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タイトル(仮)

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銀時は二人に見えないように笑ってから、一歩踏み出して二人の頭を撫でた。


「お前等に怪我させたなんつーことがあったら、俺がお妙とハゲに殺されるだろうが。まぁ、こんなんに巻き込んだ時点でうちに帰っても俺の命やべぇーんだけどな。まぁ、それはヅラの命で勘弁してもらうとして」
「でも、銀ちゃん…」
「僕らも銀さんが黙って怪我するの見てられないです」


視線で高杉を睨み付けてから、子供たちに笑みを向けてやれば安心したかのように彼らも笑みをこぼす。



「それがお前の世界か、銀時」
「あぁ、これが俺の今の世界だよ」



優しく笑った銀時は師と被って見え、高杉は同じように笑ってから刀を抜いた。







「先生がいない世界で先生と同じ顔をするお前なんて要らねぇよ」




刹那、凶刃が迫り、銀時は思わず子供たちを抱き寄せて庇った。


「ぐぁっ!!」
「銀ちゃん!」
「銀さん!」
「銀時!」


背中に浴びた一太刀は子供たちの首を落としに来ていたために銀時の背中には深い傷が残った。


「…銀時、ヅラ、思い出せ。先生を失ったあの時を」
「…ッ、忘れてなんかねーよ」
「!」


自分たちを庇わせたことで傷を負った銀時を不安そうに見つめる子供たちをそのまま一度抱きしめてから銀時は桂の隣に立ち上がり、高杉に向き合った。



「この世界は先生を拒絶したんだぞ…」
「だから、今度はお前が世界を拒絶するってか?」
「あぁ」
「拒絶しても先生が戻ってくる訳じゃねぇのにか」
「先生とて、こんな結末は望んでおらんだろう」


高杉とて分かり切ったことだろう、と木刀の切っ先を高杉にゆっくり向ければ、高杉は苦しそうに左目に手を添えて銀時を睨んだ。


「ここは、先生に似てるお前まで拒絶する世界かもしれねぇじゃねぇか」
「ッ!」
「…高杉、やはりお前…」
「だから俺はお前が拒絶される前に…」


新八は、銀時の師のことは詳しく聞いたこともないが、高杉が言うとおりなのだとすれば自身の目の前にいる銀色が似てると言われる師を思う高杉の気持ちは痛いほどに分かった。


(僕も銀さんが居なくなった世界で笑ってられるとは思えない。もしかしたら、この人は───)


「あれぇ、高杉もお侍さんもまだやり合ってないじゃない」
「か、む───サド野郎!」


血だらけになった沖田を引きずりながら歩いてきた神威に神楽が目を見開けば、神威は沖田を銀時の方へと投げ捨てるようにしてニコリと笑った。
  

「高杉、殺れないなら俺が殺るよ?」
「…手を出すんじゃねぇ」
「……はぁ、仕方ない。……そんな目をした高杉とも殺り合いたくなってきたけど、そんなことすればあのサングラスたちと面倒なことになりそうだしね」


神威が肩をすくめれば、沖田の怪我を確認するように抱き留めていた神楽と新八が立ち上がって武器を突きつけていた。


「前に言ったこと忘れた?弱い奴に興味ないって」
「そりゃ沖田さんより僕は弱いけど」
「ムカつくサド野郎だけどナ」
「「仲間がやられたままなんて我慢できないんだよ(ヨ)!!」」
「仲間なんて見捨てればいいのに。侍ってのは面倒な生き物だね」



呆れたように沖田を一瞥してから神楽たちに視線を移してから、頬についていた血をぬぐい取ってから小さく笑った。


「そいつよりも楽しませてくれないと殺しちゃうぞ」






***


腕や足に絡みつく弦は動く度に土方の肉に食い込んでいく。


「白夜叉に破られてから強度をさらに強くしてある故…真選組副長土方十四郎…鬼といわれたお主もこれで終わりでござる」


剣を抜きながら近寄っていけば、土方は肉が千切れるのを厭わずに、いつでも迎え打てるように構えなおした。


「どれだけ肉が千切れようと俺ぁ振るうだけだ。この刀を、魂を」
「ほう…見事でござる」
「それにお前だってそうだろう」
「ッな!…いつの間に…!」


万斉の腕にも絡みつく其れは先ほどまで土方の肉を抉っていた其れだった。

「ヘッドホンとサングラスなんてしってっからだ」
「これとて条件がイーブンになっただけでござろう」
「馬鹿やろう…くっ、侍が…このままでッ、いるわきゃねぇだろうがよっ!!!」


思い切り歯を食いしばって土方が身体中に力を入れながら刀を振りかざせば、ブツンと鈍い音がして土方に絡みついた弦は地に落ちていった。


「なっ!」
「真選組副長土方十四郎、推して参る!」


土方が跳躍して斬りかかろうとした瞬間、天井から瓦礫が落ちて二人の間を割った。


「チッ、建物がやべぇか」


爆発の衝撃にむしろよく耐えた方だろう、土方は万斉が直ぐに動けるようでないのを確認してから大将である近藤の元へと走っていった。


「…フッ、面白い」


弦を三味線へと戻してから、サングラスを押し上げ、去っていく土方の後ろ姿をジッと見つめた。


「本当に晋助といると飽きずに済むでござる」





***


「また子さん!」
「チィッ!」


天井が崩れるなり武市がまた子に声をかけ、煙幕を投げつけて近藤と山崎の目をくらませると、それと同時に土方が入り込んできた。


「ゲホッ、近藤さん。総悟とあの敵が居なくなってやがった」
「こっちも逃げられたところだ」
「高杉のところに集まってるかもしれないですねっ」


近藤は無線で他の隊士たちに連絡を入れてから、土方たちを連れてまた子たちが逃げたであろう道を辿って駆けていった。



***


「ありゃりゃ。…団長こりゃやべぇーぜ、退くぞ」
「モロい建物だなぁ」


パンパンッと軽く手に着いた汚れを払ってから神威は小さく笑って神楽たちを一瞥した。


「まぁまぁ面白い程度には成長したんじゃない?…次は殺すけど」
「クッ…か、むいっ…」
「まだだっ!まだっ…!」
「やめときなせェ…今回は向こうの好意に甘えときなぁ」
「「沖田さん/サド野郎!」」


未だに座り込んだままではあったが、その眼光は真っ直ぐ神威にあてて向けられ、神威もそれに応えるように瞳孔の開いた瞳で彼を見つめ返した。


「…クッ、ははっ!侍ってのは本当に面白いね!」
「団長、笑っててもいいが…っと!こりゃ本気で笑えねー状態になって来やがったっ、行くぞ!」
「はいはい。ぁ、高杉たちも気をつけてねー」



相手に届いているかは確認せずに神威は阿伏兎と一緒に崩れていく天井を傘で防ぎながらゆっくりと、戦場を後にした。



「ちくしょうっ!」
「…神楽ちゃん…」


神威によって与えられたら攻撃を精一杯受け流すしかできなかった自分への腹立たしさと情けなさに表情を歪めたとき、ポン、と二つの手が頭に乗っかった。


「神楽ちゃん、強くなろう?僕ら二人とも…これから」
「ガキのくせに、よくやった方じゃねぇか」


優しい手と素直じゃない手に思わず涙ぐみそうになるが、グッと噛みしめてから神楽は二人の男の背をバシンッと叩いて背筋を伸ばした。


「いっ!!」
「ツゥ!!なにしやがるチャ──」
「今度は負けねぇアル」
「!」


強く誓ったその瞳に新八と沖田は顔を見合わせてから笑って、頷いた。


「うん」
作品名:タイトル(仮) 作家名:遊兎