ガンダム 月の翅
壁一面に蝶の羽脈のような模様がオーロラの如く光だし、脈は壁から地面へ、そして空間の中心へと伸びていった。脈が集まると光がオーロラから血の色に変わり、地面の中心部が浮き上がり樹根が姿を現した。何が出ても驚かない自信はあったが不可能だった。
「ここをみてごらん」
アベニールが樹根のそばへ行き、根の先を指差した。
「幾つか見えると思うけど、この根が丸まっているところ、ここに小さなエンジンをセットするんだ。ここにすべてのエンジンをセットする事でこの船の全出力が出せるのさ。今ここにセットされているのを見る限りだと…現状では準亜光速が精一杯ってところだね」
「亜光速だと!?しかもフルパワーじゃなしに!」
フィリアスの声は裏返っていた。
「今ここに納まっているのは2つしかない。あと十個、計十二個のエンジンが必要なんだ」
「どこにあるんだ?」
「記録媒体から取り出さないといけない。何百年も動かすにはこれを原動力とするしかないからね」
「ということは…」
「そう、各地に散らばっている記録媒体を見つけ出して集めなければ行けないんだ」
「場所はわかっているんだろうな」フィリアスの声が尖る。
「少し待ってね」
アベニールがまた唱えると樹根は元に収納され空間にホログラムが浮かんだ。南アメリア大陸の地図だ。
「範囲を地球全土にしてくれるかな」ホログラムの地図が地球全土へと規模を広げた。
「言語プログラムを変更したから君たちにも使えるようになったよ、さて」
現在地に2つ、チベット、オセアニア、ジブラルタル、ヤーパンに1つずつ、そして北アメリア大陸東海岸部に3つの反応があった。
「九つしかないな」「太陽系全土に広げてみよう」
火星に2つ、そして木星に3つの反応があった。
アベニールはしばらく黙り込み、北アメリア東海岸部を指した。「………ここには何があるのかな?」
「ここは…!」クロードは一瞬にして奈落の底へ突き落とされた思いだった。
「なるほど」クロードの表情を読み取ると口元が歪み静かな笑みを浮かべ
「どうする?」
甘い声で囁いた。