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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 それでも、大好きなヒトからの『好き』という響きに、心が震えない訳がなくて。
計佑の手が重ねられた左手と、計佑の言葉が届いた耳の二箇所から、熱が一気に全身へ広がっていく気がした。
 浮き立つ気分で、体もふるっと震えて。
それを勘違いしたのか計佑の手に力が入り、雪姫の手をきゅっと握りしめてきた。
ますます体が震えだしそうで、必死でそれを堪えた。
──せっかくの至福の時間なのだ、簡単に終わらせるわけにはいかない……!!

「……信じられない。アリスにはあんなに優しいのに、私には意地悪ばっかりだもん……」
「意地悪なんてしてるつもりは……!!
……そりゃオレはバカだから、気付かずに何かやっちゃってるかもしれないけど。
でもアリスは子供じゃないですか。先輩への態度と違うのは当たり前ですよ……先輩は特別なんだし」

──特別……!! 特別って何っ!?

 今、計佑がどんな顔をしているのか見たくて堪らない。けれど今の自分はもうニヤけきっている。
逸る心を、ぐっとおさえて。しっかり間をとってから、問いかける。

「……特別って……どう特別なの? ……虐めやすいとか、そういうコト?」
「まさか!! そんなんじゃなくて……子供だったら、遠慮とかしないでいられるけど……
先輩だとドキドキするし、嫌われたくないって思うから緊張もしちゃうし……
オレが今意識してる女のヒトは先輩だけだから、そういう意味で特別なんです」

──うっうわぁ〜〜〜!!! うわあああああ!!!! や、やっぱり泣いてるフリ続けていてよかったぁ……っ!!!!

 嬉しい言葉をスルスルと紡いでくれる少年に、また体が震えた。
 告白……まではいかないかもしれない。
けれど、この初心すぎる少年からの言葉と思えば、やはりその意味は格別だった。

 アリスでも他の誰でもない、自分『だけ』が計佑の『特別』。
昨日は結局翻されてしまった言葉だけど、今のはもう、間違いない。

 そっぽを向いたまま顔を真っ赤に染めた少女は、唇をむにゅむにゅとして喜びを噛み締めた。
もう振り返って、計佑に抱きついてしまいたい気分だった。

……けれど、まだ我慢する。
満足いく言葉は確かに聞けたが、少女は欲が出てきてしまったのだった。

「……本当かなぁ……昨日も私を特別扱いしたくないって、アリスにもプレゼントあげるって約束してたよね……?」
「そっ!? ……それはっ、まくらのやつが冷やかしてくるから……つい恥ずかしくなって……その。
だからあれはただの照れ隠しだし、アリスのはただのおまけみたいなもんで……」
「私の気持ちを知ってるクセに、私の目の前でアリスとイチャついてた」
「イチャ……!? いやっ、だからアリスは子供でしょう……!! 抱っこくらい、そんな特別な……」
「じゃあアリスを褒めたりしてたのは? カワイイとか、髪キレイとか、私もそんなコト言われてみたいのに……」
「え゛えっ!? いやっ、子供を褒めるのと女のヒトを褒めるのは、まるで意味が違うしっ!!」
「抱っこしてあげて、お腹さわって、額を覗いて、髪を梳いてあげたりまでしてた……
計佑くんと2つしか歳違わないコなのに。私と計佑くんの差と同じだよね?」
「うっ!? いやっ、それはそうかもですが……いやいやっ、でもアリスはやっぱり完全に子供でしょう!?」
「そんなことないよっ。私のコトも、抱っこしたり髪梳いてくれたりしないと不公平だもんっ」
「いやっ、だからそれは……!! って、ん? ……先輩……?」

 計佑の声が、不審そうなものに変わって。
 ギクリとする。しまった。声色を変えておくのを、いつの間にか忘れてしまっていた。
今からでも、悲しそうな表情を取り繕うくらいは出来るのだけれど──

「……今、明らかにギクッて感じの震え方しませんでしたか、先輩……」

──ちょっともう、誤魔化すのは無理そうだった。

「先輩……何をしたかったのかは、流石のオレでもなくとなく分かりましたよ?
だけど、人を騙して──っていうのは、それこそあんまり好きになれないんですけど」

 手の甲に重ねられていた計佑の手が退けられた。

「やっ!? ダメっ!!」

 その言葉と、離れていく手に、慌てて振り返る。去ろうとする手を追いかけて、しっかり握り直した。
けれどそこで──

「……やっぱりそうだったんですね」

 計佑がジト目で、こちらを見つめてきていた。
少年からそんな目で見られるのは初めてで、色々な意味でドキリとする少女。けれど──

「……なっ、なによぅ!! こっ、これはだって……そうっ、そもそも計佑くんが悪いんだからっ!!
キライなんて言われて、私すごく傷ついたもんっ。すごく悲しかったもんっ。
だからちょっとくらい甘えたって、許されるはずだもんっ!!」

──そこは結局、甘え少女。謝るのではなく、逆切れしてみせて誤魔化しにかかるのだった。
 
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 騙されていた事には少しムッときていた計佑だったが、雪姫のその叫びには痛いところをつかれた。
やはり、"冗談" という言い訳は失敗だった。
けれど返信で出されていたメールだから、相手を間違ったという言い訳も苦しかった。

──……やっぱり、もう話しちゃうか……

 出来ればホタルのことは話したくなかったけれど。
自分がやった事でもないのに、これ以上咎を背負うのも耐え難くなってきていた。
 それに、雪姫には出来るだけウソをつきたくない気持ちもある。
 そして何より、このままでは雪姫との関係にもしこりが残るかもしれなくて。
──それは、何より許容しがたい事だった。

「先輩。今更ですけど……実はあのメール、俺が出したんじゃないんです」
「えっ!? なっ、何それ? えっ、じゃあ……どういうコトなの?」

 じゃあ誰が出したのか、何で冗談なんて言い出したのか、どうして今まで隠していたのか──
色々と疑問はあるのだろう、大きな疑問符を顔に浮かべる雪姫。
 そんな少女へと、全部は話せないけれど説明を始める。

「あれは、今ちょっとウチにいる子供がイタズラで出したんですよ。
その子の事は、先輩にでもちょっと話しにくい事情があって……とっさに隠そうと思ったら、あんな言葉で言い訳しちゃって」

 正確には『先輩にでも』ではなくて『(怖がりの)先輩にだからこそ』話せない事だったけど、そこは流石に誤魔化させてもらう。
 それに自分の場合、とっさではなかったとしてもやっぱり "冗談" などというバカな言い訳をしていた可能性は高いけれど、それも棚上げさせてもらうことにした。

「そ、そうだったの……? でも、だったら電話の時にでも言ってくれれば良かったのに」

 目を丸くした雪姫がそんな事を言ってくるけれど、

「あの時の先輩に、そんなコトを言わせてくれる余裕は無かったじゃないですか」

 苦笑を浮かべての言葉に、雪姫がうっと言葉に詰まって、気まずそうに視線を逸らした。
 それでちょっと調子に乗って、

「先輩も、あんなメールはもうちょっと疑ってくれたらよかったのに。俺が先輩を嫌うなんてあるワケないでしょう?」