【カゲプロ】アヤノ誕生日2014小説
夏に、お母さんは事故で亡くなった。
現場に居合わせたお父さんは酷くショックを受けたようで、休日も家では引きこもりがちになってしまった。
高校教師と考古科学者、忙しい二人の間に生まれた私だったが、家族関係で困ったことは一度たりともない。
養子である修哉たちを引き取った後も家族六人、なんだかんだ言って幸せに暮らしてきた。
そして八月、生まれて初めてその内一人でも欠けると、笑顔が全て消えてしまうことを知った。
これから私たちは、一体どうなってしまうのだろう。
お母さんの亡骸を見て、泣いて、形だけの納骨を済ませて――あの子たちは本当に受け入れられているのだろうか。
また、自分の赤い目を擦っているのではないだろうか。
涙を流して、生まれた世界を呪っているのではないだろうか。
そうに決まってる。傷ついたに決まってる。
幸助もつぼみも、修哉だって、悔しいに決まってる。
だったら、私まで泣いている訳にはいかない。
ずっと、ずっと笑っておくのだ。
私は、あの子たちを幸せにするまで毎日笑っておきたい。
家の前で一度、足が止まる。
レンガ造りの家は、いつも通り目の前にある。
ため息をつく。
いつの間にか強張っていた頬を、いつも通りに緩ませた。
「……さっ! 今日も帰宅といきますかっ! 待ってろよ弟妹諸君! お姉ちゃんのお出ましだぞぉ~」
私は玄関前の段差を勢いよく駆けあがると、ドアノブに手を掛け、勢い良く手前に引いた。
作品名:【カゲプロ】アヤノ誕生日2014小説 作家名:はつこい。@二次創作