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幾度でも、君とならば恋をしよう

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 ―――うんうん。

 何が「うんうん」かね。この愚か者が。目がヤラシイ。鼻の下が伸びきっている。というか、何なのだね、その手つきは?ひも付きサンダルを履かせているというよりはもっぱら私の足に纏わりついているようにしか見えないサガである。

「サガ、これのどこがトガなのかね?」

 出せる中で一番低音の声で名を呼ぶ。「うん?」とご満悦のサガは私が沸点に達しそうになっていることにも気づかないのだろうか。相変わらず、撫で撫で、さわさわのお触りをやめようとしない。

 ―――いわゆる衣装合わせというヤツで。

 アフロディーテが自ら着ればいいだけの話なのに、何故、私がこんな目に合わなければならないのかと、甚だ疑問に思えた。
 第一、トガではなかったのか?と言いたくなるのも無理からぬことで、只今試着させられているのは、日本の女子高生にも負けないミニスカート状態な、昔々の拳闘士スタイルである。つまり、生脚ばっちり状態なわけなのであった。

「―――んで、これが黄金律ってわけよ、サガ。中が見えそうで見えない、というのが男のロマンよね?」
「ふむ、なるほど」
「何がロマンなのかね、アフロディーテ。サガも納得するな!」

 傍らで丈を調整するアフロディーテに凄みをきかせようとしたが、ぴらりと裾を捲り上げようとするものだから、慌てて押さえつけた。

「ふ、二人掛かりとは卑怯ではないのかねっ」

 思わず、声が裏返る。

「三人相手でも怯まなかったんでしょ。なーにを、今更言う?」

 フンとアフロディーテに鼻であしらわれながら、「じゃ、次」とあっさり布を剥ぎ取られては次々に着替えさせられる。
 鬼のスタイリストに私はなす術も無く、まな板の鯉状態。サガはサガでスポンサーばりに色々と無理難題をふっかけるわ、本当に散々であった。まったくこれをセクハラと言わずして、なんというのだろうか?と時折、意識が遠退きそうになるのだった。

「ようやく……終わった」

 衣装合わせ終了。本当に私はよく耐え忍んだものだと忍耐強さを自画自賛する。ほっとしながら、用意された茶菓子を満喫していた。
 アフロディーテとサガは引き続いて、なんだか気難しそうな顔をしながら、あーでもない、こーでもないと打ち合わせ中だ。すっかり気を削がれた私は疲労感のままにソファーに身を沈め、眠りに落ちるに至った。