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タイトル(仮)

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「…死んでなかったアルか」
「お前も夜兎なら分かるだろ。あの高さからで死ぬわけねぇって」
「…狙いは何ヨ」
「そんなおいそれと口に出せるわきゃねぇだろーが」


銃口が顔の真横に構えられても、欠伸をしてから阿伏兎は鼻で笑った。


「それに今日の相手は俺じゃなくて、あのボインの姉ちゃんだろ」


言葉と同時に視線を誘導させられ、自分を狙う銃口を発見するなり神楽は距離を取って2人を睨みつけた。


「おい、おっさん。教えたっすね」
「俺はアンタの胸元見てただけだけど。それに、どうせ避けられてたさ」
「チッ、クソ海賊が。…邪魔だけはするなっす」
「興味ねぇや。今日はお守りで来てるだけだからな」
「……どうだか」


室内にもかかわらず傘をさしてニヒルに笑った阿伏兎を軽く睨んでから、また子は銃口を再び神楽に向けた。


「あの時は岡田のせいで最後までやれなかったっすからね」
「また子、染み付きパンツは変えてきたアルか?」




***


駆けていった神楽を追いながら倒れている浪士の刀を借りて周りを警戒すれば、そんな新八を邪魔するように武市がゆっくりと構えた。


「どうも、お久しぶりですね」
「……あの時の…」
「おや、あの時ほど真剣を持っても震えなくなりましたか」
「…僕も一介の侍ですからっ」


真っ直ぐに相手も見つめて構え直せば、武市は感心したように息を吐いてから、同じように構えた。
  

「では…いざ尋常に勝負願いましょうか」
「ッ…!」


鬼兵隊の中では謀略家として頭での働きが多い武市だが、新八とは比べものにならないほどに、死体の上を歩いている彼からは異常な殺気が僅かに漏れ出ていた。



***


子供たちが走り出したのを追いかけようとすれば、銀時は懐かしい匂いに思わず振り返った。


「………高杉…」


銃弾や剣戟の巻き起こる中を煙管をくゆらせて歩いてくる幼なじみは、散歩をしているように穏やかに見え、銀時は思わず駆け寄りかけた衝動を歯を食いしばることで押さえ込んだ。


「よぉ…はじめまして、か?谷潜蔵さん」
「この名では初めまして、だなぁ銀時。それに呼んでもねぇのにお節介野郎まできたか」
「お前にしちゃ質素な名前だから気付かなかったぜ」
「お節介野郎じゃない、桂だ。…高杉の名はどうした」
「とうの昔に廃嫡されてるのに使い続けるのもな。それに、名前にまで華美を求めちゃ目立って仕方ねぇだろうが」
「そんな着物着といて説得力ねぇな」
「生憎、こういう粋だけは忘れたくねぇもんでな」



喉を鳴らすように笑ってから高杉が腰にあるものに手を添えれば、銀時も真似をするように木刀を握る力を緩く入れ、桂はそれに次いだ。
  、 

「あのガキどもはお前に似てるな」


戦う新八と神楽を見つめて、高杉が胸元から見える教本を撫でれば、銀時が眉間の皺を濃くした。


「俺らにとっての先生が、あいつらにとっちゃお前なのかもしれねぇな」
「…そんなんじゃねぇよ」
「高杉、そう感じるのであればもうこんなことはやめろ」


今でも鮮明に思い出せる師の笑顔を脳裏に蘇らせてから銀時が言葉を返せば、高杉が口角を持ち上げた。

その様子が桂には危なげに見え、僅かに銀時の前に出た。


「だから、俺は……先生に一番似てるお前がこの世界を享受してるのが腹立たしい」






***


「総悟!!」


目の前に飛び込んできた壮絶な戦いの最中にいる沖田に気付いて近藤が一歩踏み出せば、土方がその肩を押さえて、近藤の動きを阻止した。


「トシ!?」
「…あいつを信じろ」


その一言に近藤が一瞬の間をおいて無言で頷けば、部屋を見渡していた山崎が声を上げた。


「旦那!……それに、高杉!!」
「「!?」」
「チャイナに新八くんまで!!」
「…チッ、巻き込まれた後だったかっ」


せめて子供たちだけは、と3人が駆け出せば刹那に体中に血が吹き出した。

「が、はっ…!?」


己たちの血が付くことで目に見えやすい形になった其れを見つめて土方が振り返れば、三味線を鳴らして笑う万斉がいた。


「本当に白夜叉の周りの人間は面白いリズムで溢れてるでござる」
「…ここは俺がやる。近藤さんと山崎はガキどものところに行け!」
「…あぁ」
「了解です!」



刀を抜きながら走っていった2人の足音を聞き、土方も同様に刀を抜いていつも通りのニヒルな笑いで万斉と向かい合った。



「オイ、人と話すときはヘッドホンとりやがれ。どういう教育受けてんだてめぇ」




***



神楽にとって、新八にとって戦うという行為は一般の人よりは身近にあった。しかし、こうした命を削るやりとりは高揚感が沸き起こるものでもなく、ただひたすらに苦しいものでもあった。


「この名では初めまして、だなぁ銀時」


けれど、それも自分たちの家族のためなら違った。血の繋がりはない。一から百まで知りつくしているわけでもない。

絆が、想いが、過ごした時間が彼らを家族にした。



「銀さん!」
「銀ちゃん!!」


その家族が傷つくのだけは黙ってみていられない、とばかりに敵に振り上げた真剣と向けた銃口は護りたいという想いから溢れる殺気が入り交じっていた。



「へっ、ようやく本気でくるっすか」
「そのような殺気もだすんですね」



──キィンッ!

────ガガッ!


「チャイナさん!」
「新八くん!」


目の前の敵に集中して他からの攻撃を受けようとしていた二人の間に近藤と山崎が割って入れば、また子は盛大に舌打ちをしてから山崎に銃口を向けた。


「チッ、なんなんすか、お前らは」
「なんなんすかって…」


武市が僅かに眉間に皺を寄せてから、部下を下がらせれば、近藤はニカッと笑ってから新八を安心させるように肩をポンポンと叩いた。


「全く、邪魔ですね」
「悪いね。これも仕事のうちだからな」
「近藤さん……」



「「どーも、警察です」」



お互いに相手に向かって刀を構えれば、そこには侍の顔があった。



「チャイナさんは、早く旦那のところに」
「新八くんも早く!」


力強い言葉に思わず目を潤ませてから、二人は大きく頷いて銀色の元へと走っていった。



「さぁって、なんか知らない間に桂もいることだし、大物一斉検挙といきますか」
「ゴリラもたまにはやるってところを見せなくちゃいけないしな!」




***


高杉は依然、刀に手は添えるものの一向に抜こうとはしなかった。
その行為の真意が掴めずに木刀を握る力は緩めることを良しとされず、銀時は頬に汗が流れるのを感じていた。

 

──ザッ!!

「銀ちゃん!」
「銀さん!」


高杉と銀時たちの間を割って、構える子供たちに銀時が目を見開いて思わず振り返れば、そこには敵と対峙する真選組がいた。


「リーダー、新八くん!!」
「…銀さんに手を出すな…」
「銀ちゃんは私たちが守るネ…」
「君たちは下がっていろ、いつも戦っているような連中とは違うのだぞ」
「わかってるヨ!」
「それでも僕ら」


「「銀さん(ちゃん)がいない世界じゃ意味がないんだ(ヨ)!!」」



「お前ら…」
作品名:タイトル(仮) 作家名:遊兎