鎧武外伝 仮面ライダー神武
「私は、武神鎧武だ。そうだ、こやつも養分としてしまおう。やれ。」
武神鎧武と名乗ったアーマードライダーは、ウツボカズラ怪人に命令した。怪人は頷き、大きな口を両手で開いた。
すると風が巻き起こり、知記を吸い込まんとした。しかし知記は吸い込まれず、その場に留まっていた。
「うむ、生身の人間では吸い込めないのか。ならば仕方あるまい。もうよい、行くぞ。」
そこ言葉で、ウツボカズラ怪人は口を開くのを止め、武神鎧武に従う。そして武神鎧武と、ウツボカズラの姿をした怪人は、武神鎧武が生み出したクラックを通って元の世界へと帰って行った。
「…武神…鎧武…。」
その姿を、知記は見つめることしか出来なかった。
十二月中旬。
どうやら最近、ビートライダーズの一チームによるインベス掃討作戦が行われたらしい。だがそんなことは知記には関係なく、だが暴れてくれるお陰で少し自由に動けるとさえ考えていた。
そんなときだった。
突然、知記の目の前で締め縄のような意表のついたクラックに酷似したモノが開き、そこから戦極ドライバーが落ちてきた。
「…これ、俺のベルトにそっくりだ。」
その戦極ドライバーのライダーインジゲータ部分に描かれていたのは、アーマードライダー神武の横顔であった。
つまり、これは。
「…武神鎧武の戦極ドライバーか…?」
それがクラックから排出されてきた。しかも戦極ドライバーのみが。
「つまり、武神鎧武が何物かに倒されたというわけか。」
知記は何を考えたのか、拾った戦極ドライバーを腰に持ってきた。しかしそのベルトからフォールディングバンドが現れることはなかった。どうやら、イニシャライズ機能までこのベルトはコピーしているらしい。
「まあ、持っていて損はないか。」
知記はそれを懐にしまうと、廃工場を出た。
その刹那。知記の足元に、小さなクレーターのようなモノが現れた。勿論ただでそんなモノが出来るはずがない。
ということは。
「…なんで俺って、こんなにインベスに好かれるんだろうな…。」
そういう知記の目の前には、インベスが三体。セイリュウインベスと呼ばれる個体が一体、初級インベスと呼ばれる個体が二体だ。
「全く、世話のやける。」
知記は戦極ドライバーを取り出し、腰に装着する。そしてロックシードを解錠する。
『ブラッドオレンジ』
「変身。」
ポーズを取り、ロックシードをベルトに装填し、錠を締める。
『ロックオン』
するとロック風の変身待機音が鳴り始める。すかさず知記はカッティングブレードを倒した。
『ブラッドオレンジアームズ 邪ノ道・オン・ステージ』
すると、知記の頭上のアーマーパーツが落下し、展開されて装甲となり変身が完了した。
「神武、参る。」
神武は右手の大橙丸を構え、走る。
出合い頭に、初級インベスの片方を切り裂く。インベスはダメージを追うが、それは些細な事であり、神武へと突進する。知記はそれを左手で押さえ、右から来るセイリュウインベスの攻撃を大橙丸で受ける。セイリュウインベスの腕を弾き、周りを囲んでいたインベス達を一気に右手の刀で凪ぎ払い左逆手に持ち替えると、今度は腰の無双セイバーに手を掛け、抜き去る勢いで先ほどとは逆まわりにインベスを斬り払った。そしてその勢いのまま無双セイバーと大橙丸を連結させ、それを構えた。
両端に刃を持った武器を片手に、未だ襲い来るインベスを迎え撃つ。
「止めだ。」
知記は、ベルトの錠前を外し武器に取り付け錠を締める。
『ロックオン イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン ブラッドオレンジチャージ』
赤い鎧の戦士は、まず刀身の細い方で襲い来るインベスに向かって横なぎをする。すると細見の刀身から斬撃のエネルギー波が放たれ、インベス達にぶつかった。それだけで初級インベスは爆散。
しかしセイリュウインベスは生き残っているようだ。
「しぶといな、怪物が。」
そういいつつ知記は刀身が太い方に武器を持ち替え、走り出す。そしてインベスとすれ違い様に横一線に切り裂き、過ぎた途端に振り向き、袈裟掛けに斬り上げた。刹那、攻撃を受けたインベスが爆発し、その身を散らした。
「…こんなものか。」
知記は無双セイバーに着いたロックシードを外し、ベルトに嵌め直す。そしてキャストパッドを閉めようとした。
その時だ。
突然、目の前から銃撃を受けた。といってもそれは足元への銃撃であり、知記には何等ダメージはなかったが。
「全く、危なっかしいな。」
知記は銃撃の来た方向をみる。するとそこには、神武とほぼ同じ姿をしたアーマードライダーがいた。違うのは兜の前たての色とベルト、鎧の色くらいだ。
「アーマードライダー鎧武か。」
知記は、そう判断した。
実は知記は、いつもサガラの放送する番組を視聴しており、今どれだけのアーマードライダーが存在するのかを把握していたからだ。
「まさか…武神鎧武!?」
「あ?もしかしてお前、知ってんのか?」
知記は軽い口を叩きつつも、頭の中では冷静に対処しようとしていた。
―…そういえば、最近鎧武、バロン、龍玄の三人が行方不明になって、それを貴虎が探しに行ったって聞いたな。
―つまりその時武神鎧武とであったというわけか。
しかし、それとは裏腹に。
「お前があの武神鎧武だって言うなら、俺はお前をここで倒す!」
鎧武は怒りをにじませて、オレンジ色の大橙丸を振り上げながら神武に向かって突進して来た。
「…っ!!」
「うおおおおお!!」
神武は直ぐ様武器の合体を解き、左手の赤い大橙丸で鎧武の攻撃を受ける。
「どうやら、冷静さを欠いているらしいな。それじゃあ、とことん付き合ってやるよ。」
神武は左手の刀で鎧武の刀を弾き上げ、同時に右手の刀で鎧武を横一線に斬る。
「がはっ…。」
鎧武は、斬られたところを押さえて後ずさる。
「こいつ、やっぱり強い…!」
斬った後も知記は警戒体制を解くことはない。それどころか、全ての攻撃をいなすというような様子で佇む。
「こいつ、もしかしたら白いアーマードライダーと同じくらい強いかも。」
鎧武は刀を構えつつ独語する。
「だけど、俺は仲間を守るために戦うって決めた!だから、お前を倒す!」
そして右手の刀を左手に持ち替え、腰に掛かっている刀を右手で抜き去る。
「うおおおお!」
両手に刀を構えたまま、鎧武は走る。その勢いのまま右手の刀を横なぎに振るう。だが神武はその刀を左手の刀で受け、鎧武が走っている隙にリロードしておいた銃で鎧武を撃つ。
「ぐっ。」
弾は全てオレンジ色の鎧に当たったものの、衝撃自体は凄まじく鎧武はまたしても後ずさる。
同じく神武もノーダメージのまま、鎧武との距離をとる。
「弱くはないが、いかんせん猪突猛進な部分が強いな。」
知記は仮面の中で冷静に分析する。
「クソッ、こうなったら…。」
鎧武は腰に下げてあるホルダーからロックシードを一つ取り外し、解錠する。
『パイン』
そしてベルトのロックシードを外し、代わりに解錠したものを取り付け、締める。
『ロックオン』
それをベルトのカッティングブレードで斬る。
『ソイヤッ パインアームズ 粉砕・デストロイ』
作品名:鎧武外伝 仮面ライダー神武 作家名:無未河 大智/TTjr