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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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 ガルシアとピカードは、見ているだけで体が震えた。ロビンのやっていることは、虫の幼虫を生きたまま食しているのを見ることと、何ら変わらないのだ。
「……いくつ欲しいの? 後五個あるけど……」
 ロビンは何の迷いなく言った。
「じゃあ、全部ください!」
 ヒナは残った超兵糧丸を、全て渡した。
「やった、いただきます!」
 受け取った超兵糧丸を口に放り、舌の上で転がし、よく噛んで味わう。
「信じらんねぇ……、あの激マズ玉を……」
「……ヒナさん、まさかボク達に食べさせたのは、失敗作、なんて事はありませんよね?」
 あまりに美味しそうに食べるロビンを見て、イワンは思わず訊ねる。
「失敗作だったら、あなた達に力は湧き上がらないわ。最初に言ったでしょ? 不味いって」
 ヒナには、さすがにこれは皆に伝えられぬ、と黙っていたことがある。それは超兵糧丸の材料である。
 超兵糧丸の調合に使用しているのは、特別なカエルにトカゲの干物を粉にした上で、こね回して生地にし、甲虫型の魔物の幼虫を擂り身にしたもの、そして干物にしたカエルの卵を餡にした、材料がおぞましい代物である。
 そもそも味が良くなるはずがなかった。
「いやー、美味しかった。ごちそうさま!」
 そんなおぞましいものを、ロビンは都合七つ食べ、実に満足げである。
「……ロビン、お前大丈夫か?」
 味覚が狂っているのではないか、そう思い、ジェラルドは恐る恐る訊ねた。
「ん? 何がだ? オレは別に……。あれ、そういえば、体は確かに元気になったけど、エナジーはみんなみたいに溢れないな……」
 皆より多く食したせいか、ロビンの体力はかなり増強されており、一週間どころか軽く二週間は動き続けられそうだった。
 また、表皮にも効果ははっきり現れており、これまでの修行で負った傷は痕にも残らず消えていた。
 超兵糧丸の、身体への効果ははっきり出ていた。
 しかしどういうわけか、精神への作用が今一つで、爆発するほどのエナジーの上昇は感じられなかった。
「うーん、超兵糧丸をもってしても、ロビンに宿る力は解放されないようね……」
 ヒナは翡翠色に光る目、力通眼を通してロビンの力を読んでいた。
 ヒナにはもしやと思っていたことがある。超兵糧丸にて得られる身体的、そして精神的に作用する増強効果を利用すれば、身体が適応し、ロビンに宿る力が暴走することなく現れるのではないか。こうした仮説である。
 しかし実際には、超兵糧丸を七つも食べていながら、現れることはなかった。
「オレの力……? うっ!?」
 突如ロビンは顔を抑え、よろけ始めた。
「大丈夫か、ロビン? 気分が悪いのか!?」
「お前、あんな激マズ玉をあんなに食べるから……」
「いや、違うわ!」
 仲間達が騒ぐ中、ヒナだけはその瞳にしっかり映し出していた。
 ロビンに、とてつもない力が溢れ出ようとしている。それは、彼が命の危機に瀕した時に現れるものではない。禍々しい感じが一切しないのだ。
「ロビンの力が解放されるわ、暴走せずにね!」
 ヒナはどんどん強まっていくロビンの力に、一人胸躍らせていた。
「うぐぐぐ……、だあっ!」
 ロビンのエナジーが黄金に輝くオーラとなり、その瞳は紅蓮の光を持った。
「うっ、くく……」
 しかし、姿の変化はその一瞬に止まり、ロビンは反動でよろけた。
「ああ! 惜しい!」
 ロビンが身に宿る力を、自らのものとし、覚醒すると確信していたヒナは、当の本人であるロビンよりも悔しさを見せる。
 そしてロビン本人は、立ち直りながら自身の手を見ながら、驚いていた。
「なんだこの力は……、本当にオレの……?」
 超兵糧丸を飲んだ者全てが、自ら驚くほどの力を得ていたが、ロビンはまるで次元が違った。
 それ故に、仲間達は騒ぎ立てた。
「すごい、いや、すごいなんてものじゃありませんよ! ロビン、どうやってそこまで力を高めたのですか!?」
「いや、イワン。オレは別に……」
「あの激マズ玉を七つ食べれば、オレもああなれるのか? いやでも、あんなものを七つも……」
 それ以前に、超兵糧丸は全てなくなった事を、ジェラルドは忘れている。
「すごいわ、ロビン。その力さえあれば、デュラハンとも渡り合えるわ」
「ハモ様、でもあの力、出し続けるのが難しくて……」
「だったら、超兵糧丸をさらに食べてみてはどうだ? ヒナ殿ならまたすぐに作れよう」
 ガルシアはヒナを見る。
「あたしも、超兵糧丸をもう少し食べたらロビンは、力をものにできるかも知れないと思うわ。抵抗無く食べられるみたいだしね。でも……」
 ヒナは視線を落とした。その表情にはどこか、罪悪感が窺える。
「どうしたんですか、ヒナさん? あ、もしかして材料がないんですか? 言っていただければ、僕が取りに行きますよ」
 ピカードが言うが、ヒナは首を横に振るだけである。
 ロビンの可能性に、うっかりヒナも興奮してしまっていた為、ヒナには忘れていた事があったのだ。
「ロビンの将来を考えると、もう超兵糧丸は……」
「オレの、将来?」
 突然自らの将来を心配され、ロビンは首を傾げる。
 皆も一様に、ヒナから出た将来、などという言葉に、疑問を覚えていた。
「そういえば」
 ハモはふと思い出した。ハモの言葉にヒナは、肩をびくっとさせて、あからさまな驚きを見せてしまう。
「最初に、私にあの丸薬を飲ませようとした時、ヒナさん言ってましたね。私が子供を授かる予定はあるか、と」
 ハモは完全に覚えていた。これでは、どのような言い訳も通用しないであろう。そう思い、ヒナはため息をつく。
「……やっぱり、黙ってても無駄ね。仕方ないわ、教えて上げる。超兵糧丸は、実は妊婦を流産させるための薬だったのよ……」
 正確にはヒナが、超兵糧丸として調合する前のものが、妊婦を流産に追い込むための効果を持つ薬であった。
「流産させる、というよりも、飲んだ人を不妊症にする、って言った方が正しいかしら。女なら、排卵しなくなって、男なら無精子状態にする。そんな風にして子供ができないようにするのよ」
「ちょっと待てよ! 子供が出来ないようにするって、それじゃあオレ達一生子供を作れないのか!?」
 ジェラルドの言葉に対しては、ヒナは首を横に振った。
「一生ではないから安心して、ジェラルド。超兵糧丸のもとは、一時的に人を不妊状態にするだけだから」
 しかし、人を不妊症に陥らせる効果のある丸薬のもとを強化した超兵糧丸は、不妊状態にする効果も強まっていた。
「向こう二年、って所かしら。どんなに性交渉しようとも、卵もなければ、種もないんじゃ、出来っこないわ……」
「流産させる上、不妊症にするなんて……。一体どうしてそんな悲しい薬が作られたというのですか?」
 ハモが訊ねる。
「ハモ、今更だけど、あたしは太陽の巫女と呼ばれる者なのよ。太陽の巫女は、あたしの故郷、イズモ村のすぐそばにあるフジ山に封じられている、オロチっていう化け物の封印を守る存在なの。あたしはその封印に携わる力を得て生まれてしまってね、齢三十を超えるまで子をなすことができないのよ……」