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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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 シレーネは魔法により、デュラハンに破られたローブを元通りにしていた。
「はい、なんなりと申しつけ下さいませ。私はデュラハン様の忠実なるしもべ。デュラハン様を不快にさせた我が不覚、必ずや挽回させて見せましょう」
 デュラハンに、心の底から心酔しているためか、シレーネは先程の事はそれほど気に病まず、デュラハンの役に立つことだけを考えていた。
「うむ、ではイリスを封じた石板を持て。我が完全なる存在となる儀式の準備をするのだ」
「はっ、ただいま……」
 シレーネは指図の通り、用意のため瞬間移動で部屋を去った。
 玉座の間に一人、デュラハンは佇んでいる。首がないため表情は一切窺い知れないが、恐らくデュラハンが人であれば、笑みを浮かべているであろう。
 アレクスによる妨害があったが、事はほぼデュラハンの思うとおりに進んでいる。
 ウェイアードを滅ぼし、世界を暗黒に染め上げる。悪魔の宴は、間もなく始まろうとしている。
    ※※※
 デュラハンは世界中の人間に、宣告を行った。
 デュラハンらは、間もなく、ウェイアードを滅亡させるべく、各地に暗黒の力を結集させた社を建て、その後に完成する暗黒のエレメンタルスターにて、暗黒錬金術を生み出すつもりであった。
 暗黒錬金術解放のためには、神々が建造したエレメンタルの灯台では不可能であり、新たに灯台に代わる、エレメンタルを解放する場所が必要であった。
 デュラハンは、そうしたエレメンタルの礎築くため手下三人を、ウェイアード中のあちこちにやった。
 水のエレメンタルはスターマジシャン、シレーネが担当し、暗黒の社は大イースト海海上に建てた。魔力により島までも作り出したのである。
 火のエレメンタルはビーストサマナー、バルログが四つのエレメンタルロックのうち一つ、マグマロックをそのまま基礎とした。元来無精で、頭の悪い彼ならではの楽な方法だった。
 風のエレメンタルは、デモンズセンチネルが役を担った。
 もとより、デュラハンに従うつもりなどない彼は、機会があればすぐさまデュラハンに手出しすることができ、尚且つ、ジュピター灯台があるため元々、風のエレメンタルの強い、魔界と化したギアナの地へ礎を築いた。
 そして魔王、デュラハンはエレメンタルの基礎ともいえる、地を統治する事にした。
 しかし、デュラハンだけはまだ礎を築く事なく、今しばらくアネモス神殿を根城にしていた。それはイリスと融合を果たすまで神殿を離れられないためであった。
 天界最強の女神と悪魔という、両極端な性質を持つ存在同士の融合であるため、一切の邪魔が入らないようにするには、アネモス神殿は打ってつけであったのだ。
 今、デュラハンはイリスを封じ込めた石板を携え、ようやく不浄の時を終えたアネモスの巫女、シバと玉座の間にいた。
「……頃合だ、アネモスの巫女よ。イリスをその身に宿し、我と交わるのだ」
 今や、世界を破滅に導かんとする悪魔を前にしても、シバは強気の姿勢であった。
「冗談じゃないわ、誰があんたのような奴に従うと思ってんのよ! 大体アネモスの巫女、って何よ? 私はそんなの知らないわ!」
 シバが叫ぶのに動じる事なく、デュラハンはただ静かな笑い声を上げていた。
「ふはは……、これはとてつもないじゃじゃ馬よな。よもや、このような小娘がアネモスの巫女とは、未だに信じられぬな……」
「だったらさっさと私をここから出しなさい! よくも一ヶ月も閉じ込めてくれたわね。この借りは高く付くわよ!」
「ふん、愚かなものよ。貴様は神殿の地下牢にいたから分からぬのやも知れぬが、この神殿の外は最早人間の生きることのできぬ状態……。ここから出たとて、貴様に待ち受けるは死、のみぞ……」
「わけわかんない事ばっか言ってんじゃないわよ! もういい、力ずくでもここから出してもらうわ!」
 シバは両手をデュラハンに向け、詠唱した。
『レイデストラクト!』
 強烈な電流流れる磁気嵐がデュラハンに襲いかかる。
「温いわ、小娘が!」
 デュラハンは少し気力を放っただけで、磁気嵐を弾き返した。
「そんな……!?」
 シバは、自らが持つエナジーの中でも最大級のものをいとも簡単に返され、絶句した。
「くっ、これなら……、『テンペストスピン!』」
 今度はうなりを上げる竜巻を打ち出すが、デュラハンは片手で受け止めて見せた。
「本気で我を倒すつもりでいるのか? だとすれば貴様、かなりの愚か者よ」
 デュラハンはシバに向けて、エナジーの波動を放った。
「キャッ!」
 ばちりと弾かれ、シバは尻餅を付いた。
 反撃を試みようと立ち上がるシバであったが、次々放たれるデュラハンの波動によって、土塊のように粉微塵になる部屋の石像を見て、シバは驚愕のあまりに目を見開いた。僅かに掠り、血が垂れる頬に一切の気を向けることなく。
「我がその気になれば、貴様もその像と同じ運命を辿らせることもできるのだぞ?」
 シバは今になって、ようやく自分が相手にしている者が何者か理解した。
 まるで次元が違う。どのような手を尽くしたところで、倒せるどころか、禍々しい色合いの鎧に傷一つも付けられない。
 今まで謎の長期的月経に苦しめられていたために、深く考えることができずにいたが、ここでデュラハンと対峙したことで直感的に分かった。
 マーズ灯台では、すぐにバルログに浚われてしまった事もあって事情は知り得ないが、女神であるというイリスが結果的に敗れているのだ。
 神様でも勝てないような相手に、シバのようなただの人間が勝てるはずがなかったのだ。
「どうした? 先程までの威勢の良さはどこへ行った?」
 デュラハンは鎧の擦れる音を立てながら、シバへとにじり寄ってきた。
 シバは恐怖しながらも、後ろへ下がる。
「いや……、近付かないで……!」
 デュラハンが近付くごとにシバは下がる。
 元よりそう広くない部屋である。シバはあっという間に隅に追いつめられてしまった。
「ふん、まあよい。最初から貴様に自体に興味はない。イリスを受容できるだけの媒体が必要なだけだ。なんならここで殺しておこうか?」
 デュラハンはついに剣を抜いた。そして切っ先をシバへと向ける。
「いや、依代の命は必要か? ふん、シレーネめ。いらぬ時ばかり懐いてくるくせに、必要な時におらぬとは使えん奴よ……」
 デュラハンは自ら命じて手下を各地に送り出したというのに、理不尽な文句を言った。
 どうにか命までは取られないらしい事を聞き、シバに僅かに現れた安堵感を、デュラハンは見逃していなかった。
「助かると勘違いするなよ? 生きてさえいればよいのだ。そう、生きてさえいればな……」
 デュラハンは突きつけた剣はそのままに、不気味な笑い声を上げる。
「……何するつもりよ!?」
 シバは溢れ出んばかりの、得体の知れない恐怖感を抑えつけながら叫んだ。
「ふははは……」
 そんなシバの虚勢を見透かしているように、デュラハンは笑い続けた。
「分からんか? 我は貴様が生きていればよいと言っておる。……例え五体がズタズタになっても、生きていればなぁ!」
 シバはとうとうデュラハンの意図が分かった。