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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「……いや、やめとく。自分で考えてみる」

 断ると、まくらがまた呆れ顔になった。

「ちょっとー、まだ恥ずかしいとかそういうヘタレたコト考えてんじゃないでしょーね?
もう今さらなんだから、意地なんて張らないでさぁ……」
「いや、そうじゃなくてさ。確かにオレはガキでバカなんだろうけど、
だからこそ自分で考えて、気づかなきゃならないコトじゃないかと思うんだよな……これは」

 今度はヘタれた考えではなく、本心でそう答えた。
……まあ、確かにまくらの言うとおり、妹分に情けない心情を晒したくない気持ちもあったけれど。
しかし計佑のその言葉は、まくらには意外だったようで、しばらくぽかんとしてみせると。

「……へぇ……計佑もちょっとは成長してるんだねぇ……」
「……うるせーよ。そりゃちっとずつぐらいは進歩するさ……多分だけど」

 やはり自信はなくて、最後には苦笑して言葉を付け足してしまうと、まくらも笑った。

「まあ、計佑がそう言うんならとりあえず口出ししないけど。
でも本当に困ったらちゃんと言ってよね?  私だって計佑の力になりたいんだからさっ」

 そのまくらの笑みはちょっと寂しそうだったが──

──なんだよ、俺に偉そうに説教出来るチャンスを逃したとでも思ってんのか……?

 この鈍い少年が考えるのは、そんな事くらいだった。

─────────────────────────────────

 夕方になって帰宅した計佑は、まずホタルを探した。

──やっぱりいないのか……

 校内や道中でも一応ホタルを捜しながら帰ってきたのだが、見かけることはなく。
そして家に着いた今もやはりいなくて、少し不安になる。

──随分寂しい思いさせちゃったからな……しっかり遊んでやりたかったんだけど。

 ただ、今の自分には考えなければいけない事もあった。
ホタルがいないなら、まずはそちらの答えを出そう……そう決めて。
ベッドに体を投げ出して、今日の雪姫のことを考える。

──笑ったら怒ったんだから、ギャグではなかったのは確かなんだよな……

 そこまでは分かっている事だった。

──オレだけを呼び出してたみたいだから、オレだけに見て欲しかった……?

 昼間にも一応思った事だが、多分これも合っている筈だ。

──アリスのモノマネ……アリス?

 窮屈そうな格好をしてまで、アリスの真似をする事に何の意味があったのか? それが分からないのだけれど……

──オレにアリスのモノマネを見せる……アリスのように見られたかったって事?

 少年が、一歩正解に近づいた。

──アリスのようにって……え? そういえば昨夜……

 計佑がアリスの髪を褒めていると、突然これ見よがしに雪姫が髪を解いてみせたりしてきて。
そしてアリスが──『お姉ちゃんも褒めてほしいんだよっ』

──……ええっ!? ま、まさかそういうコトなのかっ!?

 ピシャーン!! と雷に打たれた気がした。ガバッと体を起こし、手で口を押さえて。

──ウソだろっ……!? まさか先輩っ、焼きもちであんなコトしてきたってのか……!?

 ついに正解にたどり着いた少年だが、まだ半信半疑で。

──えっ、だって……あの白井先輩だろっ!? まさかオレなんかにっ……あっいや、でも……

 雪姫が自分の事を本当に、それも凄く好いてくれているらしい……それは昨夜、計佑が漸く理解した事だった。

──ヤベっ……自惚れかもしんねーのにっ……なんかニヤケてきちまう……!!

 雪姫が焼きもちを妬いてくれた。
やっぱり、そんなに自分の事を好きでいてくれるんだ──そう思うと、ニヤニヤが止まらない。
顔が熱くなって、誰もいないのに顔を膝に押し付けて隠してしまう。

──いやっ、これが正解って確証はまだないんだけど……
  でもっ、もしそうなら先輩がキレんの当たり前じゃねーかよっ!? 何してたんだオレ……!!

 嫉妬からの行動をバカみたいに笑い飛ばすなんて。
ようやく自分がしでかした事に気づいて、舞い上がっていた気分が一気に冷めた。ガバっと顔を上げる。

「どっ、どうしよう!? 早くちゃんと謝らないと……!!」

 動揺で独り言が口をついた。ケイタイを手に取る。……しかし。

「……でもどう言えば? 先輩むっちゃ怒ってるみたいだったし……なんて言って謝ればいいんだよ……?」

 ここにきてまたヘタレが入ってしまう少年。
うがーっ、と頭を抱えたところでメールが届いた。
──雪姫からだった。

─────────────────────────────────

 計佑たちを置いてさっさと帰宅してしまった雪姫は、その後勉強にも身が入らず。
悶々としたまま、ベッドの上で夕方を迎えていた。
……勿論、あれから計佑には何も言っていなかった。まだ怒りが収まってはいなかったからだ。

──そりゃあ今日の私の態度もどうかとは思うけど……でも、最初にヒドイ事してきたのは計佑くんだもん……!!

 自分でも可笑しいのは分かっていたのに。それでも恥を偲んでやったのに。
……本気で笑い飛ばされてしまった。

 結局、計佑の本心を探るどころではなかった。

──恥をさらした挙句、ケンカになっちゃっただけ……ホントに何やってるの私……

 昨夜のように、また落ち込み始める。

──……今日の私……やっぱり感じ悪すぎだったかな……

 屋上の一件で腹を立てた後での、放置プレイのコンボに、ついキレてしまった。
それで少年の脛を蹴りつけまでしてしまったのだけれど……
そこまで力は入れてなかったとは思うが、場所が場所だけに結構な痛さだったかもしれない。

──……私から謝ったほうがいいのかなぁ……

 計佑が、あそこまで怯えた表情で自分を見つめてきたのは初めてな気がする。
脛を蹴りつけたのも流石に悪いと思うし、やはりこちらから謝ろうかという気持ちが湧いてくる。けれど──

──……でも……それもなんか悔しいし……

 昨夜から悶々とたまり続けたストレスが、どうしても素直に謝らせてくれなかった。

「う〜〜〜〜……ん〜〜〜〜!!」

 枕に顔を伏せて、ひとしきり唸って。

「……よし!!」

──決めた!! 一言だけメールを送る!!

 こちらから謝るのも抵抗があるけれど、もう怒り続けているのも嫌だった。
だから、"もうそこまで怒ってるワケじゃないんだよ" という意志を伝えることにした。
そうすれば、計佑の方もこちらに謝ってきやすくなる筈だ。
 少年がいつまで経っても連絡して来ないのは、
きっと自分がまだ激怒してると思って、ヘタレてしまっているせいだろうから。

──昼間の様子から、また1つ計佑の事を理解した雪姫なのだった。

─────────────────────────────────

『プイッ(~_~メ)』

 雪姫から届いたメールは、1つの単語とクマの顔文字1つだった。

 その、『まだ怒ってるんだから』メールに、しかし計佑は、ほっとした笑みを浮かべていた。

「……よかった……もうそこまでは怒ってないんだ」