ガンダム 月の翅
建造物の解析も進み、どうやら人が暮らしていける程の設備はあることがわかった。居住スペースはもちろん食料の自給自足のためのプラント、さらには医療施設や科学研究室までがあった。カンブリアの命もあり一族は地上から地中へ、というよりは山頂から山中へと移り住んでいった。
そして、
「これは・・・旧世紀の・・・すごいな・・・」
クロードの目には何体もの巨大な人形の機械が映っていた。静寂の中に機械の巨人が佇む光景は荘厳であり、圧倒されてしまう。
「博物館かな?」
「違うでしょう」
フィリアス・パスパルトが即座に否定した。彼は地中へ移ってからクロードと行動を共にしている。白金髪のおかっぱ頭であり色弱のため特殊な眼鏡をかけている。
「これではっきりしました。この建造物は船だ、それも巨大な。」
「・・・・・でかすぎじゃないか?設備も贅沢だ」
「おそらく移民船じゃないでしょうか?客船だったらこんな物いらないでしょう」
「・・・移民船が何で埋まってんの?それにどこへ行こうと?」
「はぁ…」フィリアスはため息をついた。「逆ですよ」
「逆?これからどこかに発つってこと?」
「それかもしくは出戻りってとこですかね」
「へぇ、こんな物引っさげてなぁ」
クロードは機械の巨人に手をつけていた。搭乗口はどこか、動かせるのかを調べてさらに足下を調べ出した。
「どうしました?」フィリアスが訪ねた。
「飛べないだろ」「なるほど」
フィリアスは壁を調べ始めた。
「これかな?」
フィリアスが壁にセンサーらしき物を見つけ手をかざした。するとクロードの周辺、というよりも巨人の足下に3Dホログラム状のパネルが現れた。そのパネルには殆ど使われていない文字が表示されていたがクロードは何とか読むことができた。
パネルの指示に従って操作を進めていくとクロードの身を囲うようにレーザー状の柵が現れ、足下からドーナツ型の金属が浮き出てきた。それが腰の位置までくると「ピピッ」という音とともに上昇、巨人の左胸、心臓部へと彼を導いた。そこがコクピットらしかった。その前までくるとコクピットの扉が開き、巨人へ乗り込むことができるようになった。