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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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幸せそうに眠っている様子のまくら。

──終業式が終われば夏休みだから、部活の問題はあるけどしばらくは誤魔化せるだろう……

だとしても、こんな状態をいつまでも続けている訳にはいかない。

──コイツを元に戻す方法・・・さっさと見つけてやらなくちゃな。

少年が、海での決意をまた新たにするのだった。

─────────────────────────────────

次の日の朝。
起きてきた計佑は、ちょうど出かけるところの由希子と顔を合わせた。
「あら、計佑おはよう」
「どこいくのさ?」
「くーちゃんの病院よ」
「……ああ、じゃあ俺も行くよ」
病院で眠る本体? よりも、普通に会話も接触も出来るこちらのほうが
断然本物という感覚になりつつあったが、もう一度身体本体の様子を確認したくなった。
「ちょっと待ってて」
黙って置いていかれては不安だろうと、一応まくらに声をかけようと思ったのだが──
<b>「ぐう」</b>
──まくらがスゴイ格好で寝ていた。
相変わらず上半身だけパジャマの格好で寝崩れたせいで、裾がめくれ上がり下着が完全に露わになっている。

<I>──もういいわ……コイツはおいていこう</I>

計佑は赤面した自分を誤魔化すように、
まくらにバフっと乱暴にタオルケットをかけると、書き置きを残して母親のところに向かうのだった。

─────────────────────────────────

「ねえアンタおぼえてる? くーちゃんのお医者さん」
病院へと向かう車の中で、由希子が尋ねてきた。
「ああ・・・ちょっとふざけた感じのじーさんだったな」
「そう・・・でもなんかね、本当に有名な先生らしいのよ。
前にくーちゃんと同じ様な患者さんを治したことがあるとかないとか……」
「あるとかないとかって。怪しい感じだなぁそれ」
「まあアタシも、どうもイマイチ信頼できないんだけどねぇ」
それでも、計佑にとっては大きな意味のある話だった。

──まくらと同じ様な人が前にもいた……?
じゃあもしかして『俺だけが見えている』ような状況の事とか何か知ってたり、
俺のように『見えた』人とかもいたりしたんじゃないのか?

詳しい話を聞いてみたい。まくらの身体を確認するだけのつもりでいたが、
思いがけず手がかりが見つかりそうなことで、心は僅かに弾んだ。

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「あのー……すみません。これ、祖父にお願いできますか? お弁当なんですけど……母に頼まれて」
まくらが入院している病院の受付女性に話しかける少女。麦わら帽子をかぶった雪姫だった。
「あんらぁ〜雪姫ちゃん!! 久しぶりねー。 またキレイになってぇ〜。CMみてるよ〜」
テンションの高い声に、受付にいた他の女性たちも雪姫に気付いた。
「私もー! 白雪フェイス♪ 使ってるー」
<b>「わ! ホントにCMのコだー」</b>
<b>「ホントにきれー」</b>
「そんな……恥ずかしいです。やめてください……」
雪姫は本気で困った様子で謙遜しているのだが、
受付女性たちは『照れているだけだろう』と大して気にせず、はしゃいだ声を上げ続けた。
「あらっ? 泳ぎに行ってきたの?」
「いえ、これから……」
『「デートッ!!?」』
「違いますよー、クラスの女の子達とです」
テンション高い女性たちにちょっと引きながらも、笑顔は絶やさずに雪姫が答える。

──……あれ?

きゃいきゃいと絡んでくるナース達に、内心困っていた雪姫は、
視界の端でちょうど病院に入ってきた計佑の姿を認めた。
計佑と母親らしき人物は、真っ直ぐエレベーターのほうに向かい、雪姫の事には気づかなかった。

──受付に来ないってことは……お見舞いかな?

「ねーねー、うちのコにサイン書いてあげてー♪」
相変わらず黄色い声で話しかけてくる女性たちに、
「すいません、後でまた寄りますから」
そう別れを告げると、雪姫は足早に計佑たちの後を追った。

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「ちょっと俺用事あるから」
そう告げて由希子と別れた計佑は、前回話を聞いた老医師の元へと行くつもりだった。
前回話を聞いた部屋には不在で、今は「先生の個室にいらっしゃると思うわよ」と教えられた部屋へ向かっていた。

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──お見舞いでもない……のかしら……?

少年は病室に向かう訳でもなく、脳外科診察室へ向かったと思ったらすぐにまた出てきた。
何とか見つからずにやり過ごせたが、

──うーん……別に隠れる必要はなかったんだけど。

しかし、後を追う内になんだかイタズラ心が出てきてしまったのだ。
ただ声をかけるだけじゃ面白くない。
一昨日の別れ際に彼が見せてくれた狼狽ぶりを思い出すと、なんだかまたあんな反応が見たくなってしまったのだった。

──いきなり『ワッ』じゃ普通すぎるし……病院の廊下でやるのもちょっとね。
周りに迷惑をかけないようにってなると、一人になるのを待つしかないんだけど……

病院でそれは難しいかなぁと思いつつも、何かいい脅かし方はないかと計佑の尾行を続ける雪姫だった。

─────────────────────────────────

「失礼しま──」
「おおお!! ちょうどいいところにきた」

──は??

計佑が教えられた個室にたどり着き、開けっ放しのドアから挨拶をすると、目当ての老医師が計佑に向かって駆け寄ってきた。
「戸締まりを頼もうと思っとったんじゃ。急にアメリカ行きが決まってのう! なに2週間はかからんと思うから……ほれ鍵っ!!」
カートを引いてる老医師が放り投げてきた鍵を、つい受け取ってしまった。
「いやっ、ちょっと先生に聞きたいことがあって来ただけなんですけどっ」
「時間がないんじゃっ! 論文でわからないところがあるならここの資料を使ってもよいからの。その代わり期日は守る様にっ!!」
研修生か何かと間違ってる様子だ。

──俺まだ高1なんだけど……そんなんにも気付かないって、ホントに名医なのかよ……

改めてこの老医師に胡乱な気持ちを抱くが、
「だから違いますって──」という計佑の言葉を無視して
「タクシー、タクシーは来とるかー!」
老医師は怒鳴りながら走り去ってしまった。

──ええー……

ぽつねんと取り残されてしまった。
「なんだよ……あのじーさまは……」
悪態が口をつくのも無理はなかった。

──くそっ……何かしらヒントくらいはって期待してたのに。

ぐるりと部屋を見渡す。
机やテーブルがいくつもあったが、そのあちこちにうず高く本が積まれている。
どころか、足元にまで散らばってる本もあったりした。

──ここまで来たんだ……鍵預けられたくらいなんだから、ちょっとくらい見せてもらっても罰は当たらないだろ……

そう自己弁護すると、部屋の中に足を踏み入れた。
とりあえず、目についた本をパラパラと開いてみる。
「……外国語……」