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氷花の指輪

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死霊術師は死者の霊魂をその身に取り込み、
その苦しみや嘆きの力を術者の力として扱う。
自分の身体と魂を、死者の霊魂のエネルギーの暴走に委ねつつ、
その霊魂に癒しを与えコントロールするという術を遣う者たちだ。

それゆえ、常時、死者の負の感情に己の精神を侵食され、
とてつもない苦痛を伴いながら生きているそうだ。

死者の霊魂をとても丁重に扱ってきた黒妖精という種族にのみ
この術が伝承されているのは頷ける。
軽々しく死霊術に手を出した自分を、今更恥じる。

そして、現代の死霊術を体系的にまとめ上げているのが
黒妖精の元老院と呼ばれる組織のようだ。

死霊術師の主な戦闘方法は、不特定多数の霊魂を力に変えた
霊力による打撃、斬撃、波動、拘束。
これらの一般的な攻撃方法や自衛方法を会得した者たちが
元老院に所属し、死霊術のさらなる発展のための研究や国防、
主に人間の帝国との戦争に備えているという。

---

金髪と白い肌も含め、
彼女のファッションは、黒妖精ということを隠すものらしい。
黒をベースとした帝国ファッションだという。

「黒妖精は、帝国と仲が悪いからね。
 帝国ファッションの黒妖精なんているはずないって思うでしょう?」

「ですが、さすがに逆に目立ちすぎるのではないでしょうか?」

パリッとした白いシャツに、赤いラインの入った半袖の黒いジャケット、
黒のショートパンツに白い二―ハイソックス。
黒光りするレッグホルスターのバンドと黒いロングブーツが
彼女の細い足を強調している。
ショートパンツから覗く白い太腿は、見る者が見たら目の毒だろう。

シルバーのチェーンの飾りをしゃらんと鳴らし、
短めの黒いマントを翻し、彼女はいたずらっぽく笑う。

「それにこれは、私の戦闘服としてちょうどいいの。
 帝国への恨みを忘れないための…。
 こんな偽物の衣装を着て、あいつらを煽っているのよ。」

どんな恨みがあるか知らないが、ずいぶんと可愛い反抗だ。
紫紺のスーツに黒のリボンタイといった、
よく時代の分からないファッションの自分が
衣装についてどうにか言えるものでもないので、
せいぜい、怪しまれないように行動しようと思う。

…とはいえ、この時代の人たちはみんな、個性的なファッションをしていて、
心配のし過ぎのような気がしてきたが。

---

二人が交わした雪を見に行くという約束。
その約束をかなえるため、早速、雪山に向かった私たちだったが、
危険なエリアに指定されているらしく、
低レベル、つまり戦闘力の低い冒険者の侵入を妨げる結界が張られていた。
まずは、彼女のレベルを上げなければならない。

戦闘経験と戦闘能力を数値化し、ランク付けしたものがレベルで、
1から上がっていく。
いろいろなジョブにつき、特殊な戦闘スキルを覚え始めるのが大体レベル15、
その上の、かなり高度なスキルを編み出せるようになるのがレベル50。
ベテランや熟練者と呼ばれるのはレベル70以上だろうか。
そして、例の雪山のエリアに侵入するには、レベル46が必要最低限だ。

驚いたのは彼女のレベルが20だと聞いた時だ。
そのレベルだと、レベル15で死霊術師になっていたとしても、
まだ活動を始めたばかりのレベルということになる。
初めて出会った5年ほど前、すでに死霊術師だったのではないかと
疑問を投げかけてみると、あいまいにはぐらかされてしまった。

ただレベル20あれば、私のような自我のある死霊、
高位霊を降霊召喚し、共に戦えるようになるレベルではある。
ほとんどの死霊術師は、高位霊とのよいめぐり合いがなく
降霊召喚を主戦力にしない場合が多い中、
彼女は大分有利な状況であるといえる。
つまり私が、彼女を守り、勝利に導いていかなければならないのだが…。

雪山に入れないと聞いて最初のうちは残念そうに肩を落としていた彼女も
一緒にレベル上げて強くなろうと励ますと、
目的地に向かううちに、大分元気を取り戻していた。

目的地は、適正レベルのエリア、下水道・ルインドタウン。
下水道とは、なんとも微妙なネーミングだが、
そこはもともと大変賑わっていたヘンドンマイアという街が
地殻変動によって地下に沈んでできた街だという。
そこに集まった人々が崩れた街と荒んだ自分たちを見て
自虐的にそう呼び始めたのだろう。

作品名:氷花の指輪 作家名:sarasa