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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 たった今与えられたばかりの拠り所なのに、一瞬でぶち壊されて。
雪姫の心はガラガラと崩れていった。

──視界の端で、まくらが頭を抱えていた……

─────────────────────────────────

「……まくらちゃん……これ、もう任せる……まくらちゃんの判断でめくって……」
 
 ガックリと項垂れたままの雪姫が、まくらにアルバムを押し付けた。

──せ、先輩……一体どうしたんだ……?

 消沈してしまった雪姫の姿に、自分のせいなどとは夢にも思わない、恐ろしい程罪作りな少年が戸惑う。

「……ゆ、雪姫先輩……あっ、ねえ計佑、先輩も疲れちゃったみたいだし、もうお暇しよっか?」
「あっ、そっそうだな。もういい時間だし……」

 痛ましげに雪姫を見つめていたまくらが計佑を促し、計佑もそれに答えた。
アリスの体をどかして、立ち上がる。……雪姫は項垂れたまま動かない。

「あっ、雪姫先輩!!  見送りとかいいですからね!! お疲れみたいだし、私たちはこれで……」
「……うん、ごめんなさい……」

 まくらの言葉に、俯いたままの雪姫がぼそりと答えて、
アリスが「じゃーアタシが見送ってやるよっ」と立ち上がった。
そして計佑が体を翻そうとした瞬間──

「んー、なかなかいいカンジだけど、もうひと押しホしいなー」

 そんな声が、すぐ傍から聞こえた。

「えっ、誰っ!?」

 いち早くまくらが叫んで。しかし驚いたのは計佑も同様だった。

「おっお前も聞こえたのかっ!?」
「うっうん、何今の声……なんだか随分ちっちゃい女の子みたいな……!?」

 計佑たちが驚くのも当然だった。その声は、ここにいる誰のものでもない、
アリスの声よりももっと幼い感じの、舌っ足らずな声だった。

「……なんだ? オマエラ、一体何の話してるんだ?」

 アリスはきょとんとしていて、雪姫も特に反応を示していない。
戸惑っていると、ようやく雪姫がゆっくりと顔を上げてきた。

「……何……?  どうしたの一体……?」
「あっ、いえ何でもありません。なんかちょっと空耳が聞こえただけで……」

 未だ元気のない雪姫に余計な気を使わせたくなかったので、計佑がそんな風に誤魔化した。
瞬間、ドン!! と背中に衝撃を受けた。

──なっ!?

 慌ててバランスをとろうと足を踏み出──そうとして、叶わなかった。
足が何故か動かない。雪姫のほうに倒れていく体。せめて両手を使おうと──して、それも出来なかった。

──どっどうなって──!?

……訳がわからない内に、計佑の顔は。
……雪姫の胸へと、飛び込んでいた。

──!!!!??!!

 慌ててどこうと考えるも、相変わらず手足が動かない。
 雪姫の服は胸元が開いていて、
そこに正面から飛び込んでしまった計佑は、見事に胸の谷間に顔を埋めてしまっている形になった。

──やべぇえええええ!!?

 慌ててもがこうとする。顔などはまだ動かせた。……けどその結果は、

「んっ……計佑、くん……?」

 雪姫の胸に、鼻や唇をこすりつけただけ。

……いつぞやのように、鼻血を吹いて気絶するのは目前だった。

─────────────────────────────────

──あ、あった!!  まだ私だけの "特別" !!

 計佑が自分の胸に飛び込んできて、目をまんまるにしてフガフガと赤い顔で見上げてくる様を見て。
雪姫は、まだ自分に武器がある事を思い出した。

──旅行で水着姿になった時の、計佑の視線。
計佑は、大きな胸が好きなハズ!! これはアリスにはない!!

 どん底状態だったところに差し込んだ光に、もはや何も考えずに手を伸ばした。
少年の後頭部に手を回す。そして、きゅっ……と、計佑の頭を抱え込んだ。

「──!!???!!!!?」

 計佑が声にならない悲鳴を上げて、

「ゆっ雪姫先輩っ!!??」

 まくらが大きな声で呼びかけてきた。けれど、雪姫は気にもとめない。
今、この少女の意識にあるのは、いよいよ耳まで赤く染めてこちらを見上げてくる少年の事だけだ。

──……うふふっ……!!  そう、この顔だよ……私でいっぱいになっている時の、計佑くんだぁ……

 計佑が顔をよじって逃げたそうにしたが、そんな事は絶対に許してやらない。
さらに力を込めて、計佑の顔をより深く谷間へと誘い込む。
もう少年の顔は、目から上しか見えない。それでも、爆発しそうな顔色になっていることがわかった。
少年は息が苦しいのか、強く鼻息を吹き出してきた。

「ゃんっ……だめぇ、くすぐったいよ計佑くぅん……」
 
 陶然とした笑みを浮かべて、少年の頭を優しく撫でてみせる少女。
類まれな美貌の少女が浮かべるその笑みは、格別な妖艶さを醸し出していた。

 そして、息が限界を迎えたのか、それともそんな笑みにトドメをさされたのか……とうとう少年が白目を剥いた。

「雪姫先輩ってば!! アリスちゃんだって見てるんですよっ!?」

 そう言いながら、まくらが計佑を雪姫から引き剥がして。それで、やっと雪姫が正気に戻った。

「……あ、あれ……私……?」
「お、おねえ、ちゃ、ん……?」

 アリスが、ガクガクと体を震わせて、涙目になっていた。

「雪姫先輩っ……!!」

 まくらは、気絶した計佑を羽交い絞めにしたまま、やはり涙をにじませて自分を睨みつけてきている。
……アリスやまくらにそんな顔を向けられたのは初めてで。雪姫は漸く、今の自分がやらかした事を理解した。

「──いやあああああああ!!??」

 そして雪姫の悲鳴が、白井家に響き渡った──

─────────────────────────────────

──その後、今回は何故かすぐに目を覚ます事が出来た計佑は、
真っ赤な顔でずっと俯いたままの雪姫に対して、何度も頭を下げた。
そしてまくらが、

「先輩は本当に優しいよねっ、計佑が貧血起こしちゃったと思って落ち着くまで抱きかかえてくれたんだよ?
計佑もっ、貧血だったんだから仕方なかったんだよ。
あんまり頭下げてばっかだと、かえってわざとだったっぽく見えるよ?」

 と、多少強引ながらも仲裁をしてくれたお陰で、
どうにか決定的な亀裂は生まずに帰宅することが出来たのだった。

──けれど……本当に何だったんだろう? 金縛り……にしては、最初の衝撃は……?

 自室のベッドに転がって、計佑は今日の不思議現象について思い返していた。

──そういえば……夕方にも変なコトあったんだよな……

 あの時には何故か不思議に思わなかったが、考えてみれば異常すぎる。
何故アリスの居所がわかったのか。
そしてあの時にも、最初、体に異変が起きていて……

──そういえば、頭の中がくすぐったいようなあの感覚……たしか……

 前にも似たような感覚を味わったことがあった。その時のことを思い出して。

──……えっ!? それに、オレとまくらにだけ聞こえた声!?  まさかそれって……!!

「やっほー、おひさしぶりっ、ケイスケー!!」

 計佑が答えを見つけた瞬間、それに答えるかのように幼女の声がした。