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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「『雪姫先輩が、計佑のコトを好きで好きでしょうがない』事を、
あんたがどうにか理解出来たってとこまでだよ。 ……ホント、私もついさっき改めて思い知らされたけどね……」

 答えたまくらが、酷くうんざりとした顔つきで、重い溜息をついてみせた。

──せ、先輩……ホントに一体、どんなコト話したんですか……!?

 他人の惚気話なんて、ウザイ以外の何物でもないとは聞き及んでいる。
それにしたって、このまくらの怠そうな雰囲気は一体。
果たしてどれほどスゴイ話をされてしまったのかと、計佑は気まずくて仕方がなかった。

……まあ、『好きな人と、自分以外の少女との惚気話』だからこそ、
ここまでまくらが憔悴する羽目になっているのだが、そんな事はこの少年に解る筈もない事だった。

「あんだけ弄ばれても、まだ計佑のこと『好きで好きでたまらないの!!』
状態なんだもんねぇ…… 羨ましい男だよねぇ」

 太ももにヒジを置いて、頬杖をついたまくらがジト目で見下ろしてくる。

「うっうるせーよ!! お前、話聞きに来たんじゃなかったのかよ!!
冷やかしに来ただけなら、オレはもう話なんて付きあわねーぞ……!!」

 居た堪れなくて、赤い顔を誤魔化すように計佑が喚いた。
 するとまくらが、ベッドから立ち上がって。改めて、床へと座りなおしてきた。

「わかったわかった。今度こそホントに話きかせてよ。
──ほら、こうして上から目線もやめたことだし、真面目に聞くからさっ」

 そう言って、さっきまでとは逆に、今度は下から計佑の顔を覗きこんでくるまくら。
その顔は、いつも通りのニパっとした笑顔になっていて。
今度こそ漸くいつもの空気に戻ったかと、計佑も気分を改めて。説明を始める。

「あ〜と……まあだからさ。確信が持てない内は、いい加減には答えたくないってとこまで話したんだよな?」
「そうそう」
「それで……もう一つの理由は。
先輩がオレの事を……まあ、その……かなり好きでいてくれて。
……でも、オレが先輩に釣り合いがとれてなさすぎるのが、やっぱりどうしてもひっかかってたんだよ」
「……え?  釣り合いって……ホントに、雪姫先輩に自分じゃつり合わないとか考えてたの?」

 まくらが、不思議そうな顔になって。それでも、そのまま本音を吐き出した。

「……うん。オレなんかじゃあ先輩に申し訳ないって、ずっとそれがひっかかってた。
……でもさ、一昨日……先輩の気持ちの強さがちょっとだけわかった気がして。
それが、すごく……嬉しく思えて。
そしたらさ……もう、人間的に釣り合いがとれないのは仕方がない。
でもそれじゃあせめて、想う気持ちの強さだけでも先輩に負けないようになりたい。
それだったら、不可能なんかじゃないんだって、そうなってから応えたいって、そうも思うようになったんだ」
「……そんな事考えてたんだぁ……」

 ほあーっ、と息をつくような声を発して、感心した顔つきをするまくらに、照れくさくなって顔を逸らす。

「でもさぁ……計佑は、もっと自分に自信もっていいと思うよ。
まあ、鈍感すぎるとかの欠点が目立っちゃうから、そんな風に思うのかもしんないけど。
計佑にはさ、それに負けないか、それ以上に長所があるんだから。
でなきゃ、あの雪姫先輩が、好きになってくれたりなんてするハズないでしょっ」

 まくらが満面の笑みでそんな事を言ってくれるが、この謙虚少年が納得する訳もなく。

「……と言われても……お前の言うことなんて家族の欲目だろ?
それに先輩が好きになってくれた理由なんて……やっぱりよく分かんないんだよな。
最初は、たまたま助ける形になっちゃった事とか、なんか誤解だろうとばかり思ってたんだけど。
転んでみせて、ゴミ押し付けちゃったりもしての間抜けな話で、どうして『好き』なんてことになるんだ……?」

 心底不思議そうな顔をする計佑に、まくらが苦笑する。

「だからさ。昼にも言ったけど、『恋は理屈じゃなくて感性』なんだってば。
他人にはただの笑い話にしか思えないコトでも、雪姫先輩には特別な意味があったんだよ」
「ふーん……?」

 それでもまだ首を傾げる計佑の肩を、まくらがパンっと叩いてきて。

「まあ、計佑もちゃんと恋心を自覚できるようになった時には、多分わかることだよ。
理屈だけで納得しようとしてる今は、わからないかもだけどねっ」

 そう言ったまくらは、優しげな笑顔を浮かべていたけれど──

「……それにしても、また随分とマジメな事考えてたんだねぇ……
『……せめて、想う気持ちくらいは負けないようになってから応えたいんだ』
……かっこいいじゃ〜ん!!」

──最後には、ニヤニヤとした笑みへと変えて、からかってきた。

「ぐっ……!! 人がマジメに話したってのに、結局茶化すのかよ……」

 結局、色恋の話ではどうしたって一方的にまくらにやられてしまう。
ついには不貞腐れて、まくらから目を逸らしてしまう計佑。
 その、完全にそっぽを向いた計佑に、まくらが表情を暗くして。……本当に小さく呟いた。

「ていうかさ……自覚がないだけで、計佑はもう雪姫先輩の気持ちに全然負けてなんか──」
「え?」

 聞き取れずに、計佑がまくらに視線を戻したが、もうその瞬間にはまくらは表情を取り繕っていて。

「まあ、計佑の気持ちは一応わかったよ。
同じ女の子としては、先輩の待たされるつらさのほうに共感できちゃうんだけど……
『お母さんにかけて誓った』事だから、ちゃんと内緒にはしておくよ」

 そう言って、ニパッと計佑に笑いかけてきた。
けれど計佑は、今のまくらのセリフに、昼間は断念した『指摘』の事を思い出した。

──そうだよ……こういう話だと、こいつやたらと上から目線だけど……本来、そんな偉そうな事は言えないハズじゃん。

「……『女のコとしては、待たされるつらさに共感できちゃう』ねぇ……なんでお前にそんな事が言えるんだ?」
「はあっ!? なっなにそれ!! 私だってちゃんと女のコだっての!!」

 まくらが目を吊り上げるが、鉄拳が飛んでくる前に畳み掛けた。

「だってお前、カレシとかいたことないじゃん」
「っ……!? そ、それは……!!」

 拳を振り上げたまま固まるまくらに、ついに反撃の時が来た!!  とばかりにトドメを刺しに行く。

「つーかさ。それどころか、お前だって初恋すらまだだろーに。
オレと条件同じなお前が、一方的にオレに説教とかさぁ……」

 ハッ、と鼻で笑ってみせると、まくらがカッと顔を赤くした。

「ふっふざけんな!? あんたみたいなのと一緒にしないでよっ、私は初恋だって今だって──」

 喚いてきたまくらが、途中で言葉を止めて。完全に硬直していた。
そしてその顔色はどんどん赤くなっていって。
──その言葉と、そんな顔を見せられたら、流石の鈍感王にもわかった。

「おっ……お前、好きな男なんかいたのかっ!!!?」

 思わず、ひっくり返った声で叫んでいた。

──いや、『今だって』って言ったよな……てことは、『いた』というより『今もいる』ってコトで……

 その事実に、唖然とする。