こらぼでほすと 二人11
ノタノタとデュナメスがラボに辿り着いた時点で、今度は上空に飛び上がり、そこで戦っている。これは一種のデモンストレーションだ。レーダー等で監視されているのを承知の上で、やれるもんならやってみろ、と、キラとアスランで挑発している。デュナメスは発見されたくなかったから、深海で模擬戦をやっていた。
システムの確認が終わると、すでに夕方だ。店があるから、大した時間は居座れないが、キラとアスランはオヤツを食べに寺に戻って来た。もちろん、ロックオンも一緒だ。
「ママ、今日のオヤツは? 」
「クロックムッシュと冷たいクラムチャウダー。あと、パイナップル。」
「きゃうーんっっ、食べる食べる。あと、目玉焼きの乗ったトーストも食べたいっっ。」
「わかった。すぐに作るから、あるもんから食え。・・・ロックオン、疲れてるな? 」
「キラと対戦してたんだよ。こいつのエグイ攻撃を食らった。」
「あーお疲れさん。ちょっと横になるか? それとも風呂入る? 」
「ここで倒れる。」
大した時間ではなかったはずなのに、かなり疲れた。十日もMSから離れていたし、相手が強すぎた。ロックオンは畳に転がって、目を閉じている。台所で、ちょいちょいとキラのリクエストを作って戻って来たニールに、キラが宣言する。
「明日から、僕が夕方の散歩する。」
「え? いいのか? アスラン。」
「この周辺ぐらいなら構いません。お寺を一周とかいうことなら。」
キラは常時、狙われているので、あまり徒歩で移動などはしない。まあ、寺の周辺なら、そういう心配は少ないので、アスランも許可する。寺の周辺をブラブラと歩くというなら、守り易いし、ここで仕掛けられることは少ないからだ。
「そうだな。墓地のほうを廻って壁沿いに歩くならいけるか。」
「はい、その程度で。三時ごろならいいですか? 」
「そのぐらいだろうな。」
そこへ亭主とサルが別々に戻って来た。晩酌セットと悟空のおやつも運ばれる。悟空はパンでは物足りないから、その前に、大きなおにぎりも一緒に出て来る。
「なあ、ママ。これ、ごはんにかけたの食べたい。」
冷たいクラムチャウダーを、ごはんにかけて、なんちゃってリゾットにしてもらうと、さらに、それも胃袋に納める。
「キラ、おまえ、それだけで足りるのか? 」
「僕は、これでいいよ、ごくー。でも、それもおいしそーだね。アスラン、僕の明日のブランチ、これが食べたい。」
「了解。」
「アスラン、それなら、うちのをタッパーに詰めるから持って帰れ。大量にあるから大丈夫だ。」
「助かります、ママニール。」
こういうものは大量に作って残ったら冷凍されるので、かなり予備はある。ニールは、シンたちにも配達してもらえるように、すでに、いくつかのタッパーを用意していた。ひとつ増えたところで足りなくなることはない。
「その代わり、シンとレイにも届けてやってくれないか? パンと合わせたら、朝飯になるから。」
「そうですね。承ります。・・・・それとコロッケも貰えませんか? この間、シンが美味しかったって言ってたんで。」
ここんとこ、ラボに詰めていたので、寺の食事にありついていない。アスランにしても、たまには食べたいのて、おねだりする。もちろん、大量に作ってあるから冷凍されていると知っている。
「いいよ。店で冷凍庫にいれておいてくれ。あと、なんか食いたいものがあるか? 」
「カレー、カレー、カレーッッ。そして、肉じゃがっっ。ハンバーグッッ。」
即座にキラもリクエストだ。カレーは大量に作られているほうがおいしいのだ。寺では一気に三十人前ぐらい作るので、これがおいしい。さらに、翌日まで煮込むので、とろとろになっているので、さらにおいしい。アスランとキラの二人では、そこまでの料理はできないから、こういうものは寺で貰うに限る。
「ごめん、キラ。肉じゃがはない。今度作ったら、冷凍しておく。カレーとハンバーグはあるから持ってけ。」
「きゃうーんっっ。ありがとーーーママ。愛してるぅぅぅ。」
「おい、うちの分はあるんだろうな? 」
「ああ、大丈夫です。小分けにしてるから、明日、食べたいならありますよ。」
「今夜は? 」
「すき焼き丼の予定です。」
「え、ちょっと待って、ママ。今夜の夜食ってすき焼き丼なの? 」
「ロックオンに食べさせようと思ってさ。だから、明日のオヤツは、それにうどんかごはんを合わせるつもりだ。」
「明日、食べるからっっ。残しといてっっ。僕、おうどんでっっ。」
「はいはい。どうしたよ? キラ。今日は、お腹空いてるのか? 」
「ううん、ママ料理に餓えてるんだ。ここんところ、ラボで作業してたから、アスラン料理も食べてないんだ。」
「そうだったのか。もちろん、用意しておく。もし、来られないなら冷凍しておくから無理はするな。」
「ぐふふふ・・・大丈夫。ちゃんとお仕事は終わったから、明日から、ゆっくりする。」
慌てる用件はないので、アスランも頷いている。組織がらみで、何かしら作業していたのだろう。そういうことなら、多めに準備しておこう、と、寺の女房も心積もりする。
「じゃあ、ロックオンの用事は終わったのか? 」
「打ち合わせは終わったよ。あとはトレーニングをロックオンがするかしないか、だね。」
ミーティング自体は終わっているが、デュナメスに慣れるには一度では無理だ。二、三日は搭乗したほうがいいし、調べている企業体関連のデータも渡さなければならないから、ロックオンは明日も一応は出勤予定だが、ニールと過ごしたいと言うかもしれないから確定はさせていなかった。
「させといてくれ、アスラン。トレーニングはやらせたほうがいい。ここんところ、うちで走ってはいるけど、MSも乗せておくほうがいいだろう。」
「そうですね。この後、欧州でもミーティングばかりだって言ってたから、そうしましょう。」
「僕らは行かないけどね。鷹さんも虎さんもいるから相手はある。」
「うん、MSは乗らないとカンが鈍るからな。」
横手でクースカ寝ているロックオンの予定は勝手に決められているが、気にしてはいけない。寝ているやつが悪いのだ。アスランが、ロックオンの携帯端末にメールで明日の予定を送っている。そこへ、最後にラボから引き上げてきたハイネが戻って来た。
「たっでーまっっ。ママニャン、俺の今夜のメシある? 」
「出勤か? 」
「いや、今日は休む。」
「じゃあ、後でな。飲むか? 」
「そうだな。とりあえず、ビールと・・・・あ、クロックムッシュか・・・これ、ある? 」
「あるよ。・・・はい、これで最後ですよ? ごはんは? 」
「夜食にする。漬物。」
ハイネのリクエストを聞きながら、亭主にメロンサワーを配達する。さらに、悟空にもクロックムッシュを運んでいるし、キラたちには口直しにアイスティーとパイナップルも運ばれる。おやつ時間は、かなり忙しいことになっているが、ニールは、ご機嫌だ。
「ほら、キラ、アスラン、そろそろ時間だ。悟空、おまえさんもだぞ? はい、漬物。あんたもですよ? 」
作品名:こらぼでほすと 二人11 作家名:篠義