恋ひつつあらずは
ああ、自分に彼女ができれば、千早を取られる心配がないってことか。
そう思い至り、太一は胸の中がチクリと痛むのを感じたが、それを振り払うように
明るく笑い、大げさな動作で頭を掻いた。
「や、もうラブラブだよ、って何言わせるんだよお前。」
オレに千早以外の彼女がいるってこと、
それを確かめられれば、新は安心するんだろう?
安心して、新は千早と…。
今、自分の笑顔はかなり引きつっているかもしれない。
でもそれを新に気づかれてはならない。
太一は顔に笑みをはり付かせて横にいる新の様子を伺った。
それはとても微かな反応だったが、それでも新の顔に浮かんだのは
太一が想像していたような喜びや安堵の表情ではなかった。
新の眉がわずかにゆがむのを、太一は目の端にとらえた。
それは、苦痛の表情…?
太一はますます動揺した。