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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「怒られるに決まってんでしょお!? ていうか、あんたもうホントにいっぺん死んできたら……?
もう失礼とかなんてもんじゃないよ……ホント死刑もんでしょ、それ」

 あまりの言われように、流石に口を挟む。

「……いや、それは流石に言い過ぎ「なワケあるかっ!!!!」

 グワっとまくらが噛み付いてきて、最後まで言わせてもらえなかった。

「……も〜〜〜っ……ホントなんなのあんたはぁ……
一昨日って、あんたがアリスちゃんとイチャつきまくって、雪姫先輩を弄んだ日でしょお?
私の必死のフォローも台無しにしてさぁ……
そして昨日って……あ!? 部活の時に、先輩がすっごい怒ってたのはそのことなのっ!?」

 計佑を『目覚くん』呼ばわりしていた雪姫の事を思い出したらしいまくらの言葉だったが、

「……いや、その……それはまだ前の……またちょっと別口というか……」

 口ごもりながら答えた計佑に、まくらが『ガンッ!!』とテーブルに額をぶつけた。

「べ、別口……? あんなに怒らせてたのに、そっからまた更に
『先輩の気持ち、昨日までわかってませんでした』とか言っちゃったワケ……?」

 テーブルに突っ伏したまま、やはりテーブルの上に置いた拳を震わせながら訊いてくるまくらに、

「……い、いや、まあその……はい」

 思わず敬語で答えてしまった。
それにまくらがガタンッと勢い良く立ち上がり、
そして間髪入れずに、計佑の顔面にグーパンチを打ち込んできた。
ガツン!! と結構派手な音がして。

「いてェエエ!? なっなにすんだよっ!?」

 まくらからの暴力は昔からそれなりにはあったが、いくらなんでもこんなに重い顔面パンチは初めてだった。
頬を押さえて、流石に声を荒げたが──

「うっさい!!! 今のは世の中の女のコ全員からの一撃だ!!!! オマエみたいな男は、ホントもう存在すんな!!!!!」

──仁王立ちで、般若のような顔をしたまくらの迫力に、金縛りになってしまうのだった。

─────────────────────────────────

──体感時間では1分ぐらいにまで感じた、長い十秒が過ぎた。

 その間、ずっと般若状態だったまくらが、ようやく表情を変えて──今度は涙を滲ませた。

「……雪姫先輩が不憫すぎるよぉ……あんた、一昨日からどんだけ先輩を虐めれば気がすむのよぉ……」

 両手で顔を覆ったまくらが、崩れるように椅子に座り直した。
 まくらのその様に、漸く金縛りが解けて。慌てて、身を乗り出して弁解を始める。

「いやっ、先輩にも言ったけど!! 虐めてるつもりなんか全然ないんだって!?
オレなりに、先輩のことは想ってるつもりで行動してるだけで!!」
『ゴッ!!!!』
──まくらの放ったマッハパンチが、全く反応できない少年の顔のど真ん中に突き刺さった。

「想ってそれとかなお悪い!!! そんなんで言い訳してるつもりか!!?」

 再び般若と化したまくらが怒鳴ってきたが、今の少年に出来る事は、鼻を押さえてのた打ち回る事だけだった……

─────────────────────────────────

 その後、どうにか痛みが引いてきた計佑が、おそるおそるまくらに視線を戻した。すると──

「……オマエ。今すぐ先輩のとこ行って、告白にお断りの返事をしてこい」

 完全に目が据わっているまくらから命令が飛んできた。

「はぁっ!? なっなんで!? いやっ、オレは応える方向で考えてるって──」
「オマエに先輩と付き合う資格なんてない。ていうか、オマエのような男は一生誰とも付き合うな」

 腕組みをしたまくらからの、生涯に渡る命令。
しかし、そんな命令に従える筈もない。正直、今のまくらは怖かったが、

「……いやだ。そもそも、先輩との事をなんでお前に命令されなきゃなんだよ……」
「あァ!?」

 ぼそぼそとした抵抗に、ドスの効いた声が返ってきた。
ビクっと身体が震えてしまったが、それでも。

「だっ、大体……先輩は一応許してくれたんだ。
……そうだよ、だからお前がなんて言おうと関係ないんだからなっ!!」

 途中で、自分のほうに理があることに気付いて、最後には声に力が戻った。
それは今のまくらも認めざるをえなかったのか、「ちっ」と舌打ちをして。

「雪姫先輩、心広すぎでしょ……なんでそこまでされて許せるのかな……」

 ぶつぶつとつぶやいたまくらが、ガリガリと頭をかきむしって。いきなり、ガタン!! と席を立った。
またも、ビクッ!! と情けなくも身体を震わせてしまった計佑を尻目に、

「あ〜〜も〜〜!! 落ち着いて話すとか、もう今は無理!! この話の続きは帰ってからにする!!」

 言い捨てて、まくらがドスドスと部室を出ていった。

──……た、助かった……

 計佑が、ズルズルと椅子から半ば滑り落ちた。そして、妹分に本気で怯えていた情けない少年は、

──……なんでアイツ、あそこまでキレるんだよ……
  そりゃあ問題あったとは思うけど……でもそこまで悪くないよな、オレ?

 まくらに知られたら、マウントでボコられそうな事を考えていて。──本当に、救いようがない少年だった。

─────────────────────────────────

 天文部室を後にして図書室を訪れた計佑は、そこで──

「ぁっ……目覚くん……」

──硝子に遭遇してしまった。

──し、しまった……須々野さんがいる事はわかってたハズなのに……!!

 まくらとの慌ただしい会話をまだ忘れられなかったせいで、ついうっかりしていた。
 今日は、硝子には徹底的にやられてしまった。
そして、まだ誤解を解いていない以上、硝子がまだ怒ってるだろうと考えた計佑は、つい怯んでしまう。
 しかし、機微に敏感な硝子がそれに気づかない筈もなく……表情を歪めた。
その表情から、また気を悪くさせてしまったと考えた計佑が、慌てて──

「あっ……!? ご、ごめ──」
「ごめんなさいっ、目覚くん……さっきは、つい調子に乗ってやりすぎちゃって……本当に、ごめんなさい……」

 謝ろうとしたところに、涙を滲ませた硝子の方が先に謝ってきた。

──……え……?

 予想外の硝子の反応に、思考が一瞬止まった。てっきり、まだ怒っていると思ったのに。
しかし頭を下げてきた硝子は、ずっとその姿勢のままだった。
 やがて我に返った計佑が、

「えっ、あっ、やっ!? 別に怒ってないから!! ちょっと、もう顔をあげてよ」

 そう言うと、硝子はそぅ……っと顔を上げて。

「……本当に……怒ってない、の……?」

 上目遣いで、不安そうにそう問いかけてくる。

──……あれ……?

 その硝子の様子に、なんだかデジャヴを感じた。
なんだか、そういう言動をする人物がもう一人浮かびかけたが、とりあえずその事は深く考えずに硝子に声をかけた。

「うん、本当に。別に気にしてないから」

 そう言って笑顔を浮かべてみせると、硝子がほぅっと溜息をついて、完全に身体を起こした。

「よかった……もう完全に嫌われたかと思った」