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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~四重奏~

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遼が時折、迦遊羅を切なそうに見ていたのを知っていたからだ。その切なさが何を示しているか当麻はもうすでに知っている。
自分は迦遊羅の気持ちにはこたえられない。だとしたら自分が追うのはきっと迦遊羅にとってつらいことだ。
それなら迦遊羅を思っている遼にまかせたほうがいいと思った。
それから、話しをすべく亜由美の名を呼ぶ。
亜由美がびくっとして当麻の顔を見る。
その表情は怯えてさえいた。
一瞬、当麻が言葉を失う。
その瞬間、逃げるように亜由美は部屋へ駆け上がった。

「あゆ」
ドアの向こうから当麻が声をかけた。ドアの向こうからは押し殺した亜由美の泣き声が聞こえてきた。
一体何が起こったのかわからず、泣いている亜由美の気持ちがおしはかれずいらいらした。
迦遊羅を見送った後、もし、自分の気持ちを言わなかったことがこの事態を招いているとしたら、はっきり告げるべきだろうと当麻は思った。深呼吸して泣き声が聞こえる部屋に語りかける。
「このまま、聞いてほしい。
俺は何か大切なことを忘れたらしい。
そのせいでお前がどんな気持ちにせよ素直になれないのだとしたら悪かったと思っている」
そこで一拍おく。それから大きく息を吸う。
「俺はお前が好きだ。この年で愛してさえいる。
だが、急にこんな事を言っては驚かせると思っていわなかった。
迦遊羅が言った通り、俺はお前を選んだ。ナスティでも迦遊羅でもない。お前を選んだ。
その選択は間違っていないと俺は信じている。
ただ、これは俺の勝手な思いだ。
今、俺を好きなのかとは聞かない。迦遊羅の言葉は迦遊羅の言葉として受け止めておく。
お前は自分の言葉で気持ちを言ってくれたらいい。
ただ、嫌っていないならもうしばらくおまえと共にいることを許してほしい。
姿を消すなど悲しい事いうな。
だが、嫌いならこの際言ってくれ。今すぐ親父達に言って婚約を解消する。
婚約している理由が東京で生活したいだけなら俺がなんとかしてやるから」
嫌ってなんかいない。好き。心の底から当麻を想っている。
愛している。自分も。あの最後の際で自分も悟ったのだ。愛というものを。
でも、どうして言えよう?
いずれ、また私は戦わなくてはならない。
好きだから、大事だからもう巻き込みたくない。
好き、だけど言えない。言ってはいけない想い。
二つの思いの中で亜由美は激しくゆれた。
どれぐらい時間がたっただろう?
当麻はため息をついて言った。
「お前の気持ちはわかった。電話、してくる」
当麻がドアの向こうから立ち去っていく。
このまま、このままにしておけばいい。それが一番いい方法。
だけど!
狂おしい想いが押し寄せる。
当麻が行ってしまう。永遠に。
嫌!
思った瞬間ドアを開け放していた。
当麻の後を追う。
電話の前で当麻はダイヤルを回していた。
「当麻!」
叫ぶようにして名を呼ぶ。涙があふれてろくに声も出ないのに必死で呼んだ。
振りかえった当麻の指が止まった。
「嫌って・・・なんかいないっ。嫌いなわけないっ。だけどっ・・・だけどっ」
どう説明したらいいのか。亜由美は皆目見当がつかなかった。
「私は・・・亜遊羅でもう当麻の好きな亜由美じゃないっ。
亜遊羅は誰も好きになっちゃいけないのっ。亜遊羅は当麻を傷つけることしかできないっ。そんなの嫌! 私は当麻を守りたいっ」
そこにすべてが凝縮されていた。当麻が目を見開く。好きだと言ったも同然だった。
うまく説明できないもどかしさに亜由美の瞳からぽろぽろ涙がこぼれた。悔しかった。説明できない気持ちに悔しかった。このままその腕の中に飛び込んでいきたかった。でもできない。それがどんなにつらくともしてはいけない。そう思っていた。
当麻が受話器を置く。近寄って指先で涙をすくう。
「亜由美も亜遊羅も俺の大事なあゆだ。
明るく皆を励ましてくれた元気な亜由美。傷ついて、それでも運命を受け入れてがんばる亜遊羅。
どちらも俺は大切に思っている。どっちが欠けてももうあゆじゃない」
当麻は両手を亜由美の背中にまわした。とたんに涙があふれる。亜由美は当麻の腕の中で泣きじゃくった。
つらかった。好きだと言えない自分がつらかった。
「ごめんな。つらい思いさせて」
当麻が関西弁で小さくささやく。
お互いがどう想っているかは未来に任せよう。
今はそばにいられることを感謝したい。
当麻は腕の中の亜由美をぎゅっと抱いた。

「迦遊羅」
足早に去りゆく迦遊羅の背中に静かに遼が声をかける。
その妙に落ち着いた声に迦遊羅が止まる。
「迦遊羅が当麻のこと好きなのは知っていた」
その言葉に迦遊羅が振りかえる。
「つらかったな。好きな人は大好きな姉さんが好きで、姉さんもその人が好き。
そのまま二人がくっついたらいいのに、姉さんは自分を思って好きな人を譲ると来た。
それってかなりしんどいよな。
俺もなんとなく、わかる。
俺は迦遊羅のこと、好きだ。だから、当麻の事好きなの見てて結構つらかった。
でも当麻が迦遊羅を好きでそれなのに迦遊羅を譲るとか言われたらやっぱり怒ると思う。馬鹿にするなって思う」
その告白に迦遊羅が目を見張る。
「ひとりでがんばらなくていいよ。こんな俺で良かったら迦遊羅のそばにいさせてくれないか?
つらいとき、悲しいとき、慰めたい。迦遊羅が笑った顔が俺は好きだ。微笑んだときに顔がふわっとするのが好きなんだ」
遼の告白に迦遊羅は驚き、そして急に涙が込み上げてきた。
ぼろぼろ涙をこぼす。嬉しいのか悲しいのかよくわからない涙がこみ上げる。
勝気な迦遊羅が涙をこぼすのを見て、遼は近づくとそっと抱きしめた。
迦遊羅はそのまま泣きじゃくる。
その勝気な瞳の奥でどれほど涙をこらえたのだろう?
遼は泣きじゃくる迦遊羅の長い髪をぎこちなく、だが優しく撫で続けた。

「俺、当麻のかわりにならないかな?」
ようやく、涙が止まった迦遊羅にやや照れながら遼が言う。
いいえ、と迦遊羅は小さく答えた。
好きになってもらうことがこれほどうれしいことだとは思わなかった。
自分の気持ちが報われなかっただけに想ってくれる人は大事にしたい。
それに自分はこの瞬間に遼を好きになった。淡い想い。
でもきっと大きな想いになると迦遊羅は確信した。
「これから私の側にいてください。私も遼のそばにいたい・・・です」
その答えに遼はありがとうとうれしそうに礼を言った。

亜由美は伸が入れてくれたロイヤルミルクティーを飲んでいた。
気持ちが落ち着くようにと当麻が気を使って伸に頼んだのだ。
当麻が静かに隣で見守る。
その時、迦遊羅と遼が部屋に入ってきた。
カップを持つ手が激しく震え、中身が飛び出た。
顔がうつむき、どうしても迦遊羅や遼を見れない。
その時、当麻が二人に頼み込んだ。
「悪い! 俺もちゃんと気持ちを伝えたし、こいつも俺のことを嫌いじゃないと言った。
今はそれで許してくれないか。こいつももう迦遊羅に俺を譲るなど馬鹿なことは言わないだろうから」
その当麻の言葉を聞いても迦遊羅の顔は和らがない。
「かゆ。当麻もこう言っているし、許してあげたらどうかな?」
遼が迦遊羅に言う。それでも迦遊羅は頷かない。
かゆ?、と当麻が聞く。