鎧武外伝 仮面ライダー神武
―おそらく元の場所に戻したんだ…。
知記の予想通り、戦略ミサイルは全て北米大陸へ転送され、北米大陸に壊滅的被害をもたらした。
「我々を守ったというのか?」
貴虎はロシュオに訊く。
ロシュオはそれに素っ気なく返した。
「私はただ、レデュエの城を守っただけだ。お主は滅び行く世界を見続けろ。それが長たるものの勤めだ。」
ロシュオは元来た道を引き返す。
その道中には、知記がいた。
「グリンフェ、お前はどうする?」
二人はすれ違い、知記はロシュオに背を向けて告げる。
「前に言ったよな、"人間は悪い奴らばかりじゃない"って。俺は、記憶を失った時の俺を助けてくれた人間、仲間達のために戦う。」
「…そうか。」
ロシュオはそのまま去って行こうとする。
「止めないんだな。」
首だけ振り返り、知記は言う。
「それくらいではないと、人間達に不利というものであろう。」
それだけ言うと、ロシュオはその場にクラックを開け、自身の能力でその場から城まで瞬間移動した。
知記が向き直ると、目の前には貴虎がいた。
「貴虎、お前はどうする?」
「…俺は、葛葉達を探す。まだ戦っているはずだ。」
「そうか。それじゃ、後で会おう。俺はまだやることがある。」
こうして、二人は変わり果てたタワーから離れた。
そして別々の道を歩いていった。
知記は、ふらふらと街を歩いていた。
あんな事を言った手前、すぐに紘太達のいるガレージへ近づくことは出来なかった。それに、貴虎も少し今の沢芽を見てもらおう、そのために一人にしようと思ったのだ。
「…やっぱり、沢芽市は壊滅状態か…。」
街中を歩きながら、知記は思いに耽っていた。変わり果てた沢芽市。目の前に広がる光景からは、硝煙と血生臭いニオイが混じったようなモノを知記は感じた。おそらくクラックから現れたインベス達によるものだろう。
―俺がこっちを離れている間に、ロシュオはクラックを際限なく開いたか。
―…全く、少しは加減しろよな。
いまさらこんな事を考えても仕方ない。
知記はさらに見て回った。するとどうだ。インベスが人さらいをしているではないか。
「…どういう事だ?ロシュオがこんな事させるはずないし…。てことは、レデュエか。まあ、考えている暇はないか。」
知記は戦極ドライバーを腰に装着し、ロックシードを解錠する。
『ブラッドオレンジ』
「変身。」
それをベルトに取り付け、小刀で切って変身する。
『ブラッドオレンジアームズ 邪ノ道・オン・ステージ』
アーマードライダー神武に変身した知記は、直ぐ様刀を二本、右は普通に、左は逆手で構え、インベスを攻撃する。そして捕まっている人々を解放する。インベスに一撃攻撃を入れては人間を解放し、インベスから遠ざける。
「早く逃げろ。」
全員を助けて人々にそう告げると彼等は口々にお礼を言い、一目散に逃げて行く。
「さて、これで戦いやすくはなったが、いかんせん数が多い。なら…。」
知記はゲネシスコアをベルトに取り付け、ロックシードを解錠する。
『メロンエナジー』
それを取り付けたパーツに装着し、再びカッティングブレードで切る。
『ミックス ジンバーメロン ハハァ』
刹那、神武の頭上で二つのアームズが融合し、ジンバーアームズが形成される。それが覆いかぶさり、ジンバーメロンアームズとなった。そのジンバーラングにはメロンの柄が描かれていた。
神武は右手にソニックアロー、左手に無双セイバーを構え、インベスに突撃する。両手に構えた刃でインベス達を斬り伏せていく。すると、神武の周りから初級インベスが大量に押し寄せてきた。神武はそれを睨むと、一度無双セイバーをしまい、足に力を込めた。そのまま踏み切ると、常人、いやアーマードライダーの限界を超える高さまで跳躍した。インベス達はスピードを落とせずそれぞれぶつかり合い、潰しあった。知記は跳びながらアップルエナジーロックシードを解錠し、ソニックアローに取り付けて矢を引き絞る。
『ロックオン』
そして手を離し、矢を放った。
『アップルエナジー』
放たれた矢はインベスの密集する場所に直撃し、大漁の怪物を爆発させた。その場所に神武は着地し、周りを見据える。まだインベスはいるが、それでも全員消耗していた。
「そろそろ止めをさすか。」
ソニックアローのエナジーロックシードを取り外し、しまう。無双セイバーを取り出し、またベルトのロックシードを二つ取り外し、二つの刃に取り付ける。ロックシードの錠を同時に閉め、構える。
『『ロックオン』イチ・ジュウ・ヒャク』
左足を軸足にして右足で地面を蹴り、その力で神武はその場で回転。それと同時に刃から斬撃を飛ばした。
『メロンエナジー』『ブラッドオレンジチャージ』
刹那、神武の周りにメロンと赤いオレンジの断面のエネルギー波が現れ、インベス達を全て爆散させた。神武はロックシードをベルトに戻し、周りを観察した。どうやら、他にインベスはいない様だった。
しかし。
「困るんだよ、餌を取り逃がすのは。」
声が聞こえた。インベスではない何かが近くにいるようだった。
「レデュエか。」
「ほう、私がいるのがわかるのか。」
どこからかそれは姿を現した。その者はインベスの様だった。いや、オーバーロードと呼ぶべきか。
彼女の名はレデュエ。ヒスイ色の体を持つ、女性のオーバーロードだ。
「その気配…まさか、グリンフェか?」
「ああ。レデュエ、久しいな。」
知記は仮面の下でレデュエを睨む。
「そんな妙な姿で、一体何をしているんだ?」
「決まっている。人間を助けているんだ。」
知記の言葉に、レデュエは腹を抱えて笑った。
「フェムシンムの近衛兵であったお前が、下等な人間達のために戦うのか。笑わせる。」
「俺はお前達とは違う。自分の信じたモノのために戦う。お前達みたいに、自分だけのためには戦わない。」
「そうか、では。」
レデュエは知記に向けて手の中にある槍を構える。」
「裏切り者は直ぐ様処分しないといけないな。」
刹那、レデュエの両目が光り、知記の周りにある植物が動きはじめた。植物達は知記を襲い、知記は植物に捕まってしまった。
「…馬鹿かよ、お前。」
知記の体は植物に持ち上げられ、空中に浮いているが、知記は意に介さなかった。
その時だ。
神武のパルプアイが赤く輝き、知記は植物から解放された。否、ただ解放されたわけではない。その植物を操り返してレデュエに向かわせた。
「同じフェムシンムで、同じくヘルヘイムの植物を操れるのに、そんな手が通用すると思うなよ。」
「…そうだったね。」
植物を操る攻撃が通用しないとわかると、レデュエは格闘戦をしてきた。
神武はソニックアローでそれを受け止める。
何度か斬り結び、互いに疲労が蓄積されていく。
二人の力は、ほぼ互角であった。
「やるじゃないか、グリンフェ。昔とは大違いだ。」
「今の俺には戦う理由があるからな。昔みたいにただ単に戦っているだけじゃない。」
ただ、このままでは知記に勝ち目がないのは事実だ。だから知記は一つカードを切る。
「だから俺は、絶対に負けられない。」
昨日サガラに渡されたロックシードを取り出し、解錠する。
作品名:鎧武外伝 仮面ライダー神武 作家名:無未河 大智/TTjr