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何度でも 前編

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 私は、頭脳明晰、容姿端麗と周囲に誉めそやされて育ったが、前世の記憶を取り戻してからは、そんな些末に価値を見出せなかった。
頭脳明晰は当たり前だ。
英才教育を授けられ、前世の記憶があれば、既におおよその知識は有しているのだから。
容姿も両親が見目麗しいのだから、遺伝学的に金髪碧眼の高身長になる事など、なるべくしてなったとしか言えない。


空虚さが私を包む。


18歳で大学院を卒業すると両親の経営する作業用MSを制作する大手企業に就職をしたが、親の七光りの様に見られる事に嫌気がさした私は、わずか一年で起業した。
よりスムーズな作業効率を可能とするIT部品を設計・制作する、従業員数名の会社だ。
それが、社員の能力の高さゆえに、発表する製品全てが好調な売れ行きを示し、起業数年で両親の会社のMS全てに部品が必要不可欠になるまでに急成長。齢22歳で、一流経営者と目される様になった。
だが、私は武器になるMSに携わる事は避けたかった。

もう、人の命を奪うのは総帥として十分やってきた。
これからは人の幸せの助けとなる仕事をしたいと強く思っていた。


それでもIT産業を選んだのにはわけがある。
『彼』がITに造詣が深かったからだ。
あれ程の知識欲に加え、能力を有していたのだ。
生まれ変わってもきっと、『彼』はこちらに興味を持ってくるだろうと確信していた。


だが、一年経っても二年経っても、『彼』らしき人物は現れてこない。


社会情勢的にも、IT産業は引く手数多だ。

「第二次ネオ・ジオン抗争」と呼ばれるあの戦いの後も、宇宙は戦いが途絶える事のない空間と化している。
私が7歳の時には、ブライト艦長の息子であるハサウェイが「反地球連邦組織」のリーダー、マフティーとして処刑されているし、25歳の頃にはクロスボーン・バンガードなる組織がフロンティアを襲撃したりと騒々しい。
当然、戦力として有効なMSの小型化には駆動系の軽量化が重要視される。
より効率的に、操縦者の意のままにスムーズな作動がなされる様に、ユーザーの要求はハードルを上げていく。それに答えられる企業は、世界的に見ても数えるしかない。
その中に『彼』が居るはずだと思う私の予想は、だが、ことごとく裏切られた。


もしかしたら『彼』は地球ではなくサイド側に転生したのだろうか。

そんな不安が私を苛む。

このまま、再会する事も叶わぬままに今生を終えるのか。
いや!
『彼』は必ずこの世界に転生している。
私の中の何かが、蠢いているのだ。
『彼』の気配を察して…

探し続けよう。
発信し続けるんだ。
ここに、君を必要とする男が居るのだと解って貰えるように!

 私はメディアに取り上げられる機会が多くなるように、常に最先端の技術開発に勤しみ、業界トップの座を手に入れた。そして、理工科の大学やハイスクールの研究クラブに融資をするようにして、所謂「青田刈り」めいた事を積み重ねた。
当然、優秀な新入社員を手にする事が出来たし、その結果として会社はより高度な技術力を開発する事になる。
企業的には好調な回転を示しているが、私的な希望は一向に好転を見せない。

焦燥感が私を苛み、好調な業績も喜びとはならないまま、私は27歳を迎えていた。
作品名:何度でも 前編 作家名:まお