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二階堂千鶴とゆかいなコロッケたち

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 様々な感情が渦を巻いて千鶴に襲い掛かってくる。肉汁で肉汁を洗う戦い。千鶴の目の前で、クロケット人同士による戦争が始まっていた。
「早く! 今はどちらもメスムンバンカ様の敵だ!」
 切迫した声に押されて、千鶴の手足は無意識に上を目指した。

 ▽

 走った。
 千鶴の筋肉は熱く燃え、血管にはバッテリー液が流れた。それでも走った。
 ブロッコリーの緑がその姿を隠し、王国の巨大さが千鶴を庶民に仕立て上げる。
 戦争の混乱が千鶴の背中を後押しするように道を開けてくれた。
 王国の外れの外れに、キーエ遺跡はあった。それは千鶴が王国クロケット人に拉致された、衣でできた駅のホームだった。
「これで帰れるんですよね……」
 息を整えながらホームのベンチに座った。吹き抜けの壁から心地良い風が入り込み、頬を撫ぜ、長い睫毛をゆらす。
 ワンピースのスカートは破け、白く綺麗な足には細かいキズが目立ち、顔や髪のそこいらに茶色の衣がまとわりついていた。エレガントだった身なりはボロボロ。それに見合った疲れた瞳で、千鶴は虚空を見上げていた。
「夢の様な一日でしたわ……。朝ごはん抜いたせいかしら」
 カン。小さく硬い音。音がした方に目をやると、手からこぼれ落ちたコロッケケースが足元で鈍く銀色に光っていた。
 おっくうに身体を折り曲げて拾い取る。近くでみるとケースの隙間から淡く輝きが漏れだしていた。なんとも魅力的な金色は、千鶴の瞳に映り込みさらにゴージャスに輝きを増していた。
「……ゴクリ」

 ▽

 戦争の混乱に乗じて行動を起こす者は千鶴の他にもいた。
 ソースクロケット本部の塔。その地下の牢屋は戦争の熱気さえも届かない静けさだった。
 そこに軽快な足音が走りこんでくる。
「エリ!」
 奥の牢屋に走って行き、捕まっている女の子にウヨリが呼びかけた。
 それは千鶴についてきていた王国側の女の子のクロケットだった。
「ウヨリ? ウヨリなの?!」
「ずっと会いたかったんだ! 待ってて」
「ウヨリダメ! ダメなのよ!」
 エリと呼ばれた女の子が鉄格子に駆け寄り、何やら必死に呼びかけるが、ウヨリは壁にかけてあった鍵をとって戻ってきた。
「ここから逃げよう。メスムンバンカ様の世界にいっしょに行くんだ。そーすればこんなバカみたいな争いごとから開放される。僕らは自由になるんだ!」
「後ろよォオオォオオオォォォオオォ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 エリが肉汁を飛び散らせて絶叫した。ウヨリはエリの視線を追って振り返ると、屈強なソースクロケットが大きなナイフを振りかぶっていた。
 反応して動くには手遅れ。顔をそむけることもできずに――――――――――――――――――ッサックウウゥ!
 小気味よいコロッケのさくさく音が響く。ウヨリはその揚げたての音についで、横殴りに倒れる屈強なクロケットの音も聞くことが出来た。
 大きなコロッケがいなくなると、おもたげにフォークの先を床に下ろした二階堂千鶴がみえた。
「ふうぅ。セレブ舐めたらいかんですわよ」
 千鶴は激しく肩で息をしていた。額の汗を拭うと、乱れた御髪についている小さいブロッコリーがぽろぽろ落ちた。
 ウヨリは牢屋を開けることも忘れて絶句していた。苦労して送り出したはずの救世主が戻ってきているのだから無理もない。
「遺跡にいったんじゃ」
「ヤボ用で、きた道を戻ってみたら、貴方がみえた、から」
 ガッシリと腕を掴んで、汗だくの顔を上げた。


 だだっ広い展望室には老人の小さい背中しかない。
「観光にでも行っていらしたのですか」
「ええ。そのまま帰ってティーにしようと思いましたが。気が変わりました」
 長老が振り返ると、千鶴は地面を踏ん張って身の丈程もあるフォークを重々しく斜めに構えた。
「そんなものを構えても、ここには老いぼれしかおりませんぞ」
「貴方の思惑は、全てまるっとどこまでもゴージャスにお見通しですわ!」
 手をつないだウヨリとリエが入ってくると、老人は何か言いたげに眉間を動かした。その顔に向かって二人が黄金のコロッケをみせつける。
「なるほど。それで、メスムンバンカ様はどうなさるのですか」
「決まっていますわ」
 フォーク先がおもたげに持ち上がると、何の迷いもなく振り下ろされた。
 一瞬。思い切り振り回したフォークがクロケットのカップルの首らしきところを刈り取ったのだ。
 ウヨリとリエの頭らしきものがボトリと床に落ちる。頭らしきところを失った残りの胴体が崩れ落ちると、老人は腰を抜かした。
「き、気でも触れたのですか?! な、なんということじゃ。切ってしまうなんて、なんと酷いことを」
「酷い? 外では大勢切られてるのですから、一人や二人切った所で変わりないのではありませんか?」
 千鶴はこぼれ落ちた黄金のコロッケを拾い上げて座った目で老人を見やった。
「ど、どうか切らんでください。どうか」
 フォークを突きつけているわけではないのに、長老は土下座して命乞いをする。それほどまでに千鶴の醸しだす威圧感が恐ろしいものになっていた。
 倒れこんで動かないウヨリとリエを交互にみると、それじゃあと口をあけた。
「わたくしにふさわしいステージを用意してください」
 
 平で丸い塔の頂上から見える景色は茶色と黒のツートンカラーの海。
 うごめくコロッケが水のうねりで、飛び散る肉汁が水のしぶきだ。そして潮騒の音は聞いたものを魂の奥底から震え上がらせる怒声と悲鳴。
 王国クロケット人とソースクロケット人の戦争はどちらかが押されているわけでも、押しているわけでもない、均衡状態だった。
 町の中心あたりで同じ形のフォークを叩き合わせて、劣勢も優勢もなく、ただひたすらに戦っていた。
 見下ろす千鶴の目はやけに落ち着き払っている。腹をくくっているような、堂々とした仁王立ちだった。
 長老から渡されたハンドマイクを構えると、そこにある空気全てを吸い込む勢いで鼻の形を変えた。
《《おーーっほっほっほっほっほ!!》》
 高笑いが何倍にも増幅されて、天井が抜かれたドームに響き渡った。しかし、誰もその手を止めなかった。
《《ちょっと貴方達! メスムンバンカ! メスムンバンカ様ですよ!? 今すぐ手を止めてわたくしの言葉を傾聴なさい!!》》
 切実な訴えが通じたのかうねりが止まる。
 万を超えるクロケットたちが見上げてくる。
 喉がゴクリと鳴って、細かく震える手を振り払うように声を張り上げた。
《《あなた方、みんな同じコロッケでしょう。どちらかが勝って何が残るというのですか》》
 ざわめき。困惑のざわめきだ。何を言っているんだという理解できないざわめき。
 その反応に、千鶴はおもむろに黄金のコロッケを取り出して魅せつけた。オオオ? と揃った声があがる。
《《これをわたくしが食べれば、すべてが終わるのですね》》
 どちらかが支配する世界になって。
 千鶴は口を大きく開けて、小さくゴメンと、綺羅びやかなコロッケをステージに食べさせた。
 えええええ〜〜〜!!
 メスムンバンカの思いもよらぬ行動に、地鳴りのような悲鳴の合唱がおきた。グリグリと踏みつけられて、観るも無残にぺちゃんこの、黄金の残飯に成り果てた。