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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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鎧武外伝 仮面ライダー神武

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 知記は先ほど投げ捨てた鞄を手に取り、その場を去る。しかしそれは叶わなかった。
「動くな。」
 微かに響く金属音。知記にはそれが拳銃が構えられた音であると分かっていた。なので両手を上げ反抗の意志がないことを示す。
「…知記か。」
 だが、その意志表示も無意味と化した。
 知記は声のする方を振り向く。
 そこにいたのは、白いアーマードライダー。アーマードライダー斬月と名付けられた者がそこにいた。
「よぉ、貴虎。」
 貴虎と呼ばれたアーマードライダーは、拳銃を構える白ずくめの男達に手を振って合図を出し、仕事をさせる。すぐに男達は自前の火炎放射機で辺り一帯に生えたヘルヘイムの植物を燃やしていった。
「相変わらず仕事が速いな。」
「インベスはどうした。」
「俺が殺っといたよ。」
 青年は腰のベルトを指差す。そこにはまだ錠前が引っ掛かっていた。
「…強奪した戦極ドライバーをイニシャライズしたのか。」
「ああ。そうしなきゃ俺死んでたし。」
「それもそうか。」
 少しの会話の後、貴虎―呉島貴虎の部下から作業終了の旨が伝えられる。
「そんじゃ、俺は行くわ。」
「ああ。…必ず戻ってこいよ。」
「出る前にサガラとお前に言っただろ。その時が来たら全部話すって。」
 知記は振り返り、手を振ってその場を後にする。
「…何事も無ければいいが。」
 その後ろ姿を見て、独語する貴虎。
 その後貴虎は、作業を終えた部下を引き連れ元来た道を引き返した。



 二○一三年十二月上旬のこの日。
 何処とも知れぬ廃工場で、知記は今日もインベスと戦っていた。ただし、基本的に初級インベスが多く上級インベスを相手にすることはほとんどなかった。今いる敵は三体。全て初級インベス。
―ここはまとめて倒す方が得策か。
 知記はヒマワリロックシードを二つ取り出し、両方解錠した。すると知記の近くにクラックが一つ現れ、そこから二体の初級インベスが現れた。
「行け。」
 知記がロックシードを翳し命令を下すと、召喚されたインベスが、暴れているインベスへと向かって行く。そして知記も暴れているうちの一体を相手にする。
 対峙した瞬間、右手の大橙丸で何度も斬り伏せる。斬り伏せた後、その勢いを使って回し蹴りを叩き込み、インベスを吹き飛ばす。同じタイミングで、召喚したインベス達が他のインベスを押さえ込み、吹き飛ばしたインベスもまとめて一つの場所に固まった。
「よし。」
 神武はベルトのカッティングブレードを一回倒す。
『ブラッドオレンジスカッシュ』
「ハッ。」
 掛け声とともに飛び上がる。そして空中でポーズを変え、召喚した者共々まとまっているインベス達に跳び蹴り<神代キック(じんだいキック)>を放った。足に集中したエネルギーを蹴りという形で存分に浴びたインベス達は、そのエネルギーに耐え切れず爆散した。
「ふぅ…。」
 知記は持っていたロックシードの錠を締め、しまう。その後ベルトのキャストパッドを閉じようと手をかける。
 しかし、それは叶わない。
「何っ!?」
 何もわからぬまま、神武の体は前に倒れ、手から赤い刀が落ちる。どうやら、後ろから不意打ちを喰らったらしかった。
 神武は地面に手を着くとすぐ振り向いた。
「インベス…じゃねぇな。お前ら、何物だ。」
 知記が見たもの、それは。
 一体は口の大きな、というよりウツボカズラのような怪人で。
 もう一体は、全身に触手を纏った顔の見えない怪人だった。
 どうやら後ろから攻撃を仕掛けたのは触手の怪人らしかった。
「インベス…か。そのような低俗なモノではない。」
 触手の怪人が答える。
「ほぅ、言葉が通じるだけ普通のインベスってわけではなさそうだな。オーバーロードか?。」
 オーバーロード。ユグドラシルでも一部の者しか知らない事実の一つ。知記はそれを知っていた。
「いいや、そんなのでもないぞ。というか、インベスってなんだ?」
 今度は食虫植物の姿をした怪人が答えた。
「お前は少し黙っていろ。とにかく、わたしはある目的のために、お前の持つそれが欲しい。」
 触手の怪人は、知記の腰を指差す。正確には、知記の腰に巻き付くベルトを指差した。
「…戦極ドライバーを奪って、何がしたいんだ。」
「私の住む元の世界にて、天下(てんが)をとる!!」
「なるほど、そんために異世界まで来たと。忙しいことだな。」
「だから、さっさと渡してもらおうか。」
「…嫌なこった!」
 知記は腰に架けてある刀の鍔にあるレバーを引き、刀の柄を持って引き抜くと同時に四回トリガーを引いた。その鍔にある銃から発射された銃弾は、二発ずつ二体の怪人に着弾した。
 そして先ほど落とした刀を左手で拾い逆手で構える。
「悪いが、お前達の好きにはさせない。」
「ならば力ずくで奪わせてもらう。」
 触手の怪人が全身の触手を伸ばして神武へと攻撃する。だが神武は両手の刀でそれを弾いたり切り落としたりして防ぐ。
 だが怪人はそれを続ける。量を増やして続ける。
 やがて神武は触手を捌くことで精一杯になった。その様子を見て触手の怪人は、触手で包まれた奥にある瞳をニヤリと歪ませる。
 刹那、神武の背中にウツボカズラの怪人が現れ、その腕の刃で神武を攻撃する。
「ガハッ…。」
 不意打ちをくらい神武の体は倒れて変身は解け、同時に触手の怪人が触手を用いて知記の体を持ち上げる。
「大口を叩いていた割に、大したことないな。」
「二対一は卑怯だろ。」
「それも戦略というものだ。」
 知記の体を這う触手。その触手は知記の腰の戦極ドライバーを外し、怪人の元へと持って行った。
「これで私も、武神ライダーに…!!」
 怪人は戦極ドライバーを腰に持ってくる。しかしそこからフォールディングバンドが現れることは無く、腰に装着することは出来なかった。
「悪いな。その戦極ドライバーは俺がイニシャライズしたから俺にしか着けられないんだ。それは俺が死んでも変わらない。」
 知記には触手の怪人が舌打ちしたような感じがした。
「面倒臭いな。ならば、こうしよう。」
 怪人は、知記の戦極ドライバーを触手で包み込み、自身の右手の上に触手の塊を創る。すると右手の上に新たな戦極ドライバーが生み出された。
「何…?」
「あまりこういうことはしたくないのだがな。これはいらぬ。」
 怪人は知記から奪った戦極ドライバーを捨て、知記を解放する。知記は解放されたと同時にベルトを拾い、腰に着ける。
「さて、お前には見せておこう。土産だ。」
 怪人は、自身が生み出した戦極ドライバーを腰に装着し同じく生み出した錠前を解錠する。
『ブラッドオレンジ』
 錠前をベルトに引っ掛け、錠をしめる。そしてカッティングブレードで果実を斬る。
『ブラッドオレンジアームズ 邪ノ道・オン・ステージ』
「ふははははは、これで私も武神ライダーとなることが出来たのだ!」
 何処からとも無く鎧が現れ、怪人に装着され、アーマードライダーとなった。
「一つだけ聞く。」
「なんだ。」
 知記は傷を抑えながら聞く。
「名は、なんだ。」
「名か…。これから天下を統一する者の名だ、覚えておけ。」
 怪人は振り返り、締め縄のような意表のついたクラックに似た裂け目を生み出し、言う。