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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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 シバを助けたいのは、確かな気持ちである。しかし、それならば気持ちは一つのはずだった。なのに、心に満ちる感情は、それだけに止まらない。シバを助け、それで終わるはずの気持ちが、何故か何かを望んでしまっている。
「ガルシアって、年下好きだったのねぇ。なんだか意外。いや、妹がいるからそうでもないのかしら? でも、ガルシアとシバっていくつ離れてたっけ?」
 ただ仲間を救い出したい一心である、と心の中で再認識しようとしていたガルシアに、ヒナは追い打ちをかけた。
 少しばかり、朧気になりつつあったシバへの想いが、再びガルシアの中で燃焼する。
「だから違う!」
「ムキになっちゃってぇ、ますます怪しいわねぇ……、うふふ……」
「あの……」
 ふと、ピカードが軽く手を挙げた。これが図らずもガルシアへの助け舟になる。
「うん、どうしたの、ピカード?」
「ガルシアがリーダーをやるのなら、僕はガルシアについて行きたいのですが」
「あらそう、それがいいかも知れないわね。敵は大柄な獣だし、戦力にもなる回復役は必要になりそうね……」
 ヒナは本題に戻り、じっくりと考え始めた。
 他方、ガルシアの方は、ヒナからようやく余計な追及から逃れられ、ほっとしていた。
 しかし、シバへの想いは、はっきりしたものになっていなかった。まだ胸の奥は、妙なもやもやした感じで満たされている。
「ガルシアは、ロビン達と合流する前、僕達のリーダーでした。だから、ついて行きたいし、シバも助けたい……!」
「シバを助けたい? ほほーう……」
 ガルシアはヒナから視線を受け、びくりとした。ようやく逸れたと思った話題が、ピカードの言葉により蒸し返してしまったのだ。
「そうですよ、シバは捕らわれの身です。僕達が助けなくては」
 ヒナの顔に、またあの邪な笑みが浮かぶ。
「ガルシア、ピカードもシバを助けたいんですって。どうするの?」
「ど、どうするとは、どど、どう言うことだ!?」
 ガルシアはすっかり困惑しきっており、落ち着いて言葉を発することもできなくなっていた。
「ピカードもシバの事が好き、って事じゃないかしら?」
「ななな、何を!?」
 ガルシアの顔は、最早湯気でも出そうなほどになっていた。
「僕は好きですよ? シバのこと」
 ピカードはあまりにもきっぱりと言い放った。
「なっ……!?」
「なんですってぇ!?」
 ガルシア、ヒナはもちろん、そこにいる全員が驚きの声を上げた。
 しかし、当のピカードは皆が一体そこまで何に驚いているのか、不思議そうに首を傾げる。
「あの、僕何か変なこと言いました? 仲間なのですから、好きだと思うのは当然だと思うんですけど……」
 レムリア人の恋愛観は、常人のそれとはまるで違っていた。妙齢の男女が集まって、芽生える好意の感情はほとんどなく、ピカードにとってはシバに対する感情は、年下の子を愛でるようなものだった。
 百歳近く年が離れているのである。こうなるのも仕方のないことであった。
「そ、そうよねピカード。あなたって考えたらあたしよりもよっぽど年行ってるのよね……。すっかり忘れてたわ……、えっと、百ぐらい離れてるのかしら……?」
 ピカードの事を思い出し、ヒナはまだ驚きの余韻が抜けない様子で苦笑していた。他の仲間達も同様にしている。
「失礼ですね、僕はまだ百も年を取ってないですよ! まあ、絶対年は教えませんけどね!」
 いつぞやレムリアで、皆にからかわれ、興味本位で年を知りたがられた事を、ピカードは忘れていなかった。
「まあ確かに、麗しき若者に百歳は言い過ぎよね。ごめんなさいピカード、この通り、謝るわ」
 ヒナが素直に詫びると、ピカードはそれ以上根に持つこともせず、機嫌を直した。
「別に麗しくはないですが……。ともかく、僕はガルシアについて行きますよ。ヒナさんから教わった修行の成果、ぞんぶんに振るいたいですからね!」
 ピカードはやる気に満ちていた。
「ガルシアに、ピカード、後一人は……」
 ビーストサマナーとの対決チームが二人決まった所で、ヒナは残る一人を誰にすべきか考えた。
 その結論はすぐに出た。
「ジャスミンがいいわね。エゾ島に行ってガルシアが一緒って言えば来てくれそうだし」
「ジャスミンか。この一月でどのくらい腕を上げただろうか?」
 半分以上はガルシアの責任であるが、彼はマーズ灯台で力の暴走したジャスミンの炎により、焼死の危機に瀕したことがある。
 あれだけの炎を自由自在に操れるようになっていれば、かなり頼もしい戦力になり得た。
「よし、ジャスミンには是非とも、俺と一緒に来てもらおう」
「決まりね。それじゃあ、残りのデモンズセンチネルとかいうのには、あたしとシンと、メアリィで行くわ」
 突然名指しされ、メアリィは驚いてしまった。
「わ、私もいくのですか!?」
 対称的に、名指ししたヒナは、メアリィが何を驚いているのか不思議そうに首を傾げた。
「何を言ってるのよ、当然じゃない」
「そんな、私なんかが行ってもきっと足手まといに……」
「メアリィ」
 ヒナはメアリィを落ち着かせる。
「あなたには、大役があるの、ここにいる誰にも代わりができない、役目がね……」
 そうは言われても、メアリィには何のことか理解できなかった。
 腕力など無いに等しい上、エナジーもあまり攻撃には向いていない。
 そんなメアリィにできることといえば、回復に特化したエナジーぐらいである。
「私には回復しかありませんわ……」
「それよ、メアリィ。あなたにしかできない大役ってのはね」
 メアリィが思ったことを口にすると、ヒナはニッと笑う。
 これからヒナ達が挑もうとしている相手は、エナジーが一切通用せず、その上かなり腕の立つ剣の使い手である。その腕は、あのシンでさえも歯が立たなかったほどだ。
 更に付け加えると、その剣士には、ウェイアードでは、ロビンにしか使えないはずのソルブレードを扱うことができた。
 とてつもない苦戦を強いられることは、容易に想像できることであった。
「実際に見てみないことには、まだはっきりとした事は分からないけど、これだけは予想が付くわ。かつてないほどの苦戦を強いられるって事がね……。だからメアリィ、あなたには、あたし達の回復を頼みたいのよ。あたし達には癒しの力は無いしね」
 ヒナほどの人物が、待ち受ける戦いに余裕がなく、必ず苦戦するであろうと予想している。
 ならば尚更自分の存在は、戦いの邪魔になりうるのではないか、メアリィの心を支配するのは、やはり役に立てないのではないかという不安感であった。
「大丈夫よ、メアリィ! あたしを信じて付いてきてちょうだい」
 まだ不安そうにしているメアリィを鼓舞するように、ヒナは言った。
『プリディクト』
 不意にハモが、予知のエナジーを発動した。体をエナジーの輝きで満たし、閉ざすまぶたの裏側に、ハモは何かを見る。
「……メアリィ」
 エナジーを解除し、ハモは呼びかけた。
「あなたは、世界の瘴気を打ち消す力になる。はっきりと見えました……」
「私が、ですか?」
 ハモは頷く。