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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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これからは普通に来るようになるよ。……それだけの話って計佑は思ってればいいよ……」

 最後は呆れたように言われ、『それだけの話?』と一部ひっかかりはしたけれど、一応納得した。

「あー、言われてみればそりゃそっかー」
などと呑気に頷いている少年を睨んでいたまくらが、
「……ホント、この鈍感王は……」

そう呟いて、もう一度溜息をついてから表情を改めると、計佑に尋ねてきた。

「ねえ、その雪姫先輩なんだけどちょっと遅いよね? どうかしたのかな?」
「……あー……先輩は……今日は来ないのかもな……?」
「えっ何? なんか聞いてるの? 今日は私、勉強見てもらえるって話になってたんだけど……」

 その言葉で、まくらの前を見た。
確かに教科書やらノートが広げられていて──

「……数学か。確かにオレには教えられんよな……それで白井先輩か」

 成績はいい方の計佑だったが、苦手な科目となると、一応は平均をクリアといったところで、偉そうに人に教えられるレベルではなかった。
……まあそれでも、まくらよりは出来る方なのだけれど。
 ともあれ、屋上の一件も思い出して苦い顔を浮かべてしまう計佑に、

「……まさか計佑。また何か雪姫先輩にやっちゃったんじゃないでしょうね?」
「またって何だよ、またって……」

 計佑の表情で何やら読んできたらしいまくらのセリフだったが、

──さすがに今回は自分に悪いところはなかった……ハズだ。ハズだと思う。……だといいな……

 だんだん自信がなくなってきた。

「やっぱり何かやったんでしょ……」
 
 変化していく計佑の表情から、またまた察したらしいまくらが問い詰めてくるが、

「いや、オレにもよくわかんないんだよ……ただ──」

──ガラッ

 弁解を始めようとしたところで、ドアが開いた。

「あっ雪姫先輩!! こんにちは〜」
「こんにちは、まくらちゃん。遅くなっちゃってごめんね?」

──あ、よかった……先輩、ちゃんと来てくれたんだな……

 怒って、今日はもう来てくれないのではと危惧していたので、雪姫の登場にホッとする。
謝罪するなら、やはりちゃんと顔を合わせてやりたかった。

──……けど、まくらがいるのにさっきの話もマズイんだよな……? 人には知られたくないんだろうし。

 そんな風に考えている間に、雪姫は計佑の横を通り過ぎて、まくらの隣──計佑の正面──に座った。

「ちょっと計佑。雪姫先輩に挨拶くらいしなよ……何ぼけっとしてるの?」
「あっああ、そうだよな……すいません、先輩」

 まくらに窘められて、頭を下げた。『実はついさっき会っていた』事は、とりあえず秘密なのだろうから。
 雪姫もニッコリと笑って、言葉を返してくれる。

「ううん、いいよ別に……"目覚くん"」

──ピシリと、空気が凍った。

「……ゆ、雪姫先輩……? あ……あれ?」

 凍りついてしまっている計佑に代わって、まくらが雪姫に疑問符をとばした。

「ん? どうしたのまくらちゃん? さあ、遅れた分急いで勉強始めようね」
「あっ、はっはい……!!」

 雪姫のニッコリとした──しすぎている──笑顔に気圧されて、慌ててノートを覗きこむまくら。
やがて、ようやく氷が溶けた計佑が、おそるおそる雪姫に声をかける。
 
「あ、あの……先輩……」
「なにかな "目覚くん"?  勉強のジャマしないでね」

 シャットアウトだった。
こんな状態の雪姫に食い下がるなど、彼女にはめっぽう弱い少年では出来る筈もなく。

──やべぇええええ!? 先輩めっちゃ怒ってる!! なっ、なんで!? あれ笑ったの、そんなにマズいことだったのか!?

 雪姫をスネさせたり怒らせてしまった事は今までもあったが、今度のは全く規模が違う気がする。
 ダラダラと脂汗を滴らせながら、救いを求めてまくらに目をやった。
するとまくらも、ちょうどこちらを見てきていて視線が合った。

"ちょっと!! いったい何やったのよ!?"
"わかんねーよ!! なんでここまで先輩怒ってるのかさっぱりなんだよ!!"
"絶対計佑が悪いに決まってる!! 責任とって早くなんとかしてよねっ!?"
"むっ無理!! オレには無理!! 頼むっなんとかしてくれまくらっ!!"
"いっいやよ!? いくらなんでも、地雷原に突っ込んでまで助けてあげる気はないからねっ!!"
"そんな事言わずになんとか!! もうヘタレでもなんでも認めるから、助けてくれよっ!!"
"なっなに開き直ってんの!? 諦めたらそこで試合終了だよ!?"

 長年の絆で培われた驚異的な勘を駆使して、表情だけで激しく会話を繰り広げる二人。
 そんな二人に仮面の笑顔を保てなくなって、
目を吊り上げていく少女がいたのだが、計佑たちはさっぱり気づかなかった。

─────────────────────────────────

──なによなによなによ〜〜〜〜!?  何二人だけで語り合っちゃってるのよ〜〜〜っ!!!

 仮面が保てなくなって、頬がひくつくのがわかった。
それでも、膨らんだ怒りのせいで仮面をかぶり直すのは不可能だった。

──わたし、すっごく怒ってるんだからねっ!!
  今はまくらちゃんじゃなくて、私に気を回すべきところじゃないのっ!?

 今、計佑は全力で自分に構うべきなのに。構ってくれなきゃいけないのに。
──計佑たちは雪姫が激怒していると考えていたが、結局の所すねているだけの話だった──
なのに、自分のことをほったらかして、
まくらと仲良さそうに(?)、言葉も使わずに分かり合っている姿に、ますますイライラが募った。

──〜〜〜っ!! もう我慢できないっ!!

 "げしっ!"
 イライラをぶつけたくて、計佑の気を引きたくて──机の下で、少年の脛をけりつけた。

「っっっ!?!!?」

 計佑がビクリと仰け反って、ようやくこちらに視線を戻してきた。
けれど、ビクビクオドオドとこちらを伺うだけで、何も言ってはこない。

──……なによ、そんな顔で……

 なんだか悲しくなってきてしまった。だって、今はそんな怯える少年が見たかった訳ではなかった。

「……バカ……」

 雪姫のその小さな呟きにも、やはり計佑は何も返してはくれなかった。

─────────────────────────────────

 結局、この日の部活は気まずい時間が続いてしまい、早めに切り上げる事になった。
雪姫が最初に帰り、それでも計佑は追う事も出来ずに見送って。今はまくらにジト目で睨まれていた。

「……ホント、なにやってるの計佑……ここは追っかけてちゃんと謝ってくるとかさあ……」
「……いや、だって何で怒ってるのか分かんない状態で謝ってもさ……それもダメだろ……」

 一番の理由はヘタレているせいだが、一応正論で答えてみせる計佑。

「ホント、鈍いダメ兄だなぁ……理由はともかく、きっかけくらいはわかってるんでしょ?」
「ああ……まあそれはわかってるんだけど……」
「じゃあそれだけでも私に話して。バカ兄にわかんなくても、私には多分わかるからさっ」

 まくらがにぱっと笑ってそう提案してくれた。けれど、