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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 計佑が慌てて呼びかけるが、

「……落としてから、持ち上げてみせるなんて……!!
 こんなっ、これも目覚式の手管の1つなのねっ……!?
 本っ当、本当……!! なんって凶悪な人なのっ……!!!」

 呟きながら、真っ赤な顔のまま、硝子はどんどん計佑から逃げていくのだった──

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第22話-2 『まくらと計佑、雪姫とアリス。「笑い事じゃないよぉっ!?あの人の場合、本当に実現しそうな未来じゃないの……!」』

 <22話-2>


──その日の夜。今、計佑は自室でホタルと戯れていた。

 胡座をかいた計佑に、正面から抱きつくような形でホタルが座っていて。
後ろにふらーっと倒れていくホタルの背を、
計佑が途中で抱きとめて、抱き寄せられてはホタルが計佑の胸に飛び込む。
──そんな、微妙な起き上がり小法師を、飽きもせず繰り返していて。
 ホタルはキャッキャと本当に楽しそうにしていたのだけれど、
そんなまったりとした幸せ時間は、ノックもせずにドアを開けて、そのまま部屋に入ってきた少女によって終わりを告げられた。

「……計佑。昼間の続きの時間だよ……」
「はっはあっ!? えっ、まだあの話終わってなかったのかよ!?」

 いきなり現れたまくらとそのセリフに、計佑がうろたえて振り返った。が……まくらの顔は随分とげっそりしていた。
そんな、怠そうにした少女が、計佑たちの方には一瞥もくれずふらふらと歩いて。
計佑のベッドに倒れこんで、一言だけ呟いた。

「……キツかった……」
「なっなんだ? どうした? 晩飯の時には、お前ピンピンしてたのに……」

 夕食を終えてからの一時間程の間に、いつだって元気満点の筈の少女に一体何があったのか……?

「……雪姫先輩と電話してたんだけど……それがちょっとね……」

 そう答えたまくらが、ゆっくりと身体を起こして。
ベッドに座り直すと、ピシャンピシャンと自分の頬を挟むように何度か叩いた。

「……よしっ!! じゃー、昼間の続き、始めよっか」

 そして元気を取り戻したまくらが、そう言って計佑たちを見下ろしてきて。
──そこで、冷たい目つきになった。

「……なに、その格好……一体なにやってんの……」
「何って……ちょっとしたシーソーごっこみたいなもん?」

 まくらがいきなり豹変した理由がわからない計佑が、キョトンとして答える。
それに、まくらが溜息をついて頭を抱えた。

「ほんっと、この男は……一体どういう成分で出来てんのかなぁ……」

 やがて顔をあげたまくらが、

「とにかく、ホタルちゃんにもちょっと話があるから。その格好をやめて、こっちをちゃんと向きなさいよ」
「ええ……? 昼間の話なら、ホタルは関係ないだろ」
「それが大有りなのよね……ほらっ、ホタルちゃん早くおりなさい」
「えー、やだ〜!! ハナシならこの格好でも聞けるでしょー?」

 ホタルがいつものようにごねたが、

「……ホタルちゃん。今私は、正直怒ってるから。ちゃんと言うこと聞いてね?」

 まくらの低い声に、ビクリと震えると。そそくさと計佑から離れて、ちょこんと正座をした。

「おいおい、子供に凄むのはやめとけよ……」

 計佑もまくらのほうに向き直って、胡座を組み直した。
そしてホタルの頭をひと無でして、慰めてやる。
けれどまくらは、そんな計佑の言葉は無視して。

「ホタルちゃん。昨日ホタルちゃんは、雪姫先輩に酷いコトをしたよね?」
「え? 何の話だ?」
「……忘れた訳じゃないでしょ、計佑。ホタルちゃんが先輩に送ったメールのことだよ」

 そのまくらの言葉に、ホタルがビクッ、と体を震わせた。その様子に、計佑の方が慌てる。

「そっ、その話か!? いや、それはもういいんだよ、もう終わった話で──」
「何言ってんのよ!! そんな簡単に許していい話じゃないでしょ!!」

 まくらが立ち上がって怒鳴ってきた。その怒声で、またホタルが震える。

「いやっ、まあそう怒鳴るなって!! 子供のイタズラなんだから、そんなに喚いたって──」
「本当にただの『子供のイタズラ』なら私だって怒らないよ!!
でも、これは違う……計佑にはわからないんだろうけど!!」

 確かに、計佑にはまくらがここまで怒る理由がわからなかった。それに戸惑った間に、まくらの怒声が続く。

「計佑、本当にあんたは全然わかってない!!
ヘタしたら、雪姫先輩との仲が完全に終わってたかもしれないんだよ!?
それくらい酷いコトされたのに、何あんたは簡単に許してるのよ!!」
「いっ、いや落ち着け!! オレだって、それは流石に一応わかってるよ、
だから本当に昨日ちゃんとキツく叱ったんだ!! そりゃあもう、ホタルがすっごい泣くまでだ!!
だからもう、本当に許してやってくれよ!!」

 必死に訴える計佑だったが、まくらはまるで落ち着いてはくれなくて。

「いいやっ、許せない!! どうせあんたの事だから、ホタルちゃんが泣きだしたらすぐに許したんでしょう!?」
「いっ、いや!! そんな事ない。昨日は……一応、ちょっとはガマンした」

 馬鹿正直にバラしてしまう少年。まくらが額に青筋を立てた。

「やっぱりそんな事じゃないの!! もういい!! 私が代わりにしっかり──」
「わ〜〜〜ん!!!! まくらがコワいよ〜〜〜!!!!」

 泣きだしたホタルが、ぴゅっと飛んで。あっという間に天井をすり抜けて消えてしまった。

「あっコラ!! も〜〜……っ!!」

 まくらが地団駄を踏んで悔しがるが、計佑はホッと溜息をついて。
それを見咎めたまくらが、今度は矛先を計佑に向けてきた。

「……計佑っ!! あんた、わかってるって言ったけど……!! ホントにわかってるの!?
雪姫先輩が優しい人だったからどうにか許されただけで、本当に危うかったんだよ!?」
「いっ、いや……うん、一応わかってるつもりだって……その、確かにあの後の先輩すごく……だったから。
でもさ、ホタルの気持ちも考えるとさぁ……
そうやってイタズラでもして気を引きたいって気持ちも、わからなくもないって言うかだな……」

 まくらの剣幕に怯みながらも、どうにか言い訳を続ける。

「いやっ、オレも昨日は本当に怒ったんだぞ?
……でもホタルの気持ちを聞かされて、ホタルの寂しさを考えたら……やっぱり、もう許すしかなかったんだよ」

 ついこの間まで、まくらも陥っていた状況。
10日もなかったけれど、それでもまくらだって随分と参っていた。
そんな状況を何十年も、それも今は6才児が耐えていると思うと──怒り続けるなんて、出来る訳がない。

「……それは。それは私だって、気を引きたかっただけって言うなら、ここまで怒んないよ……でもさ……」

 困ったように言う計佑に、ようやくまくらがトーンダウンして。
やがて、ため息をつきながら怒らせていた肩をストンと落とした。

「……はぁ。もういいよ……でも、計佑。
あんたの、その誰にでも優しいとこは……必ずしも長所にはならないからね?