──私はやっと撫でてもらうトコまで来たばかりなのに!! アリスには髪梳いて!!! 褒め倒してっ!!!!

 そんな睦み合いを披露されて、もう限界だった。

「……んっんんっ!!」

 わざとらしく空咳をついて、まとめていた髪をほどいて。
これ見よがしに指を通すと、ファサッと払って見せた。
TVCMの時に、その手の指導なら受けている。仕草の美しさなら一応自信があった。

「ゆ、雪姫先輩……」

 まくらの視線が痛い。まくらには意図を見ぬかれてしまってるだろう。
恥ずかしさはあったが、今はそれよりも大事な事があった。計佑に視線を戻す。

「……???」

 少年は、不思議そうな顔をするだけだった。

──っっっ……!!! 計佑くんのバカ〜〜〜〜っっ!!!!

 恥を忍んでやったのに、完全スルーされてしまった。顔に血が上る。

「バカけーすけっ!! お姉ちゃんも褒めてもらいたいんだよっ!!」

──っっっ!!?? やっやめて!!! もう許してよ〜〜〜っっっ!!!

 よりにもよって、対抗しようとした相手に見ぬかれて、それどころか解説までされて。いよいよ耳まで熱くなった。
……もう恥ずかしさのあまり、逃げ出したい気持ちで一杯になった。

─────────────────────────────────

「──お姉ちゃんも褒めてもらいたいんだよっ!!」

 アリスから計佑への叱責に、雪姫の頭がガクンと沈んだ。
そして耳まで赤くして、全身をプルプルとさせ始める。

──……えっ!? まっマジでそういうコトなの!?

 アリスの言葉だけなら、朴念仁の少年は多分納得しなかっただろう。
けれど、無言で恥じらう雪姫の姿まで見せつけられて、流石に理解せざるを得なかった。

──ええ!? いっいやでも……っ。

 そう、この少年にそんな事は無理だった。
天然状態でならともかく、意図的に憧れの先輩を賛美する事など。

──だっ第一、まくらだっているのに……っ!!

 家族の前で、そういう事をするのにも強い抵抗があった。
下手に褒めたところで、どうせまたまくらにからかいのネタにされてしまう。そう考えてしまった。
……だから、結局ヘタレ少年は誤魔化す方向へと逃げ出した。

「せっ先輩!!  この部屋随分クマが多いですよね? やっぱクマが好きなんですか?
今度のプレゼントは、もっと大きいクマのぬいぐるみとかどうですかっ?」

 矢継ぎ早に質問を飛ばすと、雪姫が涙の滲んだ顔を上げた。

「……プレゼント……」

 雪姫の呟き。しかし大きく反応したのは、まくらの方だった。

「えっなになに?  計佑、雪姫先輩にプレゼントなんてあげるのっ?
うわー、ついに計佑も目覚めたのねっ? 女の子にプレゼントなんて『初めて』じゃないのっ!?」

 ちらちらと雪姫に目配せしながら、『初めて』の部分にアクセントを強調するまくら。
けれどそれに、計佑は大いに慌てた。

「なっ何いってんだよ!? お前にだって誕生日とかにやってきたろっ」
「バッカ、家族と異性は全然別でしょ!?
うーんそっかそっかー、計佑から『初めての』女のコへのプレゼントね〜」

 まくらのセリフは、またしても "初めて" の部分が強かった。

──くっ……こっ、こいつまた……!!

 まくらが必死に雪姫へのフォローをしてくれているというのに、少年は全く理解していなかった。
……どころか、恩知らずな事に腹をたてていた。

──変なコト言うんじゃねーよっ……意識しちゃうだろーがっ!!

 まくらに指摘されたせいで、気づいてしまった。
 壊れたおもちゃがプレゼントなんて申し訳ない……そんな気持ちから言い出した事だったのに、
何か随分と特別な意味を持ってしまいそうな行為だと気付かされてしまった。

──まくらのやつっ……またオレを弄ろうってんだな。よりにもよって先輩の前でっ……!!

 雪姫がいない所でならともかく、こんな時にからかわれてしまったと勘違いした少年は、そんな風に腹を立ててしまったのだった。

「計佑くん……」

 まだ瞳をうるませたままだった雪姫が、うっとりとこちらを見つめてくる。
今度は計佑の方が、恥ずかしさで爆発しそうになる番だった。

─────────────────────────────────

──『初めて』……私が計佑くんから貰える『初めて』のプレゼントは、計佑くんが『初めて』女のコへあげるプレゼント……

 自分にとっての "初めて" と、計佑にとっての "初めて" が噛みあう。
その『初めて』という単語は、恋する乙女にとって格別に甘美な響きだった。

──私だけが……計佑くんからのプレゼントを貰える女の子……!!

 その事実は、少女の独占欲を十二分に満たした。

──そうだよ……私だって計佑くんの特別なんだもん……!!

 アリスのように気安くは接してもらえないかもしれない。
でも、自分には自分だけの "特別" がある。そう思うと、雪姫の心は一気に軽くなった。

──ありがとう、まくらちゃん……!!

 まくらの気遣いにも感謝して。目礼する。まくらが微笑み返してくれた。
そんな風に、ふわついた気分の雪姫の耳に──

「そっ、そうだ!! アリス、お前にもなんか買ってやるよ!!」

──ビシリ。
飛び込んできた計佑の声で、雪姫の表情と心にヒビが入った。

「ほっホントか!?  何でもいいのかっ? でもなんで?」
「いや、高いもんはムリだぞ?  まあホラ、デコピンしたお詫びとか、
先輩だけにプレゼントってのも『特別』扱いで変じゃん? イトコのお前にも一緒に、ってとこだよ」