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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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「ダメね、二人がどこにいるのか、見当もつかないわ……」
 イワンの『テレポート』を使おうにも、対象となる人の気配を感じ取れない事には、その人物の近くには行くことができない。
「エナジーも無理ですね。どうしましょう?」
 イワンもお手上げ状態であった。
「仕方がないわね、魔物も呼んじゃうかも知れない危ない方法だけど、二人には来てもらおうかしら」
 ヒナには、何やら策があるようだった。
「どうするのですか?」
 イワンはヒナの、魔物まで呼ぶ可能性のある、という策の詳細を求めた。
「やることは簡単よ。ここであたしが少し力を発揮するの。そうすれば、勘の鋭いあの子なら気付くでしょ。まあ、その前に魔物に見つかるかもしれないけど、その時はイワン、やっつけるの手伝ってね」
 ヒナはイワンに微笑みかけ、左手を宙にかざした。
「はあああ……」
 ヒナはかざした手に、全身の力を込める。すると、次第にヒナの全身にまで、沸き立つようなオーラが発生した。
 そのオーラが発する殺気は凄まじいもので、側にいるイワンには、思わず圧倒されそうなものに感じられた。
「ものすごい力です……!」
 イワンは吹き飛ばされぬよう、腰を据える。
 イワンが足を踏みしめた瞬間、ヒナは突然に力の放出をやめた。
「……イワン、構えなさい。いやな予感が当たったわ……」
「いやな予感、それは一体……!?」
 答えはすぐに、イワンの中にはっきりしたものとなる。四方を全て、魔物の群に囲まれていたのだ。
「気を付けて、イワン。こいつら、とんでもなく手強いわよ」
 イワン達を抱囲する魔物は、旅で出会ってきた中でも、異質的な力を持っていた。
 理性を全く持たない、ただ獲物を殺し、そしてその血肉を食らう為だけに存在するような、まさに魔の存在であった。
 そんな魔物の発する力は、これまで対峙してきた強敵と同等かそれ以上である。その上敵の数は数え切れない。
「こんな数の強敵、本当に勝ち目があるのでしょうか……?」
「弱気にならないで、今のあなたには十分戦える力があるから」
 ヒナは刀を鞘ごと腰から抜き、右手に持って左半身に構える。
「何してるの、あなたも早く構えなさい、来るわよ!」
「……分かりました、行きますよ!」
 イワンも刀を抜き、電気の光輪を身に纏った。
 イワンとヒナが戦闘態勢に入った瞬間、なだれ込むように魔物の群は襲いかかってくる。
 不意に、彼らへと一陣の風が吹き付けた。
 風は強い力の感じられるものであり、同時にヒナにとって、それは馴染み深くもあった。
「この気配、まさか……!?」
 その身を吹き荒れる風のごとく変え、高速でこちらに近づいてくる。
 やがてその風は、正体を露わとする。
 漆黒と白銀に煌めく剣閃と共に、強大な魔物の群を次々と葬っていく。その姿は一つの形を留めることのないほどに素早く、翡翠に輝く眼光と後に続く残像を捉えるのが精一杯であった。
 大きな力は、これだけに止まらなかった。
「こちらからも、強力なエナジーが! これは、なんて熱い力……!」
 イワンが察知したのは、爆発的なまでに発せられる、炎のエナジーであった。
 空中に、燃え盛る炎のマントを纏い、両手で火柱を上げる者がいた。
 炎を纏い、宙に浮く者は、エナジーの増幅と共に火柱の威力を上げ、それを地上に群がる魔物に向かって投げつけた。
 炎は一瞬にして広がり、強力な魔物の群を、彼らの断末魔のみを残し、骨のひとかけらも残さず焼き尽くす。
 ヒナが力を放ち、それにつられた魔物がやって来てから、強大な力を持つ二人組によって、あっと言う間に魔物の群は霧散した。
「……こんなところか」
 腰元までありそうな長い黒髪をしたシンは、気だるそうに漆黒と白銀の双刀をしまった。
 炎のマントを纏ったジャスミンも、ゆっくりと地上に降り立ち、着地と同時にマントを消した。
「あれ、イワンじゃない。なんだか久しぶりね」
 ジャスミンは約一ヶ月ぶりに会う仲間を見つけ、声をかけた。
「お久しぶり、です……」
 姿形こそ変わってはいないが、イワンはジャスミンを見て印象の変化に驚いてしまう。
 最後に会ったときは、ジャスミンには虫も殺せないような臆病さがあったが、今はそれを感じられない。先ほど魔物を焼き尽くしたとき、彼らに情け容赦一切ない目を向けていたからである。
「ふあぁ……、何だか一カ所に大量の魔物の気配を感じたから飛んできてみりゃ、全く迷惑な姉貴だぜ。こちとら三日ぶりの睡眠中だったってのによ……」
 シンは再び大きな欠伸をする。普段髪留めで纏めている髪を解いていたのは、どうやら休みを取っていたからだったらしい。
「シン、あなた……」
 ヒナも驚きを隠せないでいた。
 シンの方も、容姿に大した変化は見られないものの、恐ろしいまでの力を秘めていた。
 ヒナでも苦戦しそうなエゾ島の魔物を、寝ぼけ眼で一掃したのだ。これまでにシンがどのような修行を積んできたのか、想像に難くなかった。
「……で、わざわざこんな所まで何しに来たんだ? まさか今更修行するんじゃねえだろうな? デュラハンがまた空に現れたからってな……」
 シンは言いつつ欠伸をする。
「デュラハンの宣告は聞いていたようね。だったら目的は分かるでしょ? あたし達はデュラハンを止めにいくわ」
 シンはよほど眠いのか、欠伸ばかりしており、ヒナの話を真面目に聞いているのか分からない。
「ふあぁ、そうかい……」
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」
「聞いてるよ……、デュラハンどもをぶっ潰しに行くんだろ?」
「そうよ、だから……」
「悪い、姉貴。今のオレは疲れてろくに戦えねえ……、先に行ってくれるか、オレらは少し寝てから行くからよ。どうせまずは手下どもからぶっ倒すんだろ?」
 シンは世界の命運のかかったこの窮地に、遅れていくと言い出したのだ。さすがにヒナも黙ってはいられなかった。
「シン、何をふざけてるの、相手はあのデュラハンよ!? みんなの力を合わせなきゃ勝てるかどうか分からないのに……」
 必死なヒナに対し、シンはどこ吹く風と言わんばかりである。
「まあ、落ち着けよ。なあジャスミン、お前も少し休んでから行きたいだろ?」
 シンは同意を求めるように訊ねる。
「そうね、まだ全快してないし、私ももう少しゆっくりしたいかな」
 ヒナは更に驚いてしまった。イワンも不意の言葉に、戸惑いを隠せない。
「ジャスミンまで何を……?」
「ごめんねイワン、私達すごく疲れてるの。全快して敵を倒したいのよ。そう、完膚無きまでに、ね」
 ジャスミンの表情が一瞬、先ほど魔物を焼き払った時のようになった。最早彼女の心には、情けなど一切残っておらず、魔物に対しては残酷ささえ感じられる。
「まあ、そう言うわけだ。ジャスミンもこう言ってるんだし、少し休ませてくれや。後から必ず行くからよ」
 シンは踵を返し、ヒナに背を向けた。するとシンはふと何かを思い出した。
「そう言や、誰がどいつを倒しに行くか、とか決めてるのか? まさか、手下ごときを相手に全員で戦うなんてことはないよな?」
「妙なところで察しがいいのね……」