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氷花の指輪

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「楽しそうだね?アリス?」

突然のその声に、全身が粟立った。

「な……なんで……?」

いつの間にか、部屋の中に何かがいた……。
白くて長い髪、黒い肌、黒の帝国ファッション。それはまるで……。

「待ちくたびれてしまって、遊びに来てしまったよ。
 よくできているだろう?この身体。
 私は錬金術師としてだけでなく、人形師としても才能があるようだ。
 どうだい?自分そっくりの人形を見る気分は?」

声も自分と同じ、だと思う。
だけど、しゃべっているのは……。

「久しぶりのご対面なのに、挨拶もないのかね。アリス。
 外の空気を吸ったら悪い子になってしまったのかな。」

「……先生。」

先生のオーラが、先生の気配が、先生の匂いが、私を拘束した。
さっきまでベッドに腰掛け、パタパタと動かしていた足も、
一ミリたりとも動かせない。
スリッパが軽い音を立てて床に落ちる。
先生が少しずつ、近づいてくる。私の髪に触れる。

「白い肌にブロンドの君も素敵だね。
 人形もそっちのデザインの方がいいかい?」

「人形……?」

「そうだよ。
 君の身体は傷だらけだし、壊れかけているから、
 君の霊魂が私のところに戻ってきたら
 この身体をプレゼントしようと思っているんだ。傷ひとつないよ。」

そうか、目の前の人形の身体から感じた違和感は
髪と肌の色、そして肌の傷。
本来なら、黒い方の肌の上には無数の傷跡が残っているはずだから。
 
「ふふん。
 『先生に、身体をいじられるのには慣れてしまったけれど、
 ニコラスがいない状態だと、きっと私はすぐ壊れてしまう。
 それが悔しいから、戻るなら霊魂だけで戻るって決めてるの。』だっけ?
 残念だったね。
 霊魂だけで戻っても、君は私の召喚霊としてではなく、
 私の人形として生きることになるんだよ。
 これなら、君が壊れるところを何度でも何度でも見せてくれるのかな?
 ふふふ。」

それは、私がバラクルに言ったセリフだ。

「バラクルはっ!?バラクルは無事ですか!?」

「む。自分の心配より、死霊の心配かね。
 無事、の定義があいまいだが、まあ無事だ。
 ちょっと命令違反があったから、お仕置きはしたけどね。」

「……。」

「そういえば、バラクルの最後の役目だったあの薬、
 まだ、飲んでくれていないんだね?飲んだら楽になれるのに。」

人形の手がトン、と軽く私の肩を押す。簡単にベッドに倒れる。
金色の髪が広がる。

「アリス。今日は可愛い服を着ているんだね。
 とっても似合ってるよ。」

ニコラスと同じセリフを言う……。

「……でも、邪魔だ。」

枕元にあった、青い短剣を手に取り、
パジャマのボタンをひとつずつ切り、はずしていく。

「や、やめてください……!」

ボタンを切り取られて、肌が露わになることより、
ニコラスとの絆であるその短剣を使われることの方が嫌だった。

「診察だ。それと人形の完成度を高めるためにね。
 暴れるとまた傷が増えるぞ。」

ボタンを全て外し終わると、短剣を私の首筋に当てたまま、
片手で私の身体を撫でまわす。
私の同じ顔の人形の手が這い回るのに合わせて漂ってくる先生の匂いが、
私の意識をもうろうとさせる。
目の前で私を襲っているのは私にそっくりな人形のはずなのに……。

「ん…。んんっ!」

「……ふむ。
 意地を張っていないで早く薬を飲むことをお勧めするよ。
 それにしても、面白い反応をするようになったな。
 たった半年だが、やはり、愛する男と過ごす日々は、
 君の壊れかけた身体にも影響を与えたのかね。
 人形の方ももう少し感度を上げておく必要があるかな?」

人形が口角を上げてニヤリと笑う。
私はこんな風に笑わない……。

「そういえば、その愛する男。
 今頃、面白いことになっているかもしれないぞ。
 まさか君も、この状況で自分だけが襲われているとは思っていないだろう?」

ニコラスが!
意識が一瞬で覚醒し、
首の短剣も気にせず、目の前の人形を突き飛ばす。

「おやおや、大事にしたまえよ。
 これは君の身体になるんだ。まあ、スペアは山ほどあるけどね。」

先生の言葉も聞かず、
人形の手から落ちた青い短剣を拾い、蹴破るように部屋を出た。
ニコラスは、下の階だ!

「……バラクルの報告通りだ。
 これは少しシナリオの修正が必要だな。」

そういって、部屋に残された人形は音もなく消えた。


作品名:氷花の指輪 作家名:sarasa