ガンダム 月の翅
一昨日の戦闘からエブリオ一族はさらに慌ただしくなった。移民船の全体像すら把握出来てないまま球体の解析、ザクやシオマネキを含む機体群の識別、インダストリアに対する防衛策の立案会議、
そしてクロードは
「さーて今日は君に聞きたいことが山ほどあるんだ。まず…きみの乗ってきたあのポッドについて教えてほしい」
球体のパイロットに尋問をしていた。素性は彼女の所持していたマイクロチップから極わずかに、No 2569という番号とレプリという名前がわかった。外見に関してはエメラルド色の髪と瞳をしておりロシア系の顔立ちをしている。レプリは中々口を開こうとせず黙っていた。
「名称なり教えてくれないか?—————全くの企業秘密か・・・きみ自身もかな?」
きみ自身という言葉にかすかな反応を見せた。
「どういう意味?」
「なんだ喋れるんじゃないか。いやね、きみ自身なんというか機械的なところを感じてね」
レプリはまた沈黙した。だがその表情にはどこか困惑の色があった。クロードが機械的と言ったのは己の勘と彼女の目だ。殆ど瞬きをせず、したと思えば瞬きというよりコンマ1秒目を瞑るといった具合で、何より眼球自体も通常のそれとは違っていた。それはエメラルド色をしていることではなく瞳孔と光彩の境目のないエメラルド一色で、病気でなければ人為的としか考えられなかった。
「質問を変えよう、インダストリアは今何をやろうとしているのか、それとリペアジオジウムについてだ」
「私は一介の兵士に過ぎない。わかることは殆どない」
「では誰の要請でここまで来たのかな?」
「要請…?わからない。上からの命令ならともかくそれ以上は…」
クロードはこの後何を聞くべきか迷った。
「あ」
ふと戦闘がフラッシュバックし、ひっかかっていた違和感を思い出した。
「何であれをザクっていったんだ?」
「えっ?」レプリが初めて人間らしい反応を見せた。
「確かにアレのことをザクと読んでいるが、そりゃここにいるマオという子が名付けたからそう言ってるだけなんだ。名付けたというかアレ見てザクって言ったんだよなぁ」
「名前もわからずに乗っていたのか?」
「ああ」
「旧世紀時代の、というより古代のモビルスーツ」
「モビルスーツ?」