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幾度でも、君とならば恋をしよう

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† 幾度でも、君とならば恋をしよう ~2015~ †



 聖戦後、立て直しのためにアテナこと城戸沙織が精力的に自ら動いたことで、随分と活気溢れるものとなった聖域。そんな最中、アテナとしての重責を担う城戸沙織のために慰労を兼ねたささやかに催すはずだった聖域祭りは大層賑やかで華やかなものとなり、その一役を担ったシャカやサガも祭りを十分に楽しんだあの日。その後、いつも通りの平穏な日々へと戻っていったわけだが。
 今現在、ちょっとした『事故』により聖域は……というか、十二宮+αではプチ騒動が起きていたのだった。
 その騒動の渦中ともいえるシャカは処女宮で軟禁中であったが、普段から引き篭もっていることも多いシャカなので、大した苦もなく当人は過ごしている。恐らくはシャカよりも出禁を喰らっている、シャカに向かって恥ずかしげもなく、「何度でも惚れるだろう」と豪語した男―――サガのほうが精神衛生上、大変よろしくない状態にあるのだった。
 サガとはもう彼此二週間ほど顔を会わせてないシャカだが、きっと教皇宮で薄ら寒ーい笑顔をサガは張り付かせ、笑っているようでいて実はアンガーモード、目が据わっているという非常にややこしく、面倒な男と化しているのだろうなと容易にシャカが推測できるのは彼に瓜二つの弟、カノンの様子を見れば判りきったことだった。
 あの事故の日からシャカの宮には誰かしらシャカの傍についていて、そのほとんどがカノンである。最近では疲労の色が濃く見えるようになってきており、シャカも別段敵が攻めてくるわけでもないのだから、警護など必要ないことと説くのだが、完全に無視される始末である。
 シャカの前にしゃがみ込みながら、とても困難な任務に直面したような厳しい表情でカノンはシャカをじぃっと睨み付けるように眺めては、もう何度となく吐き出された嘆きめいた深い溜息をついていた。

「―――もう、いいかげんに、あきらめたら、どうかね、カノン」

 少しでもこの場の雰囲気を和らげようとシャカなりに微笑んでみたのだが、ますますもってカノンは悲壮感漂うほどがっくりと肩を落とし、「こりゃだめだ……」と嘆いていた。
 なぜカノンが嘆くのか。
 偏に同じ顔をした兄であるサガが、カノンをスニオン岬に閉じ込めたことに始まり、教皇&アイオロス殺害、アテナ殺害未遂、その他諸々有り余る罪やA.Eという鬼畜にも劣る行為など鑑みても、軽く極刑もしくは一万光年くらい終身刑を喰らうか、世が世ならカウカソスの山にでも磔刑にされればいいと本気で思う弟としては本当にこれ以上罪を重ねさせてはいけないという逼迫した事情があるわけだったからである。

「サガとの兄弟の縁が切れるなら、諦めるんだけどなぁ……」

 本当に今回の事故元であるアテナには猛省していただきたいし、早いところシャカを『元に戻して』貰わないと困ると思うカノンである。
 シャカの正面にしゃがみ込んだカノンはちょいちょいとシャカの前髪を弄った。
 くすぐったそうにひょいと首を竦める仕草はもう、「可愛い」を通り越して、やっぱり罪だと思う。あの変態兄貴なら、一発で理性など吹っ飛ぶことだろう。それぐらいカノンでさえも可愛いと思う現在の乙女座様の姿は常のキラキラしい細身の青年ではなく、若返り中……にもほどがあるだろう!?的、幼児姿絶賛展開中なわけである。本当に早く『元に戻ってくれ』とカノンは願うのだが。
 事の発端は一週間前。
 暇を持て余していたアテナの前にかき集められた黄金聖闘士たちがそれぞれ得意の異能をアテナに色々と教えていた時にそれは起こった。
 皆に負けじとアテナも神業を駆使した結果、なぜかアテナとは離れた場所にいたサガといちゃこらしていたシャカが、不幸にも被害を被ったのである。半分はわざとじゃないのか?と邪推しないでもなかったが。
 どうせなら、サガに喰らわせてくれれば、積年の恨みを晴らすのにちょうどよかったのにと本気でカノンは悔しがった。まぁ当のサガはカノンの魂胆などしっかりわかっていたようだが。
 本来ならば、アテナが枯れた観賞用植物が見事、青々とした緑葉を茂らせるはずだったが、なぜかシャカが幼児に変化するという不幸な事態が引き起された。ムウ曰く「ミソペサメノスの失敗版でしょうね」らしい。まぁ……それはいい。何が不幸って、別にシャカがどう変わろうがカノン的には問題ないのだが。

「――――シャカがどのような姿になろうとも、私がシャカを愛しく思う気持ちに変わりはないからな」

 うっとりと……いや―――もう、完全に、犯罪者の眼差しで小さくなってしまったシャカを愛しげに抱き上げながら、愛を語ろうとするサガを目の当たりにしたのが運の尽き、不幸の始まりだ。
 イカレたサガに危機感を抱いたのは良識ある大人であれば当然だ。すぐさまサガをシャカから引っぺがして「確保!」したのち、ラグビーよろしく連携プレイでパスしながら速攻シャカを処女宮に移動させ、アテナ自らサガを監視するという事態になったわけだ。
 いっそのこと、サガをスニオン岬にでも突っ込んでおけばいいとカノンは思うのだが、そこはまぁ諸事情により女神宮か教皇宮以外の宮内だけでの移動のみ許可というアテナからのお達しにより、「せっかくの可愛いシャカが……」と不平不満に未練タラタラなサガをアテナと年中組が見張りつつ、まぁそれでもうまく脱走しかねないサガのこと、さらに予防策として他の者たちが処女宮もしくは隣の宮で詰めるという臨時対策を講じて、今日に至った。
 ちなみに幸か不幸かシャカはチビッ子になっただけでなく、人外パワーも封印されているようで異能を揮うこともせず、ごく普通の幼子という状態になっていることについてはいちいちアレを取れ、コレを取れと扱き使われ、手がかかるのか、かからないのか微妙ではあった。
 シャカ本人曰く、精神年齢は一応、そのままキープできているらしいし、いつも通りの口調ではあるのだが、如何せん舌足らずな感じだったりするものだから、姿も姿だけに無駄に和んでしまうのは致し方あるまい。
 そんなこんなで「兄の不始末は弟の不始末」などとふざけたムウの主張とシャカを死守するようにとアテナにも仰せつかり、不名誉な騎士役をカノンが務めることとなったのだった。