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EL高校の一年間 新学期・入学式編

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 五人は、懐かしさ満点(といっても、二週間会っていないくらいだが)のメンバーと共に、出席番号順に腰かけた。もちろん前回と同じ順番である。二年も続けて『ジ』という頭文字のおかげで『ス』の前になったジャブラには、カリファもカクも、珍しくルッチも、同情を禁じ得ない。被害者のジャブラは肘付きして口を尖らせ、加害者のスパンダムは楽しそうに机を叩いている。
 久しぶりだからとて、特に話す内容もない。
 やけに静かな教室。スパンダムの指の音以外、何も聞こえない。
 こういう状況には凡人より慣れているメンバーだが、これは少し気まずい気がした。無神経なスパンダムが羨ましい。その無神経男は、突き指して悶絶していた。
 その場の嫌な空気を消し去るように、カリファが口を開いた。
「そういえば、ブルーノとフクロウとクマドリはいないのかしら」
 助かったとばかりに、カリファの前のカクが応対する。
「そうじゃのう、あいつらはまだ来ておらん。まあ、そのうち来るじゃろう」
 ブルーノ、フクロウ、クマドリは、これまでにも彼らの会話に度々登場したメンバーである。彼らも二年三組も一員のはずだが、まだ姿を見ていない。
 考えてみれば、フクロウは『フ』のせいで、『ス』の後ろに舞い戻ってきたということか。ジャブラも被害者仲間として、ここにはいないフクロウに同情する。もっとも、フクロウもスパンダムと同じくらいに無神経といえるから、二人は比較的仲良くしていたが。
 しかし、いくらなんでも遅すぎる。壁のアナログ時計は九時を示している。他のクラスは、もうホームルームを始めている頃だ。なのに三組は、生徒どころか教師さえ顔を見せていない。
 あいつらに限ってありえないだろうが、何かあったかもしれない。超人と野生の勘で判断したルッチたちは、息ぴったりに立ち上がり、窓を突き破って外へ消えていった。二階の窓を、である。
 彼らの姿が見えなくなった途端、ようやく悶絶し終わったスパンダムは、周囲を見回した。自分とファンクフリードとハットリしかいない。聞こえるのは、壊れた窓から入ってくる隙間風と、自分の心臓の音のみである。
 怖くなったスパンダムは、いつも以上に大声を張り上げた。
「お、おい……ルッチー! どこ行っちまったんだよー!」
 彼の叫び声は、裏山まで響いてこだました。「ルッチー」と山が返事をする。
 でも、それはただ、虚しいだけである。捜しに行こうか、と無謀なことを思った、その瞬間。
「チャパパー、遅れてしまったー」
 ルッチが壊した窓から、大柄で丸く、口にチャックのついた男が飛び込んできた。それに続いて、
「よよいっ! も~ォオオしわけありやせん、先生!」
 無駄に語尾を伸ばす、超長髪の巨漢も入ってきた。
「まったく、もう少し静かにできんのか」
 唯一静かで、髪の毛が牛の角のような形をしている大柄な男が、最後に突入してきた。
 彼らは戦隊ヒーローのように優雅に教室の床に着地した。その異様な光景を間近で目撃したスパンダムは、途端に相好を崩した。
「おおッ、ブルーノ、フクロウ、クマドリ! おまえたちか!」
「スパンダムさん、久しぶりなのだー」
 チャックのフクロウは、チャパパと返事をする。クマドリは同級生の笑い声が収まるのを待ち、スパンダムに優しい言葉をかけた。
「よよいっ、スパンダムさん、またご一緒できてェ~、光栄でえェ~!」
「本当にやかましいな」
 牛男のブルーノ以外はいつも何かと騒がしい。スパンダムはルッチたちがいなくなったときの消失感をすっかり忘れ去っていた。
 四人が再会を喜び合っている中、自分が割った窓からルッチが入室してきた。続いて、ジャブラ、カク、カリファも帰ってくる。
 ルッチは、懐かしき悪友たちを横目で見て、挨拶した。
「おまえら、また一緒だな」「よかったわい」「変わりないわね、みんな」「おい、フクロウ! また余計なことしゃべってねえだろうな!」「しゃべってないのだー」
 噂を誰にでも話すクセがあるフクロウにいつも振り回されているジャブラは、フクロウの春休み中の『犯行』を問いただす。チャックをしめられることに抵抗しているフクロウを眺め、他のメンバーも楽しそうに微笑んでいる。いつも冷静沈着なルッチも、このときばかりは饒舌だ。
 それはそうだろう。数週間前に別れた同級生と、こうしてまた同じクラスになれたのだ。教師の策略だろうがなんだろうが、このさいどうでもいい。でも、スパンダムとは離してくれてもよかったのではないだろうか、という疑問は、クマドリとスパンダム以外のメンバー共通の心理である。
 ところで、こうなったら、彼もまたここの担任になるのだろうか。ホームルーム最中なのにまだお目見えしていないとなれば、その可能性もあり得る。全員が楽しみながらも不安を抱えていると、ドアががらりと開いた。入ってきたのは、ブルーノ並みに高身長な男。
「あららら、おまえら、遊んじゃダメでしょ。席について」
 だらけた口調で生徒たちに指示を出す彼。ルッチらは彼の言葉のとおりに、揃って自分の席へ戻った。
「また一年間一緒か。よろしくな~。さあ、ホームルーム始めるぞ」
 彼は、自己紹介も挨拶もせず、いきなり今日の予定に入った。まあ、いまさら紹介することもないだろう。去年の今頃、散々聞かされた。
 だが、彼について知らないであろう読者の皆様に、彼の紹介をさせていただくことにしよう。
 名前はクザンである。青キジという二つ名がついているようだが、校内ではもっぱら本名で通っている。去年一年六組の担任を務めていた男だ。
 彼はかなり変わった教師である。多くの教師は「熱血教師」や「楽しめる授業」などの理想を掲げるものだが、クザン先生のモットーは「だらけきった授業」なのだ。口調とルーズさからそのことは推測できる。
 そのせいで上からは白い目で見られることが多いが、不思議とクビにされてない。異質な集団である二年三組の担任が務まるのは、変わったクザンだけだということだろうか。どちらにしろ、本人がやる気ならばそれでいいのかもしれない。
 クザン先生は、指示棒で教卓を叩いた。
「よぉ~し、まずはお掃除だ」