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さらさらみさ
さらさらみさ
novelistID. 1747
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ビューティーオブファシナトゥール

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その時、不思議な事が起こった。世界が一瞬だけ止まったのである。そして、サイレンスの前に紙切れと花が落ちてきた。
花は、トケイソウだった。
拾い上げると、何かの歌詞が書かれている。歌詞の通りに口パクで歌えと書いてあった。
次の瞬間、世界が元に戻った。伴奏が流れる。

「♪ここで〜いっしょに〜死ねたら〜いいと〜」
深いテノールがしぶい歌謡曲を歌い上げている。一体、誰が歌っているのだろうか。
歌詞の意味は半分以上理解できなかったが、とにかくサイレンスは適当に歌っているふりをした。 壮大な伴奏が流れて歌が終わる。
「なーんだあ、君いい声してるじゃん!!」

テレビの前でヒューズ達は開いた口がふさがらない。
「みちのく一人旅って!!!」
「サイレンス、渋い趣味だなあ」
「見かけより随分低い声なのね…」
「さっきの花魁のコスプレといい、ますますあいつがわかんねえぜ…」
しかし、とりあえず歌審査は通過した。あとは最終審査を残すのみとなった。

時の君も、安堵のため息をついた。舞台に上がったサイレンスは、明らかに困惑していた。おそらく、歌の審査があることを知らず、勝負歌を用意していなかったに違いない。
時の君はタイムリープで会場の時間を止め、その一瞬で紙切れを落とし、ご丁寧に審査員席にセットされている5カメにタイムリープをかけ、サイレンスのかわりに十八番の「みちのく一人旅」を熱唱したのであった。
たかが一人の妖魔のために、ここまでできる自分が信じられなかった。
あとは、最終審査を残すのみだという。
(頑張るのだぞ、サイレンス)
努力や頑張る事を常としない上級妖魔には言っても無駄な応援だとわかってはいたが、時の君はそう思わずにはいられなかったのだった。

サイレンスは、2輪のトケイソウを握り締め、城内をうろうろしていた。 2度も自分を助けてくれた、紫のトケイソウの人を探しているのだ。
きっと、この城内に必ずいるはずだ。しかし、すれ違う妖魔は皆、サイレンスの探し人とは違うようだった。
ふと、彼であったらいいのにとサイレンスは思った。
審査員席の端にいた、しんとしたたたずまいの風変わりな妖魔の君。今まで自分が出会ったどの妖魔とも、彼は違っていた。自己紹介を聞いていなかったので名前はわからないが、サイレンスは何故かしら彼が気になった。
しかし、彼は妖魔の君、自分はただの上級妖魔だ。格が違いすぎる。こんな時でなければ、きっとあんなに近くで見ることもできなかったに違いない。
広大な城内を行けども行けども、それらしき人物は見当たらなかった。
サイレンスはあきらめて、控え室に戻った。

最終審査は、自己表現審査というものだった。30秒という限られた時間の中で、自分の美しさをアピールするという難しいものである。
このときになって、出場者の半分以上は辞退した。
「まあ白薔薇みたいに、そこにいるだけでキレイっていう妖魔はなかなかいないよ。」というのが審査員長の見解だった。
結局、ラスタバン、ヌサカーン、金獅子、セアト、イルドゥン、サイレンスの6名が審査に残った。エントリーナンバーはランダムで選ばれるという。いつ自分に順番が廻ってくるのかわからないのである。
「次は、エントリーナンバー11番、セアトさん〜はもう終わったんだっけ?ま、どっちでもいいや。次いってみよう!」
「待て!まだ俺は終わってな…」
かなり適当に流され、次にスポットが当てられたのはサイレンスだった。

IRPO隊員たちも、じっと審査の様子を見守る。
「だ、大丈夫かなあ、サイレンス」
「これで受かれば100万クレジットだぜ〜!」
「アノ人数ナラ、優勝スル確率ハ約2割デス」
セアトはラビットの中でもカウントされていなかった。

サイレンスはステージに出た。とはいえ、とくに何をしようと考えているわけではない。宴会芸で覚えた消えるコインマジックでもやろうかと考えていると、ふと足元に何かが落ちていた。
トケイソウの花だった。
それを目にした瞬間、サイレンスの背に、巨大な蝶の羽が現れる。スポットライトの光を受け、それは美しく幻想的な輝きで、周囲の目を魅了した。
あの花は、さっきまでなかったはずだ。きっと、どこかに紫のトケイソウの人がいるはずだ。
サイレンスは花を拾い上げ、会場を見渡してみたが、一体どこから、どうやって花が現れたのか、全くわからなかった。
そうこうしているうちに、30秒はあっという間に過ぎ、次の参加者の出番になった。

ステージから去る前に、サイレンスは審査員席にいる妖魔の君をちらりと見た。
「……!」
目が合った。
驚いた事に、彼も現在ベリーダンスを披露中のセアトには目もくれず、こちらを見ているではないか。
サイレンスは途端に気恥ずかしい気持ちになり、素早く身を翻してステージを下りた。

 


最終審査が終了し、審査員たちはそれぞれ配られた用紙に点数を記入するよう言われた。
ふと疑問が浮かんだので、時の君はアセルスに聞いてみた。
「ところで、優勝者にはどのような特典があるのだ?」
「ああ、100万クレジットの賞金と、あとはリージョンお披露目巡りだね。雑誌のオファーもたくさん来るだろうし…まあ、向こう3年はろくに眠れない生活になると思うよ」
「確か零姫はそれが嫌で優勝したその日にここを脱出したんだったね」と、ヴァジュイール。
それを聞いて時の君は慌ててサイレンスの評価を書きなおした。
あの美貌が全リージョンに切り売りされるなど言語道断、酔狂の極みである。審査は、100点の持ち点を、それぞれ出場者に割り振るかたちとなっている。時の君は、適当に目についたヌサカーンの項目に「100」と書き入れた。
よく見ると、審査員特別賞認定項目がある。
ー審査員特別賞に選ばれた対象への褒賞は、審査員が用意する事ーと書いてある。
時の君は、その項目にサイレンスの名前を書き込んだ。

先ほど、一瞬だけ目が合った。その直後に、彼は身を翻してまるで蝶のようにひらりと去って行ってしまった。
その時、彼は確信したのだ。最早、眺めているだけでは足りぬと。




さて、一方こちらはヨークランドである。すっかり「ルージュ」だと思い込まれているブルーは、皆の誤解を解くために一生懸命だった。ついにブルーは、双子の弟の話もぶっちゃけざるを得なくなってしまった。
「本当だ、あれは俺の双子の弟なんだ!俺がブルーだ、信じてくれ!」
「ちょっと、皆いる?」
その時、扉が開いてエミリアたちが乱入してきた。ますます事態がややこしくなりそうだ。
「あんた、そんな格好してるけどルージュなんでしょ!?そうじゃなかったら、こんないかにも温厚そうな人たちと、暮らせるわけないじゃない!」
エミリアたちにも、ルージュの表面上の人柄は知れ渡っているようだ。
「あんなきんもーっ☆い兄貴なんかとは、とっとと役所行って縁切ったほうがいいわよ」と、アニー。ライザも頷いている。
「だから、何度言ったらわかるんだ!あっちがルージュだ、そして俺がブルーだ!」
「じゃあなんで、双子の弟が愛のメッセージなんか送るんだよ?」リュートが問い詰める。
「そ、それは…」
ブルーは言いよどんだ。弟は変態です、そう言ってしまえば楽なのだが、しかしー…