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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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でも、やっぱりそれに対する罰にしては、さっきのはあまりにもさぁ……」

 それでも、やはりちょっと納得いかない計佑が頭を捻るが、

「し、白井先輩は私の憧れの人だって言ってあったでしょう!?
そんな人にちょっとでも変な事なんかされたら、それは私としてはどうしても許せなかったの!!」
「うっ……そ、そう言えばそうだったね……」

 温泉に行った時、そう言って釘を刺された事を思い出した。

「けど……そっか、やっぱ須々野さんから見たら、
オレなんか相変わらず先輩には全然不釣り合いとしか思えないんだよね……」

 あの時にも、そんな風に責められた事を思い出して。
その時には苦笑でやり過ごせたけれど、今、この時の計佑は落ち込んでしまった。
 あの頃と違い、計佑の気持ちは雪姫に応える方向へと随分進んでいる。
──将来、もしも雪姫と付き合うような事になった時。
友人の硝子には祝福してもらえないだろうかと考えて、凹んでしまったのだった。
 けれど、そんな萎れた計佑を見た硝子が慌てた。

「えっ!? ちっ違うよ!! 目覚くんは全然『なんか』じゃない、凄い人だと思ってる!!
釣り合ってないのは、し──とっとにかく!!
私はただ、目覚くんの口説き方というか、女ったらしなとこが引っかかってるだけで……」

 その硝子の言葉に、俯いていた計佑が顔を上げた。

「お、女ったらし……?  俺が……?」

 昨日、雪姫にも言われた事だった。
全然納得出来ない非難だったのだが、硝子にまで言われては流石に無視出来なかった。

 「……ねえ、一体オレのどこが女ったらしだっていうの?
鈍感だし、自分でいうのも何だけど、相当奥手で初心な方だと思うし……
もてるヤツがやるような事なんて、全然やった事ないと思うんだけど……?」

 だから、疑問を硝子にぶつけてみた。
すると、硝子はしばらく無言で計佑の表情を見つめて。はぁっと溜息をついた。

「……あのね、目覚くん。目覚くんの場合、
『自分なんて、モテるやつとは全然別人種だし』
みたいな事思い込んで、そして開き直って奔放に振舞ってる事が問題なの」
「…………???」

 硝子の指摘は、さっぱり理解出来なかった。

 首を傾げるばかりで、微塵も理解できていない様子の計佑に、今度は硝子が質問を飛ばす。

「……あのね、目覚くんって『自分なんて女のコにモテる訳ない』とか思ってない?」
「うん、だってそうでしょ」

 コクンと頷いて、即答してみせる計佑。
その『何当たり前の事を???』みたいな表情でキョトンとしている少年に、硝子がげんなりとした顔つきになる。

「……わかってたつもりだけど、本当に100パーセントそう思い込んでるんだね……
この質問に、そこまできょとんとした顔できるんだ……」

 硝子はもう一度「はぁ……」とため息をつくと、表情を戻して。

「あのね、つまり──」

 また説明を始めようとしたところで、口を噤んだ。

「…………」

 そして無言になった硝子は軽く俯き、口を片手で覆って。何やら考えこみ始めた。
やがて、視線を計佑に戻してきた硝子は、

「……やっぱり、教えてあげるのはやめておくね」

 そんな事を告げてきた。

「えっ!? なっなにそれ!? 言いかけたんなら最後までちゃんと教えてよ!!
これじゃあ何もわからないよ!?」

 計佑が慌てるが、硝子は落ち着いた眼差しで。

「あのね、目覚くん。よく考えてみたら、この事はちゃんと理解しちゃうと、
目覚くんの場合……悪化する可能性がある事に気付いたの」
「えっ!? そっそうなの!?」
「そうなの。まだ無自覚だから今の程度で済んでるけど……
本物の女ったらしになんて、目覚くんだってなりたくはないでしょう?」

──『自覚のある』『女ったらし』。
イメージされるのは、チャラい格好をして、軽薄な言動を繰り返しては、次々と女のコをひっかけていくような。
……それは確かに本物の──それも最悪の女ったらしだ。

 そう考えた計佑が、コクコクと頷く。

「そうでしょう?  だからいい?  目覚くん。
この事については、他の人にも話を聞いたりしちゃ駄目。
これまで通り、意識しないで自然体で振る舞ってね?
……それが、一番傷は浅い筈だから」
「わ、わかった……絶対、この事は追求しない。これまで通り、普通にしてればそれでオッケーなんだね」

 硝子の『策』を、微塵も疑う事なく信じた少年が、何度も頷いて。

──完全に騙されてくれている少年の真剣な表情に、硝子が満足気に微笑んだ……

─────────────────────────────────

 借りた本を部室に置いたら、今日は帰宅すると言う計佑に、硝子も
「……じゃあ、私も今日は帰ろうかな」と連れ立って。
二人は今、談笑しながら校門へと歩いていた。

「……でもさ、須々野さんって最近本当に感じが変わったよね……旅行前とは随分印象違うよ」

 計佑がなんとなく切り出した話題に、しかし硝子は顔を強張らせて。軽く俯いた後、伺うように計佑に問いかける。

「……やっぱり……キツくなったって思う?」
「うん」

 その不安そうな問いに、バッサリと即答する計佑。硝子がグッサリと傷ついた顔をして、ガクリと俯く。

「……そこは嘘でもいいから、『そんなことないよ』とかフォローしてくれる所じゃないかな……」
「えっなんで!? どうしてヘコむの? 別に悪い意味で頷いた訳じゃないのに」

 凹む硝子に、計佑が慌てる。

「……どう考えたって悪い意味しかないじゃない……何言ってるの目覚くん……」

 うらめしそうに見上げる硝子。けれど計佑としては、本当に悪く言ったつもりはなくて。

「いや、本当に。むしろいい事だと思ってるんだけど」
「……酷い。そんな無理ある嘘ついて……」

 いよいよ本格的に拗ね始めた硝子に、しかしこの少年は、

「いや、だってさ。
今まで見せてくれなかった一面を晒してくれるってのは、それだけ打ち解けてくれたって事でしょ?」

 そう、逆に尋ねてみせて。

「……そ、それは……そうかもしれないけど。
でも『キツイ』なんて悪い一面でしかないじゃない……実際、今日だって私に怯えてみせた癖に」

 計佑の言動を拾い上げて、硝子が責めてくる。しかしそれでも──

「いや、確かにその瞬間は恐いと思うよ。でもそんなのその瞬間だけでしょ?
それで、その時とのギャップっていうのかな……
いつもの優しい須々野さんって、本当に癒し系なんだよなぁって実感するようになってさ。
だから少なくともオレは、前より須々野さんの事、ずっと好きになってるんだよ?」

──そんな言葉と共に、笑いかける少年。
そして、想いを寄せている少年から、
笑顔と共にそんな言葉をかけられてしまっては、いくら腹黒策士の少女といえど──

「……なっ、なっ……」

 言葉に詰まって、ぐるっと顔を背ける事しか出来なかった。
その顔も、どんどん赤くなっていって。
そんな硝子が、突然早足になって計佑から距離をとり始めた。

「えっちょっと!? どうしたの須々野さんっ」