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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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 ヒナは刀を地面に置き、腕組みをしてイワンに視線を向け、棒立ちになる。
「さあ、発動しなさい!」
「はい、『ブレイン・コネクト!』」
 イワンは指先から、青色の光線を出し、ヒナと自らの脳を繋ぐのだった。
    ※※※
 イワンとヒナの特訓は、一週間にも及んだ。
 ヒナは、イワンのエナジーに改善点を与え、いかにして『ブレイン・コネクト』を完全に有効活用できるようにするか。このような考えのもと、イワンの修行は続いた。
 最初の三日ほどは、津波の如く押し寄せるヒナの思考に、イワンは文字通り頭がおかしくなりそうになった。
 その日の修行が終わった後も、脳に思考が流れてくるような感じが治まらず、不眠に陥ってしまうほどであった。
 体調が万全といかない状態でも、イワンは決して音を上げることはしなかった。浚われた仲間を助けるため、そして何より、故郷と実の姉を奪ったデュラハンへの仇討ちの気持ちが、彼を高めていったのである。
 また、ヒナの特殊能力、力通眼を使用することにより、イワンのエナジーは無駄なく高まっていった。
 力の本質を見抜くヒナの眼を持ってすれば、戦闘能力に関してならば、実際の持ち主よりも深く知る事ができる。だからこそ、実際に力を持たずしても的確な判断を下し、効率よく力を上げる指示を与えることができた。
 そして修行を始めて一週間後、この短い期間でイワンは爆発的に力を上げることができたのだった。
「イワン、どうやら、『ブレイン・コネクト』を極められたみたいね」
 イワンとヒナは、ロビン達が見守る中、対峙していた。これがイワンへの最後の修行であり、その内容は、実戦にて使うことであった。
「おかげさまで、無駄に考えを読む事はなくなりましたよ。それから昨日は久々にゆっくり眠れました。体はばっちりですよ」
 イワンのエナジーは、溢れかえらんばかりのものになり、体中にバチバチと弾ける、電気を放っていた。
「それにしても意外でしたね。ここ一週間ヒナさんの頭の中をさんざん見せつけられましたが、あなたが処女だったとは……。これに一番驚かされましたよ」
 思考を篩いにかける事がまだ、完全でなかった間のイワンは、多岐にわたるヒナの考えがぶつけられた。
 イワンも年頃の少年ということで、ヒナがイワンの心を乱す手段として使用したのが、性に関する思考であった。
 イワンの仕返しともいえる言葉にも、ヒナは冷静で静かに笑っていた。
「うふふ……、成長したのは、エナジーだけじゃないみたいね。あなたのウブな所、かわいかったけど、さすがに慣れちゃったかしら?」
「お互い剣を手にしている以上、そんな感情は捨てなければなりません。それに、性的な思考はとてつもなくぶつけられました。慣れない方がおかしいですよ」
 イワンの口から語られた事実に、かなり驚いていたのはロビン達であった。
 行動や発言、態度を見て、ヒナは男を知っているとばかり思っていた。美しい容姿をしており、物静かながら冗談を好み、その内容は時として淫らなものとなる。
 しかし、そのような卑猥な言動をしながらも、ヒナには一切経験がない処女なのだという。
 ロビン達は驚かずにはいられなかった。
「……あたしも一応巫女だからね、純潔を保ってないと力が使えなくなっちゃうの。まあ、三十を超えたら、意味ないんだけどね」
 ヒナは、古代に一度、オロチがイズモ村を襲った時、命と引き替えに彼の魔龍を封じた戦士、ミコトの姉であるアマテラスの末裔である。
 太陽の巫女と呼ばれた彼女の力は、いつかまた、オロチが復活するような事態に備え、一族に代々伝えられてきた。
 何千年という月日が経とうとも、太陽の巫女の力は絶えることなくヒナまで伝わり、彼女は正当なる継承者なのである。
 しかし、巫女の力を行使するに当たり、不可欠な事が、齢三十を超えるまで一切の性交渉をしてはならないという決まりがあった。破瓜の瞬間、太陽の巫女の力は一切消え去り、二度と使えなくなるばかりか、力そのものが消えて無くなるのである。
「あたしも二十七、後三年でやっと禁欲から解放されて、自由の身よ。けど、性交を楽しむ暇はないわ。すぐに後継ぎを見つけなきゃならないの。オロチは死なない。またいつの日かオロチが復活したときの為に、太陽の巫女の力は絶やしちゃいけないのよ」
 オロチと交戦したことのあるロビン達は、彼の魔龍の恐ろしさをよく知っていた。
 オロチには一切の攻撃が通じず、一見、ダメージを受けて瀕死になったと思われる状態であっても、すぐさま再生を始めてしまうのだ。
 魔龍を封ずるには、ヒナの言うように、ミコトの力と、アマテラスの力を受け継いだ者の力が不可欠であった。
「まあ、こんな力を持って生まれた事を、憎らしく思ったことは数知れないわね。みんなと違って、好きな人ができても結ばれず、十八で結婚するのが当たり前の村では異例の晩婚になっちゃうし。どうしてあたしだけ、なんて何度思ったことか……」
 周りが結婚し、子をもうけ、家庭を築いていく様を見る度、ヒナは自らの出自を呪った。
 歳が五つほど下ならばいざ知らず、十も離れた女達が次々男と結ばれ、幸せを得る。
 そうした女達の幸福に満ちた顔を見る度、ある種の憎しみの感情を抱いてしまう事に、ヒナはいつしか嫌気がさしていた。
 そんな自分を戒めるように、ヒナは自らの感情を偽るようになった。
 常に静かすぎるほど冷静になり、寡黙な女かと思わせながら、実は好んで冗談を言う。歳を重ねるごとに、ヒナはそのような人間になっていった。
「……随分と不憫なお話ですね……」
 自らの気持ちに素直になれず、本当の自分をさらけ出せない。
 ヒナの人となりを聞いて、イワンは哀れんだ。
「いけないわね、いくら考えが筒抜けだからって、余計なことまで喋っちゃったわ……」
 ヒナは静かに笑い、そして構えた。
「イワン、あなた、あたしの術中にはまったわよ。あなたは今、心を乱している!」
 ヒナは得意の縮地法で一気に間合いを詰め、斬りかかろうとした。
 しかし、イワンは微動だにせず、突撃してくるヒナを前に落ち着き払っていた。
 ヒナは刀を抜かず、そのまま側面を通り過ぎ、イワンと背中合わせになった。
「驚いたわ、まさか攻撃するつもりがないのを見切るなんて……」
「……ヒナさん、一つ聞かせて下さい。これまでの話、嘘ではないですよね?」
 二人は背中合わせのまま言葉を交わす。お互い少しでも動けば、相手を斬り刻む事ができる。
「……こんな大層な話が冗談になるわけないでしょ。こんな嘘考えるくらいなら、いかにしてあなたを倒すか考えるわよ」
『ブレイン・コネクト!』
 イワンは振り向きざまにヒナに指を指し、相手の全てを読めるといっても過言ではないエナジーを発動する。
「ふんっ!」
 ヒナは、気配の変化を一瞬にして察知し、イワンから飛び退いた。しかし、光線をかわすには至らなかった。
 イワンはヒナの思考を読んでいるのか、静かに彼女を見つめていた。
 そしてしばらくしてから、イワンはどこか安心したような表情をして、口を開いた。
「……どうやら、これまでの話は全部本当だったみたいですね」