恋ひつつあらずは
「あのあと、千早からメールたくさん来ただろう?」
太一はつとめて平静を装って、新に尋ねた。
語尾が震えないように。
内心を悟られないように。
「ああ、うん。来たよ。」
自分から尋ねておきながら当然のように返ってくるそんな新の言葉に
太一は動揺した。
千早が新にしつこくメールを送っているのは知っていたが、
もしかしたら新のパソコンが壊れているか何かで、
新がそれを見ていないかもしれない、と思うことが多少の救いになっていたから。
やっぱり、千早のメールを新は見ていたのか…。
でも、その心の内は見せないように、太一は無理に笑った。
太一は言った。
「千早言ってたよ、お前からびっくりするほど返事が来ないって。
少しでも返してやったら、千早、喜ぶのに。」
「ああ、一通も返さなかった。」
そっけない口調で新は言った。
「お前、ひどいな…。」
そう言って笑った太一の方に新は顔を向けた。
「どうしてオレが千早じゃなくて太一にメールしたと思う?」
そう言いながら、新がじっと太一の目を見てくる。
新に睨まれたと思った太一は、とっさに新の目を睨み返したが、
新は動じることもなく太一の顔を見つめ返す。