機動戦士ガンダムRS 第41話 立ちはだかるもの
サオトメは、てっきり料理が上手なミサキ中尉が作るものだと思っていたため驚いた。
「はい」
アイリスは、照れくさそうに認めた。
「アイリスも料理が上手なんですよ。
だからたまにこうしてお願いしてるんです」
ミサキ中尉は、アイリス曹長の料理の腕前を高く評価していた。
「そうだったのか。
でもいつかの時は、料理が苦手だったと聞いたが」
サオトメがそういうとアイリス曹長は、ばつが悪そうな表情をした。
「もしかしたら恥ずかしかったのかな?
私は、アイリスの料理が大好きよ」
ミサキ中尉は、アイリス曹長の心情を読んだ。
「ミサキ中尉」
図星だったのかアイリス曹長は、赤面しながら怒った。
「隊長も見てください。
下手な人がこれほどの物を作れると思いますか?」
そういいながらミサキ中尉は、サオトメにアイリス曹長の弁当を見せた。
サオトメもその弁当のおかずの出来栄えに感嘆した。
「でしょ?」
ミサキ中尉は、笑顔でサオトメに同意を求めた。
「確かに」
サオトメは、あまりに感嘆しすぎてそれしか言えなかった。
「でも支給されてくる兵糧で作っているので本当に大したものは、作れません」
アイリス曹長は、謙遜した。
「それがこんなにおいしくなるんだからいいんじゃないかしら」
ミサキ中尉は、心のそこからアイリス曹長を褒めた。
するとアイリス曹長は、照れた。
「やはりミサキ中尉を論破するのは、難しいらしいな」
ミサキ中尉は、η艦隊の中ではかなりの知識人であり彼女と渡り合うのは非常に難しい。
現に上官であるシグマン大尉や同期のサウス中尉も彼女には、勝てなかった。
「そんなことよりさっさと食べましょう。
時間が無くなりますよ」
ミサキ中尉の言葉でサオトメとアイリス曹長も食事をし始めた。
「それにしてもやっぱりアイリスってすごいよな」
サオトメがふとそうつぶやいた。
アイリス曹長は、どういうことかわからず驚いた。
「こうして弁当を作るだけでなく部下の面倒も見たりしてるだろ」
ここでいう部下は、ステファニー軍曹たちのことだった。
「それに訓練も」
ミサキ中尉が付け加えた。
最近アイリス曹長は、いっそう訓練に身を入れておりマン・マシーン隊の中にいい刺激が生まれていた。
「しかも手を抜かないなんてアイリスにしか出来ないんじゃないの?」
アイリス曹長は、ミサキ中尉の褒め攻撃に完全に呆けてしまった。
ミサキ中尉は、そんなアイリス曹長の姿が面白く笑った。
(ミサキの言うとおりだ。
アイリスって実は、すごいのかも)
サオトメは、そう考えているうちに呆けたアイリス曹長に見とれていた。
「隊長、どうしてじっと見てるんですか?」
アイリス曹長の質問にサオトメは、適当な答えが思い浮かばずあわてた。
3人は、その後も楽しい食事を続けた。
※
ドミニオンのブリッジでは、バジルール艦長がユーラシア版GAT-Xシリーズのパイロットのデータを見ていた。
「クロト・ブエル。
強化インプラントステージ3。
X-370の生体CPU。
個人データは、全て削除。
オルガ・サブナック。
X-131の生体CPU。
ステージ2。
やはり個人データは、無しか。
2人ともパイロットでは、なく装備なのか。
消耗パーツ扱いとは」
戦争とは、いえ命というものをこういう風に使う軍上層部をバジルール艦長は遺憾に思った。
※
η艦隊は、L4に向かっていた。
ロンバルディアのブリッジにマックス中尉が敬礼しながら入って来て艦長席の隣に立った。
「L4までは、あとどれくらいですか?」
マックス中尉がグラハム艦長に質問した。
「間もなくだ」
前方を見ながら答えた。
まるで前方にあるL4をすでに見据えているようであった。
「しかし、自分は未だ賛成しかねます。
何の根拠もなくL4へ向かうというのは」
マックス中尉は、1つ情報だけでは情報なしと同等だと思っていた。
「軍上層部がそう判断した。
それが根拠だ。
サオトメ1人の判断なら愚痴の一つや二つ言いたくなるが」
グラハム艦長は、ニュータイプの言葉より軍上層部の言葉を信じていた。
「しかしだからこそ軍上層部は、もっと情報を集める必要性があると具申しているのです。
罠かも知れません」
マックス中尉は、これが敵の欺瞞情報ではないかと警戒していた。
「補給艦隊が出撃したのは、事実だ。
それにその補給艦には、新型モビルスーツが搭載されている情報もある。
さすがにこの情報は、事実とは言えないが。
それがあの艦隊に配備されたらお仕舞いだろ?
だから行くんだ」
そういうとやっとグラハム艦長は、マックス中尉の顔を見た。
「あのな、いいか?
お前は、確かにこの船のマン・マシーン隊を指揮する中隊長だ。
けれどその上には、もっとこの戦争全体を見ながら考えたり指揮したりする人間が居るんだ」
グラハム艦長の言葉にマックス中尉は、反論できなかった。
「お前が危惧する気持ちもわからないでは、ない。
しかしそれを修正するのは、艦長の責任だ。
そこのところを忘れるな」
グラハム艦長は、マックス中尉に警告した。
「申し訳ございませんでした」
マックス中尉は、敬礼しながら謝罪するとブリッジを去った。
※
コロニーメンデルではエターナル、アークエンジェル、クサナギとドミニオンに物資が入ったコンテナを量産機が搬入していた。
しかし1機だけ見慣れぬ機体があった。
それは、ラウ・ル・クルーゼ少将が乗るドレッドノートガンダムだった。
「弾薬や物資は、突っ込めるだけ持ってきています。
その後の補給ルートは、常時に戻す手はずになっています」
補給艦護衛艦隊旗艦チョムスキーの艦長のラコーニ中佐がバルドフェルド大佐に報告した。
「艦の最終調整は、あとどのくらいかかりますか?」
ラクスは、作業員に通信で艤装作業の進み具合を聞いた。
「そう、なるべく急いで下さいね」
ラクスは、それほど作業に時間がかからいと聞いたため安心した。
作業をしていたクルーゼ大少将その通信を聞いていた。
「いやはや、天然お姫様ばかりだと思っていたがそうではなかったか」
クルーゼ少将は、ラクスの意外な姿に驚いていた。
「大佐、そんなことは私達がやります」
アサギが乗るM1アストレイが近づかせながら通信でそういった。
「いいのだよ。
これも訓練の1つでね。
君たちは、もう大気圏内外で機体の操縦には慣れているのだろ?
早く私もこの機体に慣れておかねばならないから」
そういうとクルーゼ少将は、搬入作業を再開した。
アークエンジェルのブリッジでは、ラミアス艦長が通信で格納庫とエターナルと通信していた。
「エターナルが専用運用艦だというのならフリーダムとジャスティスは、そちらへ配備した方がいいでしょうね」
ラミアス艦長の提案にラクスがうなずいた。
「こちらはストライク、バスターとドレッドノートで」
アークエンジェルに搭載される機体が決まった。
「分かりました。
では、僕とアスランは向こうへ移乗します」
通信を切るとキラ大尉とアスラン中佐は、搭乗機に向かった。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第41話 立ちはだかるもの 作家名:久世秀一