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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 雪姫の意図した通り、その顔文字つきメールは、計佑のプレッシャーを随分取り除いてくれたのだった。

「よし、じゃあすぐに謝って──」

 しかし、そこで計佑は固まった。謝るという行為自体への抵抗はなくなったが、
なんといって謝ったものか……結局そこで、また詰まってしまったのだ。

──『ヤキモチですか? 気付かなくてすいません』

 勘違いしている可能性だってない訳じゃないのだ。
もし勘違いだったりしたらと考えると──こんな文面、恐ろしくて送れる筈もなかった。

──『先輩に妬いてもらえるなんて光栄です。正直嬉しいです。ありがとうございます』
   ……って、だから勘違いかもしんないしっ!! そうじゃなくてもこんな恥ずかしいメール送れるか〜〜〜!!!

 恥ずかしさに悶絶して、ゴロゴロとベッドを転がり出した計佑に、由希子の声が階下から届いた。

「計佑〜っ、ちょっと手を貸してー!!」
「え、あ〜……ああ、わかったー!!」

──何か作業をしていれば、意外といい文面思いつけるかもしれないしなっ。

 そんな風に、口実を見つけて。問題を先送りにした情けない少年は、階下へと降りていくのだった。

─────────────────────────────────

 計佑にメールを送った後、雪姫は母やアリスと夕食をとった。
 その後、部屋に戻った雪姫は真っ先にケイタイを手にとって。
そして期待通り、計佑からの新着メールがある事に軽く胸を躍らせた。

──よかった、これで計佑くんと仲直りできるよね……

 きっと計佑は謝ってきてくれて、そして自分も悪かったと謝り返して。それで仲直り。
そんな風に考えて、うきうきとメールを開いて──

『おまえなんかキライだ』

──その一文に、目を見開いて凍りついた。

─────────────────────────────────

「あっ、ケイスケ!! おかえり〜」
「おっホタル!! やっと帰ってきたのか……おかえりはこっちのセリフだよ」

 計佑が由希子の手伝いを済ませて部屋に戻ると、そこにはホタルがいて。何やらご機嫌な様子で飛び回っていた。

「随分と遅かったじゃないか……どこ行ってたんだ?」
「えへへ〜、なんかちょっとチカラがもどってきて、またモノをさわれるようになったから〜。
色々なトコ行ってあそんできたんだ〜」

 ほらほら、といった感じでホタルは計佑の携帯を掲げて見せると、計佑のところに飛び込んできた。

「おおっ、よかったじゃないか!! ……念のため聞くけど、悪さとかしてないよな?」

 携帯を受け取りながら、昨日の事を思い出して。意外と悪戯好きらしい子供に確認する。

「……えー? ……うん、やってないよー、ヒトのカラダに何かする、なんてことはねー」

 ふいっと視線を逸らすホタル。そのセリフにひっかかった。
……後半の部分だけ強調していたような……
そこで、この部屋に戻ってきた時には既に、ホタルが携帯を手にしていたことを思い出した。
イヤな予感がして、ケータイを操作する。
……案の定、送信履歴が更新されていた。雪姫へのメールが、ついさっき送られている。
文面を確認して──愕然とした。震える口を開く。

「ホタル……どういうつもりだ?」
「……んー? なんのことかなー?」
「約束しただろう……もうイタズラはしないって」
「えー? 約束したのはケースケとかのカラダにって話だったよねー? イタズラぜんぶなん──」
「とぼけるな!!」

 最後まで言わせなかった。ビクリと幼女が竦む。

「わかってるハズだぞ、ホタル。そんなふざけた事言ってると、本気で怒るぞ」

 計佑の厳しい視線と声に、ホタルが怯んで視線を逸らした。
けれど、すぐに気を取り直したのか、視線は逸らしたままで言い返してくる。

「……ふ、ふーんだ。ケイスケが怒ってもこわくないもんねー。
わたしがその気になったら、スガタだって消せるしケイスケの体のジユウだってうばえるんだから。
だからケイスケがおこったって、ぜーんぜん──」
「おまえなんか嫌いだ」

 またホタルの言葉を遮ってやった。──ホタルが雪姫へと送った言葉を、そのまま使って。
 ホタルがビクリとして計佑と目を合わせてくる。大きな瞳をさらに大きく見開いて。
そんなホタルへと、さらに言葉を重ねた。

「好きなだけオレの体もいじればいいさ。でももうお前とは口も聞かない。完全に無視してやる」

 子供には強い少年が、的確にホタルを責めた。
ホタルはみるみる大きな瞳に涙を溢れさせ、計佑に抱きついてくる。

「やっやだー!! ごめんなさい!! 謝るからー!! 無視なんてしないでー!!」

 けれど、許さなかった。先の言葉通り、視線も合わせずにホタルの言葉を無視して。

「無視はやだー!! もうさびしいのはイヤなのー!!
……がっこうでケイスケたちに無視されたの、すごくつらかったのー!!」

──……っ……そうか……そりゃそうだよな……

 その言葉で、もう怒りを持続出来なくなった。
昼間放置してしまった事は、計佑も申し訳なく思っていたことだから。
 計佑の服に顔を押し付けてきているホタル。そんなホタルの頭に、ポンと手をおいてやった。

「学校のことは悪かったよ……どうしても人目があるところじゃあ、そうなっちゃうんだよな……
……家に帰ったら出来るだけ遊んでやるから、許してくれないか?」
「うんっうん!! もうぜったい悪いコトしないからー!! だからホタルのこともゆるしてー!!」

 結局、計佑が先に謝って。
そしてホタルも謝りながら、頭をグリグリとこすりつけてくる。その頭を、優しく撫でてやった。

「ああ、お互いに悪かったから、お互いに謝った。じゃあもうこれで終わりにしよう」
「ホントっ!?」

 がばっとホタルが顔をあげてきた。……鼻水まで垂らしたヒドい顔になっていた。

「ぷっ……ほらほら、せっかくのカワイイ顔が台無しだぞ?」

 ティッシュで顔を拭ってやる。
それが終わると、もうホタルの機嫌は治ったようで、ニコニコと笑いかけてきた。

「えへへ、ゆるしてくれてありがとーケイスケ……ほんとーにごめんなさい」

 ぺこりと頭をさげてくる姿に、苦笑が漏れた。

「……まあ、お前がホントに謝らなきゃいけないのは、オレじゃなくて──」

 そこで、はたと気づいた。まだ雪姫に何の訂正も行なっていないことを。

「──やべぇえええ!?  はっ早く先輩に……!!」
 
 メールを打つ時間も惜しい。電話にしようと考えた所で──

『♪〜♪♪〜……』

……電話がかかってきてしまった。

──まっ……まさか……

 そのまさかの相手──雪姫からだった。
一足遅かった。このタイミングでの電話……内容はわかりきったことだった。
 硬直して電話に出れない計佑に、幼女ホタルが珍しく気まずそうな顔をした。

「あっあ〜、ケイスケー、わたしちょっとまくらのところにいってくるねー、ごゆっくりー」

 さっさと逃げ出すホタルに、

「責任とれよコラァアアア!!!!?」

 思わず怒鳴ってしまっていたが、ホタルの声が雪姫には届かない以上、そんな事は無理で。