鎧武外伝 仮面ライダー神武
「ほざけ。こっちの方が立ち回りやすいんだよ。」
知記は無双セイバーを構えシンムグルンに振り下ろす。
シンムグルンは手に持つ戦斧でそれを受け、弾き返して神武に斬りかかる。
「その戦斧、昔から使ってるな。そんなに斧が好きか?」
「元より愛用している物だ。易々と手放せるか。」
「デュデュオンシュみたいな派手な剣は使わないのか?」
「私にはあれは性に合わん。これくらいシンプルでわかりやすい物が使い勝手がいい。」
会話する間も幾度となく剣と斧で斬り結ぶ。力の差はほとんどない。
そろそろ神武は痺れを切らそうとしていた。
「やむをえんか。」
知記は無双セイバーを左手に持ち替え、ソニックアローを取り出して右手に構える。両手に刃をもってシンムグルンに斬りかかる。
「くっ…。」
次第にシンムグルンの口から空気を漏らすような声が聞こえだした。
「さて、とどめと行こうか。」
知記はカッティングブレードを二回倒し、無双セイバーを構える。
『ブラッドカチドキオーレ ジンバーメロンオーレ』
それを投げ飛ばし、シンムグルンに傷を負わせる。そしてベルトからロックシードを外してソニックアローに装着し、カッティングブレードで今度は一回切る。
『ロックオン』『カチドキスカッシュ』
ソニックアローのグリップを引き絞り、離して矢を放つ。
『メロンエナジー』
放たれたエネルギーの矢は一直線にシンムグルンへと向かう。
しかしシンムグルンはヘルヘイムの植物を操ってそこにあった車を盾にし防いだ。
「何っ!?」
「このままでは貴様には勝てん。ここは撤退させてもらう。」
「おい待て!」
シンムグルンは神武の言葉を聞くことはなく、颯爽と撤退していった。
敵を逃がした神武は変身を解除した。
「あいつ…。いや、今は貴虎と光実だ。」
知記は直ぐに目的に優先順位をつけ、港へと走り出した。
港に着くと、そこにいたのは光実のみだった。
ちょうど光実が斬月・真から変身を解除し、海を見つめているところだった。
知記は直ぐに光実に駆けより、肩を掴んで攻め詰めた。
「おい、貴虎はどうした。」
「…死んだよ。僕が殺した。」
信じられるか、と周りを見渡す。するとすぐそこに破壊された戦極ドライバーとメロンロックシードがあった。おそらく貴虎の物であろう。
「なんで助けない!」
「無理だよ。もう兄さんは海の底だ。助かりはしない。」
きっ、と知記は歯を食いしばる。そして光実を殴った。
光実は自身の頬を押さえて知記を見る。
「悪いが、俺は諦めきれないんでね。探しに行く。」
「勝手にしたら。どうせ助からないと思うけど。」
その言葉を背に知記は変身し、海に飛び込んだ。変身したのは、少しでも海中で自身の生命維持が出来るようにだ。気休めにしかならないだろうが、ないよりはマシという考えからだ。
―貴虎、無事でいてくれ!
そう考えながら暗い海の中を潜っていく。
その間に、光実はゆっくりとした足取りでその場を去っていった。
その後一時間ほどして知記は海から上がってきた。しかしその場に貴虎はいない。どうやら見つからなかったらしい。知記は辺りを見渡し、光実を探すが、すでに光実はその場にはいなかった。
そして、地面に落ちていたはずの戦極ドライバーとロックシードの残骸も見つけることは出来なかった。
「…誰か持って帰ったかな。」
知記はそう結論付けると、その場にクラックを開けて拠点に戻っていた。
数日も経たない内。
知記は一人でヘルヘイムの森を駆けていた、場所はちょうど拠点と王の城の真ん中辺りだ、何故か。それは、二時間ほど前まで遡る。
「何?それは本当か?」
知記は常日頃から湊耀子に渡された通信機を身につけている。その通信機に通信が入った。湊耀子その人からだ。
『ええ。さっき決まったわ。』
その内容はこうだ。
今からユグドラシルタワーに侵入し、光実にさらわれた高司舞を救う。そのルートを戦極凌馬に案内させる。ということだった。
知記も知らなかったことだが、どうやら凌馬はユグドラシルの面子には秘密裏にタワーへ繋がる裏口を沢芽市の外に造っていたらしい。それを利用してタワーに忍び込むということだ。
『それで、紅城君も来てもらえないかしら。少しでも戦力は多い方がいいだろうし。』
知記は少し考え、そしてこう告げた。
「…いや、俺はヘルヘイムから乗り込む。二つのルートから乗り込んで合流しよう。そうした方が オーバーロードや光実の目を欺くことが出来る。そうすれば、場合によってどちらかを陽動、もう一方を救出に分けることが出来る。」
『それもそうね。わかったわ。みんなにはそう伝えておくわ。』
「頼む。」
知記は通信を切ると、その場にクラックを開けてヘルヘイムに突入する。そして森を駆け、ユグドラシルタワーの人工クラックへと向かった。人工クラックを抜けてタワーへ侵入し、おそらく光実がいるであろう貴虎の部屋を目指す。
「光実!」
知記はその扉を勢いよく開けた。しかし光実と舞はそこにはいなかった。
「いない…。じゃあどこだ?」
その時だ。身につけている通信機に通信が入った。
『舞さん、しばらくは不自由かもしれない………ここにいてください。………すぐに迎えに………から。』
その声は、光実のものだった。ノイズが多いが、辛うじて聞こえたのはこれだけだ。どういうことなのか。
知記はため息を吐きながらつぶやいた。
「…やっと拾ったか。全く、ヘルヘイムとここは遠すぎる。ましてや城なんて…。」
そしてニヤリと笑った。
実は知記は王の城に盗聴器を仕掛けていたのだ。この光実の声はそれが拾ったものだ。
「…いや、あの時蹴ったからか?まあいいか。取り合えず城へ向かうとしよう。」
知記は人工クラックまで引き返し、ヘルヘイムに戻って城を目指した。
そしてようやく城が近くなってきた頃。
知記は何者かと対峙していた。
「…グリンフェ。」
「…レデュエ。」
それはヒスイ色のオーバーロードだった。
「どうしてお前がここにいる。ユグドラシルタワーにいたんじゃないのか?」
知記は目の前の元同胞に訊いた。
「勿論、今私がここにいる理由は一つだ。ようやく私にも、果実を手に入れるチャンスが回ってきたんだ。」
どうやらレデュエは、このタイミングで知恵の実をロシュオから盗もうとしているらしかった。
「悪いな。お前に知恵の実を渡したらどうなるかわかったもんじゃないから、そうはさせない。」
「そうか。」
知記は静かに錠前を二つ解錠し、ベルトに取り付ける。カッティングブレードでそれを斬り、変身する。
『ミックス ブラッドカチドキアームズ いざ進撃 エイエイオー ジンバーメロン ハハァ』
こうして知記は神武カチドキジンバーアームズに変身した。
「お前は、ここで俺が止める。」
「出来るものならな!」
レデュエは手持ちの槍を振りかざし、神武に斬りかかる。
神武はそれを火縄大橙DJ銃の刃で受け止め弾き返す。そして火縄大橙DJ銃を構えて銃弾を放つ。
しかしレデュエはそれを槍で切り裂き、二つに切り分けて神武へと返した。
作品名:鎧武外伝 仮面ライダー神武 作家名:無未河 大智/TTjr