恋ひつつあらずは
どうして新はこんなに自分を睨んでくるのだろう。
新も千早のことがそんなに好きなのか。
そして千早も新のことを…。
そこまで考えて、太一は自分の思考にいたたまれなくなり、
苦しげに新から目をそらした。
「オレに気を使わなくてもいいよ。新はオレに遠慮することなんかないんだ。」
太一は目をそらしたまま言った。
「遠慮…?」
新が太一の言葉を繰り返しながら、目をそらした太一の顔を覗き込んでくる。
顔が近い…。
新のまっすぐな視線は苦手だ。
太一は自分の頬が高潮するのを感じ、さらに顔を背けた。
「うん。お前はオレに遠慮して、千早に連絡を取らなかったんだろうけど、
新がいない間、オレだってちはやとずっと一緒にいたわけじゃないんだ。
オレにも彼女ができたし。
だから、オレに構わずちはやに、」
「彼女、できたのか太一。」
新が太一の言葉を、いつになく強い口調で遮ったので、太一はさらに動揺した。
「え?彼女?」
「うん、彼女、おるの?お前…」
「ああ、いる…かな。」
「いつから?」
「ええと、中学の終わりに告られて。」
「どんな奴?」
「まあ、そこそこ可愛い。」
「…。その女、カルタ部?」
「いや、違うよ。」
「…お前さ、カルタの部活で忙しいんやろ?その彼女とちゃんと会ってるのか、太一?」
そういえば、最近彼女に連絡していない。向こうからも連絡が来ない。
もう自然消滅っぽいんだけど、そんなこと新に何の関係があるのか。
なんだろう新のこの尋問口調は。
新はいったいどうして自分の彼女話にこんなに食いついてくるのだろう。