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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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鎧武外伝 仮面ライダー神武

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 いくらか時間が経ち、黄金の果実からの波動がなくなると、知記は声をあげるのをぴたりと止め、腕をだらんと落とした。知記が顔をあげると、その目は赤く輝き、同時にひざまづいて日本語ではない言葉でこう告げた。
「<ただ今帰還致しました、王よ>。」
 同時にその姿はまがまがしい怪物のようなものになった。その体は、真っ赤に燃え盛る炎のような色をしていた。
「<よくぞ戻ってきた、グリンフェ>。」
「…もう戻してもいいか?」
「よかろう。この方が、お前も話しやすいだろうし、この者も聞き取れるだろう。」
 ロシュオを知記だった何かは互いに言葉を日本語に戻し、会話を続けた。
「知記…お前は一体…。」
 一部始終を見ていた貴虎が知記に訊く。
「…そうだな。」
 知記は深呼吸をして、言葉を続けた。
「ある時はフェムシンム、お前達がオーバーロードと呼ぶ者達の一人、グリンフェ。」
 もう一度深呼吸をし、今度は姿を人間の姿に戻してさらに続けた。
「またある時はお前達のよく知る、紅城知記だ。呼びやすい呼び方で呼んでくれ。」
 知記はそのまま振り返り、ロシュオを睨んだ。
「グリンフェ、任務ご苦労であった。」
「いくら人間の世界を見るためだからって、俺の記憶を消す必要あったのかって今は思うよ。」
「お前がフェムシンムだとばれないためにはこうするしかなかったのだ。許せ。」
「まあわかってるけどさ。…そうか、俺自身がオーバーロードだったんだな。それで武神鎧武に吸い込まれる事もなく、俺の周りであんなにインベスが…。」
 知記は静かに独語する。どうやら、元が怪物だったため武神鎧武の配下の怪人には吸い込めなかったらしい。
「お前は特に臣下の者達に好かれていたからな。その名残であろう。」
 それを聞いたロシュオは疑問に答えた。
「…確かに、そんな記憶もあるよ。」
 これは昔の話だ。グリンフェはロシュオの元でロシュオを守る近衛兵をしていた。また自身の軍も率い、他国との戦では全ての戦いで勝利するような戦士でもあった。それはひとえに、自軍の仲間に対して厳しく指導しながら時には共に食事を摂ったりもするような性分で、そのおかげか部下達から慕われていたからだろう。それ故に、グリンフェは連戦連勝の猛者としてロシュオの元でオーバーロードとして活動を許されたのだ。
「昔のことを思い出してしんみりしているところ悪いが、俺は行くぜ。用も終わったしな。」
「そうか。好きにするがよい。」
 ロシュオはサガラを引き止めない。
「あっ、そうだ。」
 だがサガラはまだ用事があったらしい。
「知記、これをやるよ。」
 サガラは適当に実をもぎ取り、それを手の中でこねてロックシードに変化させる。
「なんだと…?」
 それを見た貴虎は驚く。
 無理もない。ベルトをつけずにヘルヘイムの実をロックシードに変化させたのだ。開発に携わった者としては、驚かないはずがない。
「ほら。」
 サガラは生成したロックシードを知記に向けて投げて寄越した。
 知記はそれを片手で手で受け取る。それは見た目こそ普通のロックシードと同じだが、キャストパッドの形状が赤い八角形をしているものだった。またそれには"KLS-01"と刻印されている。
「そのロックシードが、お前の本当の力を引き出してくれるだろう。ただし、使い方が少し複雑だからな。」
「…有り難く受けとっておこう。」
 知記がそっけなく返すと、サガラはその場から消えた。
「奴は一体、何者なんだ…?」
 未だ傷の癒えぬ貴虎が知記に訊く。
 少し考えた後、知記は貴虎に告げた。
「…そうだな…。俺達は奴のことを<蛇>と呼んでいるが、実際はこの森そのものだろうと俺は考えている。」
「このヘルヘイムそのものだと?」
「あいつはこの森について知りすぎている。あいつがこの森そのものなら、全てのつじつまがあう。」
 貴虎は黙っていた。反論の余地もない。そういうことなのだろうか。
「まあ、今は気にしたって仕方ないし、お前はその傷を癒すのが先決だ。今は休め。」
「…ああ。」
 貴虎は渋々眠りにつく。
 それを確認した知記は、ロシュオに目を向けて訊いた。
「ロシュオ、ここにシドという男は来なかったか?」
「黒い帽子の男か。奴なら私の持つ黄金の果実を欲し、刃向かってきたが、私が殺した。」
「…そうか。ならば、気をつけるとすれば後は戦極凌馬だけか。」
 その顔に悔やむ気持ちなど一欠けらもなかった。
 ロシュオはそれに気づくも、無視して話を続けた。
「その者は黄金の果実に値しないというのか?」
「あいつは自身の野望のためなら仲間を平気で犠牲にするような奴だ。」
 貴虎がいい例だ。
 知記はその言葉を言わずに飲み込んだ。言っても意味は成さないだろうと思ってのことだ。
「まあ、あんたが考えるように人間はそういう悪い奴らばかりではない。ちゃんと見極めてくれ。」
「…考えておこう。」



 その次の日だった。
 突然ロシュオが『外の世界を見たい』と言い出し、知記はだったらと人工クラックのあった場所へと案内した。
 その時だ。
 知記はポケットから何かを落とした。それを蹴り飛ばし、茂みの中に隠す。
「どうかしたか?」
 不意にロシュオが知記に聞く。
「いや、気のせいだった。なんでもない。」
 知記は惚けて返し、先を行く二人についていった。
 貴虎を含め三人で人工クラックへ向かうと、そこには大きなクラックがあった。人工クラックが復活していたのだ。
「おかしいな、俺が最後に見た時は人工クラックは消えていたのに…。」
「まあよい。ここを通ればお前達の街が見ることが出来るのだな?」
「ああ、そうだ。」
 ロシュオの問いに貴虎が答える。
 貴虎はすぐに足を進めた。そしてすぐに衝撃を受ける。何とその部屋は、ヘルヘイムの植物で埋め尽くされていたのだ。
「なんだこれは…。」
「ここは既に、我らフェムシンムの領土ということだ。」
 貴虎の疑問にロシュオは間髪入れず答える。
 そして知記も人工クラックからユグドラシルタワーへと入った。足を入れた瞬間、知記は奇妙なモノを感じた。
「…なにか来るぞ。なんだこれは…。」
「ふむ…これは、武器か、何かか?」
 二人がもたらしたことから、貴虎はあることを推測した。
「…戦略ミサイルか…!」
 その予想通り。北米より戦略ミサイルが沢芽市へと飛来していた。
「上へ案内しろ。出来るだけ周りを見渡せる場所だ。」
「どうするんだ。」
「見ていればわかる。」
 どういうことかはかりかねた知記は、とりあえず屋上ヘリポート直通のエレベータへ案内し、乗り込んでヘリポートへ向かった。
 たどり着いた時、ロシュオはどこからともなく自身の大剣を取り出した。
「一体何をするつもりだ?」
「レデュエの口車に乗ってやるだけの話だ。」
 すでに彼等の目の前まで戦略ミサイルが迫って来ていた。知記はその一部始終を見守ることにした。ロシュオのやろうとしていること、またその結果が見えたからだ。
 突然ロシュオは自身の大剣を振り回しはじめた。するとミサイルは何かに阻まれたようにその場で止まり、一瞬にして飛来した全ての物が消え去った。
―いや、消し飛ばしたわけじゃない。