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Last/prologue

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だってその問題が原因でシゲはどこかへ消えてしまったのだから。

あの日、サッカーを通して出会った自分たち。
東京に帰る前々日、最後にもう一度勝負をしようと言ったのは確か自分だ。

けれど翌日シゲは公園に現われなかった。
シゲは、どこかへ消えてしまった。

けれど……


水野は、怖くて口に出すことが出来ずに居た。
藤村がシゲだったら、自分はどうすればいいのか分からなくなってしまう。
泥沼にはまるまえに離れようともう別離を告げられたのだ。
シゲだったら、それを撤回して欲しいと願うのだろうか。
そんなの…出来ない。


「水野?」

真っ青になっている水野に藤村が声を掛ける。
水野はビクリとしたが、すぐに笑った。
今は隠すんだ。確証がつかめるまで、今はまだ、知らなかったことにしなければいけない。

「どうかしたか?」

「いや………」

藤村が何かを言いたそうな顔で言いよどむ。

「変な奴だな。それでな、椎名、外部コーチの話と…あと二人、可能性のある奴を見つけたんだ。」

「とりあえず何か頼んできなよ。待ってるからさ。」

「そうだな。小島、行こう。」

努めて平静に、けれどそれが無理をして作っているものだということは、
藤村にも椎名にも小島にもわかってしまったことだった。

ついこの間まで自分は、推研に所属するただの大学生だったはずだ。
それが藤村と出会いSEXをして別れを告げられ、何もかもがぐちゃぐちゃになってしまった。
平穏な日々が遠くなってしまった。
こんな毎日は予想なんてしてなかった。

きっと、シゲとはずっと会うことなく、自分の中で永遠の人となるはずだったのに。


「なぁ小島」

「何?」

「恋に気づいた時にはもう相手に別れを告げられていた場合ってどうすればいいんだ?」

自嘲気味に問いかける。

「…………よくわかんないけど…その人を、信じればいいんじゃないの?」

信じる…それで、自分は救われるのだろうか。
涙も枯れたみたいで嗚咽さえでない。
きっと俺は、飛べない鳥と同じなんだ。




作品名:Last/prologue 作家名:神颯@1110