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あい、じゃなくても

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「………?」


目を覚ますと、見たことのある部屋に居た。

「やあ、臨也。気が付いたかい?」

にこにことノー天気に笑う白衣の男に微妙に脱力する。
どうやら助かったらしい。

(ん?助かった……?)

ここに自分が辿り着くまでの経緯を思い出そうとした瞬間、後頭部にチリチリと
した焼けるような痛みを感じた。

「頭、痛い」

圧迫感があると思ったら頭に包帯が巻かれているらしい。

「それは仕方ないよ。静雄の振り回す標識が頭を……ああ、でも直撃じゃなくて助かったね。
それと足の怪我も、一応応急手当てしておいたから・・・って、どうしたの?」

俺は新羅の言葉に妙な違和感を覚えた。
シズオ?標識?一体何の事だ。
俺はさっき、確かに「助かった」と感じたのに、その理由が全く解らなくなって
いる。

「新羅」
「何かな?」
「俺はどうしてここに来たんだっけ」
「えーっと、それはね・・・言うなって言われたんだけど、静雄が君をここまで・・・」
「ちょっと待って。シズオって誰?」


率直に、疑問を口にした。
新羅は一瞬驚いた顔をして、俺の顔を覗き込んだ。
その顔からは、笑顔が完全に消えている。

「これから僕が質問する事に正直に答えてほしい。僕の名前は分かる?」
「岸谷新羅。」
「じゃあ、君の名前は?」
「折原臨也、だけど。」

それから知人の名前や住所を答えるだけの馬鹿みたいな質問がひたすら続いた。
おかしいのはやっぱり、あるただ一人についてだけだ。

金髪、サングラス、バ―テン服。
これから連想される人物なんて、俺は知らない。


「本当に分からないんだね?」

何度も繰り返される問に、おれは頷いた。

「で、その平和島静雄って奴が原因なワケだ」
「原因、と言っていいか……。君たちはその、所謂犬猿の仲というやつでさ。」

新羅はじっと俺を見つめてきた。

「………何?」
「あー一体何処から説明すればいいのやら」

新羅は頭を抱えた。

「俺がそいつに関わらなければ問題無いんじゃないの」
「君から関わらなくても、君が池袋に行けば向こうから関わってくると思うよ。
つまり、君が池袋に行かなければいいんだけど」
「それは無理かなぁ。残念ながら」

はあ、と新羅は溜め息を吐いた

「ま、記憶は何かの拍子に思い出す事もあるし。暫く様子を見てみようか。はい
、痛み止め。酷いようなら一錠だけ。四時間以上は服用出来ないから気を付けて
。」


新羅は白衣のポケットから小瓶を差し出した。
中には白い錠剤が10錠ほど入っている。

「有難く貰っておくよ。」
「勿論、お代は戴くけどね」





新羅のマンションから出ると、もう西日が落ちかけていた。

新羅には「とりあえず東口には行くな」と口を酸っぱくして言われたが
行くなと言われれば行きたくなるのが人間というものじゃないか。


その平和島静雄という奴は、金髪にサングラスでいつもバ―テン服を着用してい
るらしいから、それは嫌でも目立つだろう。

もし見掛けたら気付かれないように逃げればいいし、それよりもどんな奴なのか
一目見てみたいという好奇心が勝る。

こんなにも人間を愛している俺と犬猿の仲になるような男だ。


それにしても、俺はなんてバカなんだろうね。
有り得ないくらい沸点が低くて人間離れした怪力男なんて常軌を逸した逸材、自
分の駒に出来るものならすべきだろうに。


東口の階段に差し掛かる歩道の電柱に凭れて煙草を吸うバ―テン服の男が居た。

(まさかね。)


金髪にサングラスにバ―テン服。煙草を吸うという事も聞いている。

細身で、とてもそんな怪力を持つようには見えない。
あいつがその「平和島静雄」なら、本当に俺の事を知ってるんだろうか。



作品名:あい、じゃなくても 作家名:甘党