流れ星 4
「ユキさんは何着ても似合いますね。」
いくつお店を回ったか、ユキは覚えていない。南部は片っ端からお店に入りユキに試着を進める。いつもユキが着ているようなフレアーワンピースには目もくれず普段ユキが選ばないような服ばかりをチョイスする。
「…そう?かなぁ…」
「ユキさん、来年いくつになりますか?」(南部)
「ハタチ…。」(ユキ)
同い年なのになんで聞くかなぁと不思議がるユキ。
「大人の仲間入りですよ?だからイメチェンしましょう!じゃ、ユキさん次の
お店、行きますよ!」
南部は試着を終えたユキの服をスタッフに渡し、ちょっと他を見てまた戻って来る、と言って隣の店に向かった。
「疲れたでしょう?」
火星の基地に近い居酒屋に二人はいた。
「疲れたわ。一日中買い物なんてした事ないから本当に疲れちゃった。」
居酒屋は平日のせいか空いていて4人掛けのボックス席を案内された。
「明日、お花を買いに行きましょう。」
南部が乾杯のビールを飲んだ後ユキに提案した。
「覚えててくれたの?」(ユキ)
「恩人にお供えするお花を買う事忘れるわけないじゃないですか。今日買ったら
しおれちゃいそうで…明日の方がいいかな、と思いまして。」
南部がにっこり笑って言う。
「ありがとう、明日行こうかな、って思ってたの。でもよく考えたら火星って
ヤマトで寄ったっきりだからまったくわからなくて…でも今日モールのなか
歩いたからお花屋さんもいくつか見かけたし…。だから大丈夫かも、って
思ってたんだ。」(ユキ)
「ユキさんを基地に一人になんてさせませんよ。ご安心ください、明日もヤマトの
砲手がガードマンとしてお供いたします。」
南部は今日、一日ユキと一緒に歩いていて何人男性が振り返った数えておけばよかったと後悔した。その数を進に報告したらどんな顔をするだろう、と想像したのだ。
「やだ、ガードマンだなんて!南部くんのファンに殺されちゃうわ!」
ユキがおどける。
「南部くん背が高いじゃない?やっぱりメガネ外すとイケメンぶりが全面に
出ちゃうから…今日、結構な数の女性が振り返ってたわよ?」
南部は自分が言おうとしてたことを言われてビールを吹き出しそうになってしまった。
「ヤマト関係、ってばれてないみたいだけど。やっぱりオーラがあるのかなぁ?」
南部は“ユキさんだってオーラ出しまくりですよ”と言いそうになったがやめた。
「でもトウキョウシティにいるより自由でいいかな。」
ユキもビールをぐぐっと飲む。
「お、ユキさん、行きますねぇ~。」(南部)
「平和で自由で…火星バンザイ!って感じ。地球だと誰かしら見てるかも、って
思っちゃって寮の部屋に入るまで顔がよそ行きになってる感じだもん。」
南部も今日はヤマトに乗っている時の様ないろんな表情のユキに会えたような気がした。
「やっぱり気を使うもんですか?」(南部)
「そうね、ナース時代と随分違うかな。具合の悪い患者さんの方が接しやすい
かもしれないわね。」
ユキの言葉の意味が南部にはよくわかる。上層部ともなれば会話の中に駆け引きがあったりするわけで…
「ま、タヌキはどこにでもいますからね。」(南部)
「あら、タヌキだなんて!」
ユキはそう言いながらも余りにも的確すぎる南部の言葉に笑ってしまった。
<今日は南部くんと火星で買い物に付き合ってもらっちゃいました。火星に
行ったの初めてだったけどモールの中は地球と余り変わらなくて。買った
ものは同じものを地球の店舗から送ってもらう事にしました。南部くんと
行ったおかげで全部安く買えちゃった。モール、南部グループが関わってる
んですって。よく考えたらゆっくり買い物なんてした事なかったからドキドキ
しちゃった。今度、デートする時、ちょっとおしゃれできるかも!楽しみに
しててね!
で、明日はサーシァさんにお供えするお花を買いに行ってくる。お花はもう
決めてるんだ。スイトピーにしようと思って。スターシァさんからみせて
もらったフォログラムを見た時なんとなくイメージがピンクのスイトピーだった
の。古代くんはどんなお花がサーシァさんに合うと思う?実際お顔を
見た事がある古代くんの方がイメージに合ったお花を選べそうなきがするわ。>
ユキが進にメールを送る。どんな返事が返って来るのかちょっとドキドキした。バラのような高価な花をイメージして来たら、とか私のイメージはどうなんだろう、とか…。
ユキは送信しました、のメッセージをしばらく見つめていたが深いため息をつくとシャワーの用意をしてシャワールームへ向かった。