二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

天使への遺言

INDEX|3ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

 「でも……私、ここでがんばっててもいいんですよね?」目線を自分の足下へ落としたものの、笑んだままおまえは言う。「だって、あの大陸の人たちは、私を必要としてくれているかもしれないんですよね?」
 ああ、と私が頷くと、おまえは神妙な面持ちになって続けた。
 「だったら、やっぱりがんばります。誰かが私を必要としてくれているのなら。でも」
 ちらりと、おまえは私のほうを上目遣いに見た。
 「ジュリアス様?」
 「何だ」
 「もしも……万が一……私が女王様になったら」
 「え?」
 「ご褒美に、私のお願いを聞いてくださいます?」
 「な……!」
 何をたわけたことを申している、と声を上げかけて私は、まだ周囲に何人もの民がいることに気づき、慌ててそれを呑み込んで咳払いした後、改めて言いたかったことを告げた。
 「何をたわけたことを申している!」
 「だって」私の叱咤に首をすくめながらもおまえは、唇をとがらせたまま続ける。「だって、何かご褒美があると思ったら、がんばる意欲も湧くじゃないですか……ほらたとえば、馬の鼻先にぶら下げるニンジンみたいな」
 大きくため息をついて私は、この、無礼極まりない女王候補になり代わり、陛下の像へ一礼すると、きょとんとした表情で私を見ているおまえに言った。
 「いったい、おまえは女王試験を何と心得ているのだ? それに……」
 「はい?」
 「私は、ニンジンか?」
 「……あ」
 ようやく拙いことを言ったと気づいたのだろう。だが私は、慌てて何か申し開きを言おうとするおまえを遮った。
 「私だけではない、おまえ如きの戯言の例に挙げられた、馬に対しても失礼だ」

作品名:天使への遺言 作家名:飛空都市の八月