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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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 ハモの予知能力にて見えたもの。それは、白銀の髪を持つ剣士とメアリィが、白金に輝く剣を伴って、世界に蔓延する瘴気を打ち砕く未来であった。
「剣士が何者なのかまでは、残念ながら見えませんでした。ですが、メアリィの姿ははっきりとしていました。きっと大丈夫、ヒナさんを信じて共に行くのです」
 ハモが予知した未来を告げられても、まだメアリィには不安が残っていた。
「ハモ様、本当に私の力が役に立つのですね?」
 ハモを疑っているわけではない。ただメアリィは、自らの力が世界の命運をつなぎ止めるものとなるのか、確信を持ちたかったのだった。
「ええ、メアリィの癒しの力は、ウェイアードをも癒すことができる。誇っていいことです」
「分かりましたわ……」
 ヒナに鼓舞され、ハモに未来を予知してもらい、メアリィの迷いはついに晴れた。
「ヒナさん、私、行きますわ。戦うことはできないかもしれませんが、癒すことならお安いご用です。私の力が必要になったら、どうぞ遠慮なさらずお申し付けください!」
 メアリィの覚悟を、ヒナはしかと受け止めた。
「あなたなら、きっとそう言ってくれると信じていたわ。よろしくね、メアリィ」
「はい、よろしくお願いします」
 こうして、デュラハン討伐の前哨戦、悪魔の手下と戦うチームが決まった。
 後はハモが作り出してくれた、アネモスオーブを使い、悪魔の手下のもとへ行くのみである。
 しかし、その前にすべき事があった。
「そういえば、シンとジャスミンは、誰が迎えに行こうか?」
 ロビンが思い出したように言う。
 アネモスオーブの性質、二度効力を発揮すると壊れてしまう、というものがある限り、ここで数人飛んでいき、エゾ島まで持って行って二人にも移動してもらうと言うことはできない。
 まだ、エゾ島で修行に明け暮れているであろう、シンとジャスミンには帰ってきてもらう必要があった。
「それでしたら、ボクが呼びに行ってきましょう」
 イワンは左手、中指にはめた指輪を誰にともなく見せ、役を買って出た。
「それはまさか、テレポートのラピス? イワン、その指輪一体どこで!?」
 ハモは、イワンの指輪を見るなり、とても驚いた。
「姉さん、ご存知だったのですか? これは、レムリアのルンパという方から譲り受けたものです」
 正確には、イワンではなく、シバが受け取ったものであると付け足した。
「知っているも何も、それは、アネモス族に伝わる宝具よ。古代アネモスの戦士、イエグロスのグラビティの翡翠よりよっぽど古いものよ……」
 アネモス族でも極僅かな者にしか使えないエナジー、『テレポート』を封じられたこのラピスラズリは、まさにアネモスの宝具の中の宝具であった。
 約二百年の昔、テレポートのラピスは、世界を股にかけた大盗賊によって持ち去られてしまった。これにより、『テレポート』を扱えるものは、先天的に能力を持つ者以外いなくなってしまった。
 アネモス族について、残された文献にて、その存在があったという事実しか知らなかったハモは、指輪の実在に思わず驚いてしまったのである。
「イワンが指輪をはめている時点でもしかしたら、って思ってたのだけど、その輝きを見てはっきりしたわ。アネモス族はもう私達しかいないけど、アネモス族の宝具である事は変わらない。イワン、それは大切にすべきもの、絶対に壊したりしてはだめよ」
 テレポートのラピスは、宝石としての値打ちは皆無であるが、アネモスの歴史的には非常に重要なものであった。
 当時の大盗賊に盗まれた物が、今になってアネモスの末裔に返ってきた。イワンはこれに、ある種の運命的なものを感じざるを得なかった。
 そして、より一層丁重に扱うべきものであると再認識させられた。
「この指輪、確かに普通ではないと思っていましたが、まさかアネモス族の宝具だったなんて……」
 イワンは、この指輪をはめていることが、少し恐ろしく感じた。アネモス族の歴史が込められている代物である。イワンでなくても持つことをためらってしまうであろう。
 しかし、『テレポート』を指輪なしに扱えるハモは、オーブを作り出した時に弱体化し、今長距離を移動できるのはイワンだけであった。恐れている場合ではない。
「ちょっといいかしら? エゾ島に行くんだったら、あたしも一緒につれてってくれるかしら?」
 ふと、ヒナが同行の申し出をした。
「どうしたのですか?」
 イワンは訊ねる。
「エゾ島は、それはもう危険な所でね。いくらイワンの力が増していても、一人じゃ危ないわ。それに、その指輪ってあなた達の一族の宝物なんでしょ? うっかり壊しちゃうような事があったら、大変じゃないかしら?」
 シンをエゾ島へ送ったとき、彼は島の一歩手前でイワンを帰らせた。
 エゾ島が相当危険な場所であるのなら、シンがそうした理由はよく分かる。
 自分の身を守るだけでも大変だというのに、その上まだ力の不安定な二人を守るのは、至難の技だったからである。
 エゾ島に行ってすぐにシン達と会えるとも限らない。一人でエゾ島に蔓延る、強力な魔物を相手取る必要が出てくる以上、やはりヒナと共に行くことが賢明だった。
 アネモスの宝具も重要だが、これから悪魔の手下を相手するのに、余計な怪我をしないことを考えても賢い判断である。
「仰るとおりですね、分かりました。一緒にエゾ島に行きましょう」
 イワンは納得し、ヒナと共にエゾ島を目指すことにした。
「そう言ってくれると思ったわ。それじゃ、つれてってくれる?」
「はい、それじゃ、ボクに掴まってください。姉さん、みんな。すぐに戻ります」
「くれぐれも気を付けてな」
 皆を代表するように、ロビンは声をかけた。
 イワンは頷くと、手を組んで、テレポートのラピスにエナジーを込める。
『テレポート』
 イワンの詠唱と共に、二人は全身を光に包み、また光の粒子となって、風に吹かれるように消えていった。
    ※※※
 エゾ島はまさに地獄、と聞いていたが、実際は地獄という言葉も生易しいものに感じるほど、イワンの想像を超えていた。
「ここが、エゾ島……」
 イワンは思わず零した。
 活火山があるせいか、周囲は腐卵臭に包まれており、目の前に広がる風景は、ごつごつした岩ばかりのまさに不毛なものである。
 世界を包む瘴気も相まって、火山灰の漂う空は、昼にも関わらず、闇に包まれている。
「なかなかすごい所でしょ? 十年くらい前だったかしら。子供の頃、剣術修行の為に来たことがあるんだけど、子供にはとても耐えられる所じゃなかったわね……」
 ヒナは約十年ぶりにこのエゾ島の地に足を踏み入れたが、大人になった今でさえも、この様な所に長居したいとは思えなかった。
 この島の自然そのものが時を経るごとに壊れていったのか、それとも、デュラハンの存在が崩壊を早めたのか。
 どちらが原因かは知り得なかったが、ヒナが昔来た時と比べ、島の不毛さは圧倒的に増していた。
「さて、シン達はどこにいるのかしら……?」
 ヒナは辺りを見渡しながら、特別な気配に気付けるよう、集中した。
 しかし、今は休息でも取っているのか、シン達が修行で何かとぶつかり合うような力は感じられない。