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さらさらみさ
さらさらみさ
novelistID. 1747
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恋のゼクドナルセン

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パーシヴァルは向かいに座った少年…ヒューゴの履歴書を見る。
「バイトは今回が初めてですか…なるほど…」
裏表がなく、しかも見た目の割には礼儀正しい性格のこの少年を、表には出さなかったがパーシヴァルは少なからず、いや、かなり気に入っていた。ヒューゴとの面識は、実のところビュッデヒュッケ城で暮らすようになるまでほとんどなかったが、2人とも乗馬にかけては一流の腕を自負している間柄から時々一緒に出かけることがあったりしてから、少しずつ距離が近づいていった…と勝手に思い込んでいるのはパーシヴァルだけだろうか。
「…あの、やっぱり無理ですか?俺、小宇宙を感じたことなんてないし…」
おそるおそる尋ねるヒューゴにパーシヴァルは笑って答えた。
「いいえ、あなたの小宇宙はこの私がビンビンに感じ取りましたよ。合格です」
「ほ、本当ですか?」
ヒューゴは嬉しそうに顔を輝かせる。
「ええ。それじゃあ早速、時給の相談をしましょうか。」
パーシヴァルは後ろのロッカーからいくつか制服を取り出した。
「これが通常の制服。これだと時給は650ポッチです。次にこのアン●ミラーズ、こっちは時給850ポッチです。こっちのネコミミつきは私の趣味じゃないので450ポッチです。そして最後にこのエプロンだと3500ポッチです。どうしますか?」
「ど、どうって、最後のエプロンは下に何か着てもいいんですよね?」
「いいえ。身につけるのはこれだけ」
ヒューゴは迷わず普通の制服を選んだ。内心舌打ちをするパーシヴァル。

一通りの説明を終えて、明日から早速働いてもらうことになった。
部屋の外までヒューゴを見送り、パーシヴァルは明日から始まるウキウキバイトライフに胸を弾ませながらパーシヴァルは明日の準備をするため店に戻っていった。

 

翌日。
パーシヴァルが店の戸を開けるとヒューゴが店内の掃除をしていた。
「あ、おはようございます」
予定されている出勤時間より30分も早い。感心な子だな、とパーシヴァルは採用してよかったと思うのだった。

ヒューゴはもともと頭の悪い子ではなかったので、仕事の飲み込みも早かった。
ただし、スマイルに関しては少々問題があった。
ある日、グラスランドを放浪中のもとは身分の高い騎士だったという2人が、ふらりとビュッデヒュッケ城を訪れた。
「おや、あんなところにファーストフードテンガアール」
「お前のダジャレにはいつもヒックス」
寒いダジャレの応酬をしながらその二人の騎士は店に入った。
「おやおや、お嬢さんたちがいっぱいだ。なかなか栄えているんだね」
「ロックアックスほどじゃあないさ。しかしメニューがポテトとオレンジジュースしかないって…なんなんだ…」
「ん?このスマイル¥0というのは?」
レジを担当していたヒューゴが答える。
「それはいつもお世話になっているお客様にサービスの一つです」
それを聞いた騎士はヒューゴに言った。
「じゃあ、そのスマイルをもらおうかな」
「かしこまりました、お客様」
次の瞬間満面の微笑を浮かべたパーシヴァルが2人の間に割って入った。
「なんだね君は。私はこの仔のスマイルを注文したんだが」
「申し訳ありませんが彼のスマイルは100万ポッチですので」
と、このようにパーシヴァルがついついヒューゴスマイルの販売を許さないことがしばしばあったが、店は順調に回転していった。

 

ヒューゴがバイトを始めて1週間経った。パーシヴァルはヒューゴに尋ねてみた。
「それにしても…どうしてまたバイトなんてしようと思ったんですか?」
「え…」
「もしかして、好きな人にプレゼントをあげるため…とかですか?」
それを聞いたヒューゴの頬が一瞬で赤く染まった。パーシヴァルは冗談のつもりで聞いたのだがどうやら図星だったようだ。
「もしかして…図星?」
うつむいて視線を外したままヒューゴは小さく頷いた。
頭皮が外れてアンドロメダまで飛んでいきそうなほど驚いているパーシヴァルに気付かずヒューゴは言った。
「そりゃ、モンスターを倒せばお金は手に入るけど…でもそれじゃなんか違う気がして。自分で働いて手に入れたお金で、その人にプレゼントがしたいんです」
パーシヴァルは平常心を保つのに必死だった。まさかあいつやあいつやあいつじゃないだろうな、いや、アイツは人じゃないから違うなと内心気が気でなかったがパーシヴァルは話の分かる年上のお兄さん風にヒューゴにそれとなく尋ねてみた。

「そ、それで、あなたの好きな人というのは…」
「え?そ、それは…パーシヴァルさんには言えません」

 

そして仕事後。
「酒を下さい!強いやつを…」
酒場でパーシヴァルは荒れていた。

ああ、パーシヴァルのバカ!大バカ!小鳥!
なんでヒューゴを採用しちゃったの?何でヒューゴにバイトの理由なんて訊いちゃったの?これじゃヒューゴと誰だか知らないが他の奴との恋を応援する形になってしまうじゃないの!
だからって今更バイト採用取消なんていえないし、せっかく一緒に店にいたって、いつかはあの笑顔は他の人のものになってしまうなんて考えたらもう笑えない。
ううん、ちょっと待って。好きな人が実はパーシヴァルさんでした★なんて可能性もなくはないよね。ううん、ありえない。だって好きならその場で言うはずだもの。
ヒューゴ…一体誰が好きなの…?その笑顔は誰の為なの…?
明日から、一緒に笑って仕事なんてできないよぉ…


現在のパーシヴァルの心中を少女漫画風に表現するならこんなところだ。
そこへクリスがやってきた。
「なかなか頑張ってるそうだな、パーシヴァル」
「ええ…でも、もう私はやっていく自信を失くしそうですよぉ…」
つい少女漫画心理の延長線でウッカリ弱音を吐いてしまうパーシヴァルにクリスは言った。
「そうか。だが安心しろ、あの店は本日で終了だ。」
「え?」

クリスが今日ダックの村へ行ったところ、偶然料理人の娘に出会った。彼女の名はメイミといい、父のように立派な料理人になる為修行中だそうだ。本来なら半人前の料理人などクリスは嫌うのだが父ネタが入るともう駄目だった。一も二もなくスカウトしたのだという。
「メイミの店は明日からオープン可能だそうだ。今までご苦労だったな。ルイスたちには私から言っておこう」
そう言ってクリスは酒場を出て行った。

残されたパーシヴァルは複雑な気持ちだった。
ヒューゴと顔を合わせる事もこれで少なくなる。だが同時に彼に今までのお給料を渡すということは彼の思い人も判明してしまうことになり、そんな現場を見てしまったら自分はとても立ち直れない…

ーいいじゃないか、ヒューゴが幸せになるのなら。もし彼の恋が上手くいかなかったとしたらその時は慰めてやることぐらい俺にもできるだろう…ー

そう無理矢理結論をつけてみても、やはりパーシヴァルの心は晴れなかった。

 

翌朝はパーシヴァルの心中を現すかのような大雨だった。
パーシヴァルは店の前に「突然ですが閉店しました」という事務的なお知らせを貼り付けると、最後の片づけを始めた。
ヒューゴにはルイスが閉店のことを知らせ、給料も渡したそうだ。

「これでいい、これでいいのさ…」